IN/OUT (2017.12.3) |
|
冬の矢野顕子強化月間スタート。今年は、上原ひろみ推奨月間同時開催という感じで、いつも以上に慌ただしい年末です。 最近のIN「上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ LIVE IN JAPAN TOUR 2017」@ブルーノート東京 (17.12.1)先週の大阪に引き続き、ジャズ・ピアニスト 上原ひろみが、ジャズ・ハープ奏者 Edmar Castaneda(コロンビア出身。活動拠点はニューヨーク)と組んだ公演を観に、今度はブルーノート東京に行ってきた。ブルーノートのチケットは、全て高倍率の抽選だったのだが、第一希望の金曜の2nd showが当選。しかも、当たった席は、Edmarのほぼ真正面のアリーナ指定エリアという強運だったのである。 先週のビルボードライブ大阪に比べると、やはりこの会場の方が、私はホーム感を覚えて、和める。また、ブルーノート東京にひろみ嬢が出演するときの恒例企画、料理とカクテルのスペシャル・メニューを彼女自ら紹介するビデオが開演前に流れるのも楽しい。 そして、本番開始。冒頭から、先週のビルボードライブ大阪に比べて、二人の熱量が5割増しという感じの迫力だ。とにかく、ひろみ嬢が、唸りながら、中腰でピアノに挑みかかり、飛び跳ねる。一方、Edmarも、前回は気がつかなかったが、結構、演奏中に声を上げている。そして、Edmarのプレイが良く見える位置だったことで、ジャズ・ハープの多彩な演奏法に改めて驚かされた。そこから紡ぎ出される音色の幅広さは、ハープのイメージを全く覆すものだ。ギターのようだったり、ベースのようだったり、あるいは、パーカッションのようだったり。しかも、一台のハープから、短音では無く、複雑に絡み合った音が、ひろみ嬢の超絶技巧に全く引けを取らないスピード感で溢れ出すのだ。まさに、今まで、観たことも聴いたことも無い、凄いアンサンブルが目の前で繰り広げられている。 3曲目が、ひろみ嬢のソロ。毎回、演奏曲を替えてくるのだが、今回は"Cape Cod Chips"。矢野顕子とも共演した、私の好きな曲で嬉しい。 Edmarのソロ。そして、このプロジェクトのために作られた組曲"The Elements"と、演奏は続く。大阪でも感じたが、二人が、テクニックとアイディアを繰り出す即興の掛け合いは、いつまでも聴いていたいと思わせる楽しさだ。 今回も、アンコールでは、二人揃って物販のツアーTシャツに着替えて登場。この、同年代の仲良し感も、良いなぁと思う。二人が出会ったのは、昨年の6月。モントリオールのジャズ・フェスティバルの舞台袖で、Edmarの演奏を初めて見たひろみ嬢がピンときて、「確保!」したそうだ。いや、本当によくぞ確保して下さった。まだまだ、この先も楽しみな二人である。 「The Chieftains 結成55周年記念 Forever Tour」@長野市芸術館&横須賀芸術劇場 (17.12.2-3)先週の所沢に引き続き、アイルランドの国宝級バンド、The Chieftainsの公演を観に、土曜日は長野、日曜日は横須賀に行ってきた。この二日間は、矢野顕子がゲスト出演。私としては、外せない公演なのだ。 長野市芸術館は、長野市役所に併設された、キャパ 1,292人のホール。ロビーは、お役所的であまりぱっとしない雰囲気だが、中は、綺麗なホールだ。 今回も、舞台上には、御年79歳、リーダーのPaddy Moloney(演奏するのは、イーリアン・パイプ=バグパイプの一種と、ティン・ホイッスル)、バウロン(アイルランドの太鼓)とヴォーカルを担当するKevin Conneff、フルートのMatt Molloyの3人のオリジナル・メンバーと、キーボード&ハープのTriona Marshall、ギターのTim Edey、フィドルのTara Breen、フィドル演奏だけでなくステップダンスも披露するJon Pilatzke、合わせて7人が並ぶ。さらに、曲によって、ステップダンスのNathan Pilatzke(Jonの兄)、アイリッシュダンスのCara Butler、ヴォーカルのAlyth McCormackも登場。この総勢10人が今回のツアーメンバーだ。因みに、Triona Marshallが使うハープは、形状はEdmarが使っている物に似ているが、大きさは半分以下。そして、こちらは、ハープに抱いているイメージ通りの流麗な調べを奏でるのだ。 演奏が始まる。いつ聴いても、アイリッシュ・トラッドの旋律は、素直に染みてくる。個人的には、序盤の一番のお楽しみは、フィドルのTara Breen嬢のソロ(ステップダンス付き)なのだが、今日の席は舞台に向かって左寄りで、彼女から遠いのが、この時点ではちょっと悲しい。しかし、私の正面方向には、電子ピアノが鎮座している。今日のゲストの矢野顕子が近い席なのだ。結果的には、嬉しいのである。 もう一つ、前半の見物の一つが、宇宙飛行士との共演だ。NASAのCady Colemanは、MattのフルートとPaddyのティン・ホイッスルを持って国際宇宙ステーションに滞在し、そこで演奏したビデオを送ってきたのだ。そのビデオと共演するThe Chieftains。55年目にして、宇宙進出なのである。これは、宇宙大好きの矢野さんも羨ましいだろうな。 さて、中盤にゲストとして登場した矢野顕子。映画「Barry Lyndon」にも使われたアイルランドのトラディショナル・ソングに日本語詞を付けた「Woman of Ireland」、彼らのアルバムにも収録されている共演曲「Sake In The Jar」、そして、アイルランドのトラディショナル・ソングを英語のままで歌う「The Mountains of Pomeroy」の合計3曲を披露。何度も共演を重ねてきただけに、とても自然にバンドと溶け込んでいるし、お互いにリスペクトし合っているのが伝わってくる、素敵なステージだ。 ゲストはもう一人。東京パイプバンド。所沢には、バンドで出演したが、今回は、代表の一人だけで、バグ・パイプを演奏。 ラストは、例によって、ゲストも含め、出演者全員のソロをしっかり聴かせてくれる(当然、Paddyが、早くお酒を飲みたいのに長々と演奏するなよ、というジェスチャーを見せる、お約束のギャグ付き)。東京パイプバンドの人は、ソロパートで唱歌「もみじ」。これは会場も盛り上がるうまい選曲だ。一人でも、しっかり存在感をアピール。続く矢野顕子は、青森民謡「ホーハイ節」をモチーフにした「津軽ツアー」を演奏したのだが、日本つながりになってしまって、ちょっと、損したかな。そして、アンコールは、会場からも沢山の人がステージに上がって、輪になって踊る大団円。所沢に比べて、最初、踊りに参加する人が少ないかなと思っていたが、最終的にはステージから溢れるほどの大人数になった。皆、良い笑顔だ。 翌日は、横須賀芸術劇場。ここは、何度か訪れたことがあるが、オペラハウス仕様の豪華な雰囲気で、キャパ 1,806席。音響も素晴らしい。会場には、和太鼓奏者、林英哲の追加参加を知らせる貼り紙がある。2012年の来日公演でもゲスト参加。その時は、矢野顕子がゲストで出たのとは別の日。ということは、今回は林さんと矢野さん、二人揃って見られるということで、テンションが上がる。 座席は、舞台に向かって右。矢野顕子からは遠いが、正面に林英哲の和太鼓群がセッティングされていて、今日は右サイドで正解だ。加えてフィドルのTara Breen嬢のソロ(ステップダンス付き)も近くで見られて、嬉しい。 The Chieftainsの公演は、その土地のミュージシャンをゲストに呼ぶことが多く、必然、地方公演よりも、首都圏での公演の方がゲストが多くなる。それを予感させるように、演奏曲は昨日より間引きされているようだ。と、思っていたら、まずは、所沢にも出演したコーラス隊"ANONA"が登場。所沢の時よりもリラックスしているように見える。アメリカの民謡"Shenandoah"(この曲は、矢野顕子も自身のアルバムで取り上げている)などを聞かせる。 そして、矢野顕子登場。「Woman of Ireland」と「The Mountains of Pomeroy」を歌唱。昨日と演奏順が違うのは、ここで、林英哲を呼び込むため。そして、彼の和太鼓が加わって迫力が大幅に増した「Sake In The Jar」。見事なパフォーマンスだった。 次のゲストは東京パイプバンド。長野では一人だったが、今回は、立派なマーチング・バンドとして出演。長野の人には申し訳ないが、やはり、バグ・パイプの演奏は、これぐらいの大所帯で演奏してこその迫力だと実感する。 ラストの、ゲストも含めた全員でソロを回す演奏では、さらに日本の女性バンド(フィドル、パイプ、ハープ、バウロン、フルートと、The Chieftainsと同じ楽器を使用)も参加し、次々と楽しいソロ聴かせてくれる。矢野顕子は、今回も「津軽ツアー」。林英哲の和太鼓の迫力のソロも素晴らしいし、Tim Edeyがギターでは無くアコーディオンで、Tara Breen嬢がフィドルでは無くサックスで演奏するのも楽しい。そして、アンコールの、会場からも沢山の人がステージに上がって輪になって踊る大団円。今日も、楽しさがてんこ盛り。ゲストが多かった割には、ほぼ予定通り、1時間50分ほどでパフォーマンスが終わったのは、やはり、メンバーの高齢化かな(以前は、もっと長時間のライヴだったと思う)。 今回の来日ツアーでは、全9公演(プラス、ワークショップを一回)行うThe Chieftains。その内、3回を観ることができたが、これだけの素晴らしく楽しいパフォーマンス。これが最後の来日とならない事を切に願う。 今週は、二件とも、先週と同じコンサート。優れたミュージシャンの公演は、複数回観ても、毎回、新たな発見と驚きがあるものです。 |