山口市湯田温泉生まれの詩人、中原中也の生誕100年の記念イベントとして、2007年4月29日〜5月6日、山口市中央公園横特設テントにて、「サーカス小屋でコンサート」が開催。矢野さんは、5月1日に出演されました。他の日には、福島泰樹、友川かずき、おおたか静流、友部正人、谷川俊太郎、谷川賢作、深川和美、ハナレグミ、あがた森魚、田中泯、佐々木幹郎、覚和歌子、Voice Space(以上、敬称略)が出演。また、詩のボクシング山口大会も行われました。
沢入マールイサーカス団は、沢入国際サーカス学校の在学生・卒業生からなるミニ・サーカス団。今回出演したのは、卒業生3名と在学生4名によるチームだそうです。また、テント外で、9mの高さのポール上でのパフォーマンスを披露したのが、Les Cousinsのメンバー、Julot氏でした。
日本のボブ・ディランとも呼ばれるベテラン・フォークシンガー。また、詩の朗読イベント「ノーメディア」も主宰されています。
* は、友部正人さんのソロ。** は、友部正人さんと共演した曲。
開場前には、テント前でJulot氏の超絶曲芸。また、物販コーナーでは、受注販売だったはずのDVD「音楽のちから 〜吉野金次の復帰を願う緊急コンサート」が並んでいた。後の矢野さんのMCで明らかになったが、Amazon(やTower Recordsも)が、この商品の意義を感じて、在庫リスクを承知で余分に注文を入れてくれたということらしい。
500人ほど収容という白いテントの中は、舞台も白の布で覆われている。その中央にグランド・ピアノが置かれているが、カバーが掛けられたまま。舞台奥には、中原中也の肖像が投影されている。舞台と客席最前列の間には、5mほどの広めの空間が横たわり、その空間の真ん中には、天井から太いロープが吊り下げられている。
6時半、まずはクラウンが登場。一笑い取った後、サーカス団の皆さんによるパフォーマンスの数々。ジャグリング、ロープを使った曲芸に空中ブランコ。若手のパフォーマーを間近で見ていると、苦しそうな顔や、微妙に手元が狂って「やばっ」という表情をするところなども良く分かり、余計にハラハラする。予想以上に盛り上がった30分強のパフォーマンスだったが、舞台上のピアノの前に曲芸師の皆さんが集合したラストの絵は、相当、シュールなものだ。
それから、ピアノのカバーを外し、マイクをセットして、矢野さん登場。テントということで感じていた不安を吹き飛ばす音響の良さに、まず驚いた。ピアノの響きも声の通りも素晴らしい。さらに矢野さんの調子も素晴らしい。4曲目「さようなら」の歯切れの良い演奏が印象深い。イベントの主旨に応えてか、詩を意識した選曲なのかという気もする。
7曲目「フロッタージュ氏の怪物狩り」に続いて、その作詞者の友部正人さん登場。矢野さんは一旦退場し、友部さんによる詩の朗読とギター弾き語り二曲。その独特の存在感で皆を引き付ける。外では雨が降り始め、テントの屋根を雨粒が叩く音が響くのも、むしろ良い雰囲気だ。矢野さんが再登場して、二人の共演。この手のフォークソングのバックを演奏する矢野さんを見る機会はあまり無いが、見事にお互いを引き立てあう演奏になっていて、その懐の深さに改めて感心。中途半端な政治談議など、緩い感じのMCも楽しい共演時間だった。
雨は上がり、終盤からアンコールにかけては、最近のコンサートでの定番の流れ。最後まで、レベルの高い演奏が続いた。白を基調にしたテントの雰囲気も良く、とても充実した公演だった。
鯉吉さん、ありがとうございました。