IN/OUT (2017.11.26)

職場の近くに、どんな店が入っても長続きせず、ほぼ毎年、店舗が入れ替わっている所があります。昨年オープンしたフランス飯屋も一年持たずに撤退し、このたび、スペイン・バルに変わりました。早く試さないと潰れるかと思って行ってみましたが、この味付けでは来年の今頃は…、という感じ。あの場所、何かの呪いに掛かっているのか?


in最近のIN

CANDY DULFER@ブルーノート東京17.11.21

オランダ出身のサックス奏者、Candy Dulferの公演を観に、ブルーノート東京へ行ってきた。

1993年にリリースした二枚目のアルバム"Sax-a-Go-Go"が、日本でも大ヒット。それ以来、一線で活躍し続けている彼女だが、私にとっては、2009年にブルーノート東京でSheila E.との共演を観て以来のライヴとなる。

バックバンドは、ギター、ベース、ドラムス、キーボードが2人。そして、サックスの彼女が登場。流石に華がある。会場は一気にヒートアップし、パフォーマンスが弾ける。最近の彼女は、サックスだけで無くヴォーカルをフィーチャーした曲も増えていて、自分自身がリードヴォーカルを務めることもあれば、ゲストに招いた男性ヴォーカリストにコーラスを付けることもある。歌声も中々素敵なのだが、歌唱した直後に間髪入れずにサックスのソロを突っ込んでくる所が、実にエネルギッシュ(そして、凄い肺活量)だ。

終始、ファンキーなパフォーマンスが続くのだが、単にノリが良いだけでは無い。パーティーソングのようなタイプの曲でもチャラい雰囲気にならないのは、卓越した演奏技量があってこそだと思う。また、途中で一曲、手に持ったソプラノ・サックスのような形の機材で、マイクを通した声のピッチを変えるというパフォーマンスがあったのだが、あれは手持ちのヴォコーダーなのだろうか?面白いサウンドだった(後で分かったのだが、AKAIのEWI 4000Sというウインド・シンセサイザーをヴォコーダーとして使っているそうだ)。

ラストは、"Sax-a-Go-Go"。当然、フロアは総立ち。ドラム・ソロに被せるサックス即興演奏のカッコよさに痺れる。そして、アンコール無しの完全燃焼もカッコ良し

私の席は、ステージ真横で、Candy姐さんの姿を見づらかったのだが、それでも伝わる女っぷりの良さに圧倒されたのだった。


「The Chieftains 結成55周年記念 Forever Tour」@ミューズ アークホール17.11.23

アイルランドの国宝級バンド、The Chieftainsの公演を観に、所沢市民文化センター ミューズ アークホールに行ってきた。アイルランドの伝統音楽を現代的なアレンジで演奏し、グラミー賞受賞7回、The Rolling Stones、Sting、さらに私が偏愛するKate Bushなど、錚々たるミュージシャンとセッションを重ねてきた彼らの公演は、機会があれば必ず観るのだ。今回は2012年の来日公演以来となる。

この日、開演の二時間前からホールはオープンし、ロビーで日本人ミュージシャンによるアイリッシュ音楽の演奏が行われていた。また、アイルランドの食材や雑貨を販売するブースも出店。The Chieftainsの公演ではお馴染みのギネス・ビールの販売も行われており、ちょっとしたアイルランド祭状態だ。

さて、本番。結成から55年も経つと、6人のオリジナル・メンバーのうち、2人は他界し、1人は体調不良でツアー不参加というのは寂しいが、舞台上には、御年79歳、リーダーのPaddy Moloney(演奏するのは、イーリアン・パイプ=バグパイプの一種と、ティン・ホイッスル)、アイルランドの太鼓 バウロンとヴォーカルを担当するKevin Conneff、フルートのMatt Molloyの3人のオリジナル・メンバーと、キーボード&ハープのTriona Marshall、ギターのTim Edey、フィドルのTara Breen、フィドル演奏だけでなくステップダンスも披露するJon Pilatzke、合わせて7人が並ぶ。さらに、曲によって、ステップダンスのNathan Pilatzke(Jonの兄)、アイリッシュダンスのCara Butler、ヴォーカルのAlyth McCormackも登場。この総勢10人が現在のツアーメンバーとなる(2012年の来日メンバーと同じ)。

演奏が始まる。オリジナル・メンバーの高齢者組も衰え知らず。アイリッシュ・トラッドの旋律は日本人の感性に合うと、つくづく思う。そして、演奏と共に楽しいのがダンスだ。Pilatzke兄弟の激しいタップの掛け合い。Cara Butler嬢の美しい躍動感。ダンサーが本職では無いフィドルのTara Breen嬢もヴォーカルのAlyth McCormack嬢も、何度かステップを披露。徹底的に楽しいステージが続く。

彼らのコンサートのお楽しみのもう一つは、ゲスト出演者である。今回も、東京のバグパイプ楽団とコーラス隊の方々がステージに上がり、さらに、メイン・ゲストとしてハンバート ハンバート。熱心なファンとは言えないが、私も結構気にしているデュオである(彼らを最初に知ったのも、ケルティック音楽のコンサートだった)。The Chieftainsをバックに「The Mountains of Pomeroy」に日本語詞を付けたものと、「素早き戦士(Mo Ghile Mear)」を披露。アイリッシュ・トラッドの「Mo Ghile Mear」は、ハンバート ハンバートが「喪に服すとき」というタイトルを付けてカバーしている作品でもある。彼らがゲストに出ると聞いたときは、アイリッシュ・ミュージックがそのルーツの一つにあるとは言え、ヴォーカルの佐野遊穂の柔らかい声が大所帯のバンドに対抗できるか心配だったのだが、実力派のミュージシャン同士の共演に対して杞憂であった。中々どうして、チャーミングに響いていて、とても良い雰囲気だ。

本編ラストでは、ゲストも含め、出演者全員のソロをしっかり聴かせてくれる(その間、Paddyが、早くお酒を飲みたいのに長々と演奏するなよ、というジェスチャーを見せる、お約束のギャグ付き)。そして、アンコールは、会場からも沢山の人がステージに上がって、輪になって踊る大団円。いつもながら、徹頭徹尾、音楽の楽しさに満ちあふれたライヴだった。あと、何度、来日の機会があるか分からないが、是非、56周年、57周年…、そして60周年と、彼らのライヴを観たいものだ。

因みに、今回のツアーでは、この後、長野と横須賀で、矢野顕子をゲストに招いた公演も開かれる。当然、行く気満々なのである。


「上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ LIVE IN JAPAN TOUR 2017」@ビルボードライブ大阪17.11.25

ジャズ・ピアニスト 上原ひろみが、ジャズ・ハープ奏者 Edmar Castaneda(コロンビア出身。活動拠点はニューヨーク)と組んだ公演を観に、ビルボードライブ大阪に行ってきた。なにしろ、ただでさえチケットが取りづらい上原ひろみ。その新プロジェクトということで、この日本ツアーのチケット争奪戦はかなり厳しく(私は、2勝2敗で、まずまずの戦績か)、遠出してでも観に行くことにしたのだ。ジャズ・ハープなんて、聞き慣れない言葉に興味津々である。先日発売された二人の共演アルバムは購入してあるのだが、初回のライヴには敢えて予習なしで臨むことにした。

ビルボードライブ大阪に来るのは初めてだが、ビルの中にある東京とは違い、入り口が地下道に面しているので、入場待ちは、やや落ち着かない。場内は東京に比べるとややコンパクトか。自由席だが、ひろみ嬢の鍵盤裁きもEdmarのハープのプレイもよく見える好位置をゲットできた。

開演。まず、Edmar作曲の、"A Harp in New York"。ジャズ・ハープの音色は、ギターとベースとパーカッションを兼ねたようで、想像とは大違い。しかも、右手と左手を使って、ベースラインとメロディーラインを同時に弾くこともできる。これは、凄い。そこにピアノが加わり、その音の重なり合いの美しさと、アドリブの応酬のスリリングさに、冒頭から一気に引き込まれる。ピアノとハープの二台の楽器だけで奏でているとは、とても思えない。なんだか、とんでもない出来事を目撃しているような、そんな気持ちになる。

演奏の迫力とは裏腹、ひろみ嬢のMCの間、Edmarは終始ニコニコ。今日のお昼は「北極星」でオムライスを食べてきたとか、Edmarが覚えた数少ない日本語の一つが「ラーメン」だとか。ラーメンは、日本に来てから、毎日、食べている(ひろみ嬢に付き合わさせられている?)そうだ。

アップテンポな曲だけでなく、「月と太陽」のようなしっとりした曲でも、二人のコンビネーションは美しく響く。この二人の相性の良さ、まるで、昔からずっと共演してきたかのようだ。

5曲目は、Edmarのソロ"Jesus de Nazareth"。ジャズ・ハープの多彩な音色に、改めて驚かされる。続くひろみ嬢のソロは、"Green Tea Farm"。エンディングを「茶摘み」ではなく「ふるさと」で締めるパターン。

そして、ラストは再び二人の共演。演奏の終盤、ソロの掛け合いが続くのだが、お互い、もの凄いテクニックとアイディアをぶつけ合っていて、しかも、それが対決色には染まらず、どこまでも楽しそうな駆け引きで、もう、ずーっと聴いていたい。

アンコールでは、二人揃って物販のツアーTシャツに着替えて登場。すっかり意気投合している感じだ、年齢も近い二人、これからも、共演を続けて、この驚くべき化学反応がどこまで進化するのか、聴かせて欲しいと願う。遠出した価値、十二分である。

因みに、ビルボードライブ大阪では、支払いが終わると、支払い証明のカードが渡される。これを出口で提示して、無銭飲食じゃ無いことを証明するという、東京には無い仕掛け。確かに、ビルボードライブ東京って、食い逃げしようとしたら、簡単に出来ちゃうよな、と以前から思っていたのだが、これ、大阪の方がリスクが高いと店側が判断しているのかしらん?


"Justice League"17.11.26

DC Comicsの"DC Extended Universe"の新作を観てきた。

前作 "Batman v Superman: Dawn of Justice"で、Supermanを失った地球に、新たな侵略者の魔の手が伸びる。それを察知したBatmanは、Wonder Womanと協力し、特殊能力者のチームを結成すべく、The Flash、Aquaman、Cyborgをスカウトするという筋立て。

他の超人と違い、特殊能力が「大金持ち」というだけ。中年の肉体に鞭打って戦い続けるBatmanが、ヒーロー・チームの結成のため、粉骨砕身する過程を描くというのは、中々面白い。パラダイス島での戦いが非常に巧い演出で、燃える。映画の前半は快調だ。

しかし、後半、なんだか、イマイチ感が漂ってくる。敵役 Steppenwolfの最終目的がなんだか良く分からないし、ラストの決戦の舞台もパッとしない。なぜ、ロシアの田舎町? また、ストーリーの展開が速過ぎて、重みが無い。Zack Snyder監督の構想では3時間程度の作品になるところ、彼が、作品完成の目前で監督を降板(家族の不幸が原因)したことで、長い作品を嫌う映画会社が、これ幸いと2時間にまとめさせたという噂もある。私も、3時間越えの映画よりは、2時間で収めてくれた方がありがたいとは思うが、それにしても、この展開は端折りすぎだと思う。

アメコミの実写化において、ライバル Marvelが、スーパーヒーローの単体主演作を積み重ねながら、数年おきに、彼らが一堂に会する"Avengers"を製作するという、大掛かりな"Marvel Cinematic Universe"を展開しているのに対し、DC Comicsは大きく出遅れている。結果、DCヒーローの集結作となるこの映画は、ストレートに"Batman v Superman: Dawn of Justice"の続編となっていて、前作(と、"Wonder Woman")を観ていないと、分かりづらいところがあると思う。その点、Marvelの作品は、どこから観ても、それなりに楽しめるように考えられているという印象がある。また、"DC Extended Universe"で、これまで単独主演作が作られたヒーローが、SupermanとWonder Womanだけというのも、ヒーロー集結作としては弱い。この調子だと、映画界でDCがMarvelを逆転することは(追いつくことすら)難しいと思う。

結果、色々と面白い要素は多いのに、映画全体の出来としてはガッカリ。しかし、私の評価は、Gal Gadot嬢のWonder Womanの活躍をたっぷり見られるという一点で、一気に逆転してしまう。美しさは正義なのだ。



「スペイン・バル」という名称も、「居酒屋」の前にわざわざ「日本風」と付けるようなものだという気もします。まあ、最近は、本来のスタイルとはかけ離れていても、バルと名乗る飲み屋が増えているので、仕方ないのですかね。