矢野さんとは青山学院高等部時代の同級生。「赤い鳥」のドラマーとしてプロデビューし、さだまさしさんのアレンジャー / プロデューサーとして活躍された後、米国で作編曲と指揮法を学ばれ、多くの映画やテレビドラマの音楽を手がけています。OEKとはNHK大河ドラマ「利家とまつ」の音楽を担当してからのご縁だそうです。(ちなみにNY在住の矢野さんはその話を知っても、「りけとまつ」?と、どこで区切って読むかも分からなかったそうな…)
1988年設立。音楽監督は岩城宏之氏。金沢に拠点を置きながらも、国内外で精力的な活動を行い注目を集めるオーケストラ。
第一部は、渡辺俊幸氏指揮によるOEKの演奏。渡辺氏の作品と、ジョン・ウィリアムスの作品が披露された。個人的には、フル・オーケストラの生演奏で聴くスターウォーズに燃えた。条件反射的にオープニングの文章が流れる映像が浮かんでくる。それだけ、OEKの演奏が上手いということだろう。20分の休憩後、渡辺氏の紹介によって矢野さん登場。
最初は、ピアノ・ソロ。演奏の調子は非常に良い。特に「Night Train Home」が秀逸。良い曲だと改めて思う(因みに、初めて聞いたときは、歌詞中、勾配の単位が%になっていたのが、ちゃんと‰に訂正されていた)
続いて、オーケストラが入り、渡辺氏とのトークの後、「おおパリ」と「LOVE LIFE」。矢野さんの演奏スタイルとオーケストラの組み合わせに不安も感じていたのだが、全くの杞憂だったようだ。とても丁寧で、矢野さんの良さを活かすオーケストラ・アレンジが施されていると感じた。ジャズ・スタンダード「MY ROMANCE」は、オーケストラをバックに、矢野さんはスタンディングで歌唱に専念。OEKとの共演の最後は「ひとつだけ」。これに関しては、割と「普通」のポップス・アレンジという印象で、もっとオーケストラらしさを強調しても良かったのではないかと感じた。
渡辺氏と矢野さんが舞台袖に引っ込んでは、拍手に促されてすぐに再登場、を繰り返す、クラシック・コンサートでの文法に則ったアンコールでは、ソロで「GREENFIELDS」。本当は、この曲こそオーケストラとの共演で聞きたかった。最後に渡辺氏指揮、OEKの演奏で「利家とまつ」。
渡辺氏の編曲と、OEKの演奏能力の高さが、矢野さんの世界ときれいに融合した、予想以上に良い演奏だった。ただ、事前準備の問題があるから仕方ないのだろうが、共演が4曲だけというのは、物足りなさが残る。
さらに、石川県立音楽堂の音響・雰囲気が実に素晴らしかった。地方都市でありながら、高い実力を誇り商業的にもがんばっているオーケストラを維持し、駅の真ん前に、こんなに立派なコンサートホールを造ったということは、石川県の文化度の高さを物語っていると思う。因みに、この日は金沢の花火大会だったせいか、浴衣姿の女性観客もちらほら。
ここは、神戸、ポートピアホテル内にあるホールだが、ホテル併設の施設とは思えない規模のホールだった。ただし、前日の石川県立音楽堂に比べると、雰囲気、音響とも一歩譲るという感じではある。
第一部は、昨日と同じ。
矢野さんのソロの調子の良さは、「Night Train Home」が始まる前のピアノをつま弾きながらのMCの充実に現れていたと思う。
OEKとの共演は、私が聞き慣れたという要因もあったとは思うが、昨日よりも一層、まとまりが出ていると感じられた。「おおパリ」の演奏は、特に充実し、オケ全体と本当に息が合ったものだったと思う。さらに、昨日はちょっと否定的な感想も抱いた「ひとつだけ」も、今日の演奏は「このポップ感を押し出した世界を提示したかったのか!」と納得させられる力のこもったものだった。
4曲だけではもったいない、是非、次の機会を楽しみにしたい企画だった。