IN/OUT (2022.12.4)

サッカーのワールドカップ。開幕前は、それほど話題になっている感じも無かったのですが、いざ始まってみると、予想以上の日本代表の善戦もあり、やはり、盛り上がるものですね。


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"Mrs. Harris Goes to Paris"22.11.28

Paul Gallicoの小説「ハリスおばさんパリへ行く」(1958年、ハリスおばさんシリーズ1作目)を映画化した作品を観てきた。映画の邦題は「ミセス・ハリス、パリへ行く」。

主人公は、1950年代のロンドンで家政婦として働く戦争未亡人。勤め先のお金持ちの夫人が持つクリスチャン・ディオールのドレスに魅せられ、一念発起。お金を貯め(ちょっとした幸運にも恵まれ)、パリのディオールの店へ行く。当時は、まだオートクチュール(オーダーメイドの一点物)の時代。場違いな彼女は、Isabelle Huppertが演じる嫌みで高慢な支配人に追い出されそうになるが…。

Lesley Manvilleが演じる面倒見の良いハリスおばさんが、その人柄で周囲の人達を惹きつけ、味方にし、ついには…。という、ある種のお伽噺だが、労働者によるストライキが頻発する一方で、Jean-Paul Sartreの実存主義に心酔する若者達もいる1950年代のパリという舞台設定がアクセントになって、一定の説得力をもたらしていると思う。

隅から隅までハート・ウォーミングな映画だ。ただ、原作を読んだことが無い私は、どんな落とし穴が待ち受けているのか、ハラハラしていた。Paul Gallicoの代表作「The Poseidon Adventure」がトラウマになっているのだ。Gene Hackman主演の1972年の映画化作品が大好きで、その原作を読んだのだが、これが(ストーリーの骨子や登場人物は同じなのに)映画とは全く違う鬱展開でビックリした記憶が強烈なのだ。それ以来、この人が描くストーリーは信頼できないと思い込んでいる。果たして、映画の終盤、暗雲が垂れ込める展開もあるのだが、そのオチは…。

結果、多くの人に愛される映画で間違い無いという結論である。お薦め作だ。


”QUANT”22.12.3

Bunkamura ル・シネマファッション・デザイナー Mary Quantを描くドキュメンタリー映画を観に、Bunkamura ル・シネマに行ってきた。邦題は「マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説」

Mary Quantについては、特徴的な花柄マーク(デイジー・アイコン)が印象にあるぐらいだったのだが、改めてその足跡を知ると、中々に興味深い。1960年代・ロンドンのストリート・カルチャーに多大なインパクトを与えた独創性と、ライセンス・ビジネスで大成功を収める商業性を両立させた手腕。しかも、それを、夫のAlexander Plunket-Greene及び実業家のArchie McNairの3人のチームで成し遂げたというストーリーは、痛快なビジネス小説のようだ。彼女がミニスカートのブームを生み出し、「ミニスカート」という言葉自体が、彼女が好きな車のMiniから付けられた名前というのも、今まで知らなかった。

ストリート・ファッションのデザイナーということで、このドキュンメンタリーでは、Kate Mossなどファッション業界の関係者者以外に、The KinksのDave DaviesやThe WhoのPete Townshendなどが登場。バックにも、彼らの1960年代から70年代のロックが流れ、テンポの良い編集と相まって、とても見やすいドキュメンタリーだと思う。

ただ、ブランドとしてのMARY QUANTは、1970年代以降は失速気味。1988年にArchie McNairはビジネスの現場から引退し、Alexander Plunket-Greeneは1990年に58歳の若さで逝去。Mary Quant自身も顧問の座に退き、今ではそのライセンスは全て、日本の「株式会社マリークヮントコスメチックス」が所有し、日本・ロンドン・上海のみで展開しているらしい。旧い時代を打破し、新しい価値観を提示したデザイナーも、時が経てば保守側になってしまうというのは、中々に辛い現実だ。企業内でも後進の育成が上手く行っていなかったのだろうか。そのせいか、御年92歳で、まだご健在のMary Quantの現在の姿は、この映画には出てこない。一方、彼女より9歳年下で1970年代にブレイクした Vivienne Westwoodが、この映画では環境活動家としてインタビューに答えているのが、筋金入り、という感じでカッコ良し。


「マリー・クワント展」@ Bunkamura ザ・ミュージアム22.12.3

Bunkamura ザ・ミュージアム映画を観た後は、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「マリー・クワント展」へ。

ロンドンのVictoria and Albert Museumで開催された彼女の業績を辿る回顧展の世界巡回展である。映画で予習を済ませてから観ると、とても分かりやすく、興味深く観ることが出来る。自己演出に長けた人でもあるし、ライセンス・ビジネスが主という事で金儲け主義かと思いきや、一本、筋が通ったデザイナーであることが良く分かる。

秀逸なのは、オーディオガイド。声優の梅原裕一郎のナレーションは聞き取りやすく、内容も充実。しかも、ロンドンのストリート・カルチャー事情について補足解説するのが、Peter Barakan! ファッションよりも音楽中心の解説だが、それが楽しい。

ミュージアム・ショップには、MARY QUANTのデイジー・アイコンが付いたグッズが沢山並んでいるが、東急百貨店本店に、MARY QUANTのショップは入っていないのは、いささか寂しい気もする(東急プラザ渋谷にはあるようだが)。



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”Black Adam”22.12.2

DC Extended Universeの新作を観てきた。

主演は、ロック様ことDwayne Johnson。満を持してのアメコミ映画参戦という感じで、期待値は大きかった。が、残念ながら、私には全く合わなかった。

5000年間の眠りから覚めた圧倒的なパワーを持つBlack Adam。しかし、彼はその力を、ひたすら暴力として振るう。そんな彼に対し、スーパー・ヒーロー・チームが制圧に乗り出すのだが…。というお話。Dwayne Johnsonを、常識の枠に囚われない、ただただ強いだけの男として描くのは正解だと思うし、その存在感は見応え十分。また、彼に対抗するスーパー・ヒーロー・チームの面々も、馴染みの無い初登場キャラばかりではあるが、意外に魅力的だ。ただ、そうしたキャラクターを、何本もの映画を使って観客に刷り込んでいくMarvelとの差は歴然。DCはこの作品で、イマイチ盛り上がらないDC Extended Universeを再起動させようとしている雰囲気もあるのだが、前途は多難だと思う。

あと、気の利いたセリフを使っているつもりで空回りしている箇所も多いし、生意気な少年が活躍するという私の苦手な展開もあったりして、どうにも馴染めなかった。私としては、Wonder Womanの新作を観たいので、DCには頑張ってもらいたいのだが…



私が日本代表の試合をリアル・タイムで観たのは、今のところ対コスタリカ戦だけ…。にわかファンにありがちな、「自分がTV観戦すると負けちゃう」というジンクスに囚われつつある、今日この頃です。