2014年夏、狛江エコルマホールで、2011年に行われた公演の「アンコール」という形で弾き語りライヴが開催されました。
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三年ぶりに、日本で三番目に小さな市、狛江で、16時30分というやや中途半端な時間に開演。会場のエコルマホール(名前は、Ecology、Community、Originality、Reborn、Message、Amenityの頭文字を取ったらしい)は、キャパ728席。今回も一杯のお客さんだ。
一曲目、くるりのナンバーがオーソドックスな弾き語りスタイルで演奏されるのを聞いて、これが「普通の弾き語り公演」であることを実感。今年は、「飛ばしていくよ」に関連したライヴばかりだったので、逆に新鮮だ。
二曲目と三曲目は「飛ばしていくよ」からの選曲だが、今日は弾き語りライヴ・バージョン。適度に熱くはなるが、あくまでも軽快なアレンジ。
リラックス・モードの弾き語り公演。MCも、開演直前にエコルマホールを襲った「断水」の話や、レジ袋をガサガサする音がコンサート会場では結構耳障りなど、あちこちに飛びながら、あくまでも軽やかに。
パブリックでは初演となるリンドバーグのトリビュートアルバムに提供した四曲目に続いて、久々「たいようのおなら」! 攻めるピアノで聴き応え十分。改めて、カッコ良い曲だと実感。
CDが売れなくなっているという話題から、現在、厳しい状況に置かれているアーティスト達を念頭に置きつつ(?)「ニットキャップマン」。その流れで、ムーンライダーズのメンバーの話につなげて「かしぶち君」(矢野さんが、ライダーズのメンバーを君付けで呼ぶのが、なんとも味わい深い)の「リラのホテル」。
さらに、奥田民生の「野ばら」のカバーを歌った後、男性ミュージシャンのカバーが多い理由について、「歌詞を重視しているのだが、女性アーティストの作品って、どこまでも剥いても、『私』『私』『私』で、自分が入れない。男性アーティストの作品には『私』は無く、でも、そこにある『想い』に共感して歌うことができる」というような意味のことをおっしゃっていって、非常に興味深かった。
「飛ばしていくよ」は、弾き語りということもあって、目新しいアレンジだった。一方、アンコールの「YES-YES-YES」は、ピアノ一本で難しい演奏をやり遂げた! という感じ。それにしても、今回のアルバムに収められた作品のクオリティの高さを再度、実感。アンコールラストの「PRAYER」は、しみじみと美しく、リラックスした雰囲気を出しながらもクオリティの高い公演、終了。
今回のステージで、もう一つ印象的だったのは、ライティングの巧みさだ。特に、凝った機材を使っているわけでは無く、照明の色と、明かりを当てる角度で工夫を付けているだけなのだが、曲にぴったり合った、非常に効果的で、弾き語りの照明、かくあるべき。という感じだった。特に、「たいようのおなら」と「飛ばしていくよ」の時のライティングは印象的だ。
今年は、2月に超絶傑作アルバム「飛ばしていくよ」が発売されたため、その後のライヴは、このアルバムをメインに据え、サポート・ミュージシャンとともに演奏するパターンばかりだった。言うなれば、矢野さんのライヴでは「おかず」に相当するパフォーマンスが続いていた。今回、久しぶりに、ピュアな弾き語りライヴを観ると、これこそが「ごはん」に相当するな、と感じた。シンプルだけど奥深い「ごはん=弾き語り」と、技巧を凝らした「おかず=バンド形式」の両方があってこその、矢野さんのライヴだとつくづく感じた公演だった。