公演日 | 開演 | 会場 |
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2023年3月24日(金) | 19:00 | 大手町三井ホール |
2023年3月25日(土) | 17:00 |
ビジネス街、大手町の、三井物産ビル 3Fにある大手町三井ホール。キャパは560席。コンサート専用ではなく、セミナーや展示会などにも使えるようになっているホールだが(そのせいか? 入場時にドリンク代 600円)、音響は中々良好。舞台上には、C. BECHSTEIN D-282が、LEDと思われる白色の照明に照らされ、浮かび上がって見える。椅子は、例によって、コクヨのingLIFEピアノ演奏用プロトタイプ。
開演。意表を突いて、新アルバム収録曲では無い曲からスタート。地上から見上げる月を、情感たっぷりに歌い上げる2曲。そして、昨日出来たばかりという宇宙を目指す宇宙飛行士を歌った曲。
4曲目にして、いよいよ、宇宙に出発である。ステージの背景全体を使って、大きな映像が映される。「ドラゴンはのぼる」のMV映像から文字を除いたもののようだ。ここから、新アルバム収録曲が続くが、背景には、野口聡一さんが撮影した映像 & NASAから提供を受けた映像が流される。当たり前だが、曲との相性はバッチリ。映像と一体化した矢野さんのライヴというのは、初めてだ。
中盤、やや目先を変えて、10曲目「When We're in Space」。イヤモニを装着した矢野さんが打ち込みサウンドをバックに弾き語る趣向。そして、宇宙に行く人の事を想って歌われた「PRAYER」と、しっとりヴァージョンの「ひとつだけ」(宇宙にいたら呼び出せない、との歌詞有り)。
野口さんの朗読が流れて、宇宙の映像も復活して「青い夜」。ここから後半戦。ここまで、矢野さんのMCは、脱線すること無く、曲のことや宇宙のことを語っていたのだが、「愛しい野菜」の演奏前には「宇宙で初めて収穫されたレタスを、満面の笑みで食べた油井宇宙飛行士は、実はレタス嫌い」と、笑いを誘う。
船外活動で感じる生命の尊さを語る野口さんの言葉(『宇宙においでよ!』)が流れて、「宇宙を歩くひとたち」、「透き通る世界」、「雲を見降ろす」で本編終了。新アルバム収録曲は全て披露された。
アンコールの1曲目は、さらに遠く、木星まで。ここでもイヤモニを装着した矢野さんが打ち込みサウンドに合わせて演奏。そして、最後は、Blu-rayのReading Video収録時と同様、野口さんの朗読に矢野さんが即興でピアノ伴奏を付ける。何とも、憎い演出だ。これで、全編終了。
いわゆるリサイタル系の弾き語り公演とは全く違う、見事に作り込まれたライヴに、すっかり打ちのめされた感じだ。演奏・歌唱はもちろんのこと、選曲も、映像&照明効果(新アルバム収録曲の時は宇宙映像。打ち込みサウンドが入るときは動きのある照明効果。それ以外の弾き語り時は落ち着いた照明)も、MCも、全て一貫したコンセプトで統一されている。実に、素晴らしい体験をさせていただいた。大感激である。
二日目。会場は同じく、三井物産ビル 3Fにある大手町三井ホール。ボーディング・パスを模したチケットには、「Spacecraft: C. BECHSTEIN D-282」と記載されているが、確かに、ステージ上、白色の照明に浮かび上がるグランド・ピアノとコクヨのingLIFEピアノ演奏用プロトタイプ椅子は、宇宙船っぽい佇まいだ。客入れの音楽は、珍しくクラシック。バルトークの「作品14」。
セットリストは、昨日と同じ。まずは、地上から見上げる月を、情感たっぷりに歌い上げる2曲と、おととい出来たばかりという、宇宙を目指す宇宙飛行士を歌った曲。
4曲目で、観客共々、ドラゴンに乗って、宇宙に出発である。ステージの背景全体を使って流される大きな映像で、矢野さんのカウント・ダウンと同期してロケットが飛び立つ瞬間は、臨場感たっぷり(昨日とは、ヴィデオの編集を見直しているような気がする)。矢野さんの歌声も、昨日以上に迫力に満ちている。ここからの新アルバム収録曲の演奏では、背景に、野口聡一さんが撮影した映像 & NASAから提供を受けた映像が流される。私の席は、昨日よりもバランス良く全体が見渡せるポジションだったので、より、宇宙空間を体感している気になる。
中盤の、インターミッション的なパート。イヤモニを装着した矢野さんが打ち込みサウンドをバックにノリノリで歌う「When We're in Space」。しみじみと「PRAYER」。上空 400Kmにいる宇宙飛行士を呼び出すことは出来ないけれど、思い出してね、と歌う「ひとつだけ」。
野口さんの朗読が流れて、「青い夜」。ここから後半戦だ。国際宇宙ステーション滞在中の野口聡一さんと行ったヴィデオ・チャットの話など、昨日よりもMCは長目。矢野さんにも余裕が出てきたのかもしれない。
死の世界である宇宙に行くからこそ生命の貴重さを実感するという野口さんの朗読(『宇宙においでよ!』)が流れて、「宇宙を歩くひとたち」、「透き通る世界」、「雲を見降ろす」で本編終了。新アルバム収録作品、全曲披露である。
アンコールの1曲目は、さらに遠く、木星まで。ここでもイヤモニを装着した矢野さんが打ち込みサウンドに合わせて演奏。そして、最後は、野口聡一さん自身による「ドラゴンはのぼる」の朗読に合わせ、矢野さんによるピアノの即興演奏。最後の挨拶で、映像スタッフも含め、皆に感謝の意を表されて、全て終了。
歌唱の迫力は、確実に、昨日よりも増し増しだったと思う。そして、選曲も、映像&照明効果も、見事に作り込まれ、一貫したコンセプトでまとめ上げられたライヴ。とても貴重だと思う(記憶をひっくり返すと、立花ハジメ氏のヴィデオ作品とのコラボレーション的なライヴなども有ったが、実写映像とここまで一体化したのは初めてだろう)。やる時は徹底してやり切る、矢野さんの凄みを感じパフォーマンスだった。鑑賞と言うよりも、素晴らしい体験、という表現がピッタリくる公演だった。