IN/OUT (2023.7.23)

なんだか、なし崩し、という感じで梅雨が明けました。


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「特別展 『恐竜図鑑』 失われた世界の想像 / 創造」 @ 上野の森美術館23.7.17

上野の森美術館「Paleoart(パレオアート / 古生物美術)」の展覧会を観に、上野の森美術館に行ってきた。

恐竜関係の展覧会というと、発掘された化石資料をメインに博物館で開催というのが定番だが、今回は、恐竜の化石を元にして描かれた復元画を主役に美術館で開催というのが、ミソ。

上野の森美術館1878年、ベルギーの炭鉱でイグアノドンの全身骨格化石が大量に見つかった頃から、恐竜に関する研究が進んだということだが、当時の復元図は、現在の我々の目からすると、まさに異形の生物。

上野の森美術館しかし、このような活き活きとした構図には、当時の画家達の無邪気とも言える想像力が発露しているようで、楽しい。

上野の森美術館今ではすっかり見なくなったゴジラ・スタイルの直立恐竜は、我々世代にとっては、恐竜のデファクト・スタンダードだ。

上野の森美術館派手なバトル物も、燃えるなぁ。

できれば、この手の、レトロだけど勢いを感じるパレオアートだけで、全編、押し切ってもらいたかったのだが、展示の途中に、日本の現代美術家の作品コーナーがあったのは、ちょっと、企画がブレちゃうような気がして、残念。

上野の森美術館展示の後半には、最新の知見に基づいた新しい作品も展示されている。リアルさは増しているんだろうけど、趣きに欠けると思ってしまうな。

もう一工夫は欲しい気がしたが、中々に興味深い展覧会だった。


"Mission: Impossible - Dead Reckoning Part One"23.7.22

Tom Cruise主演「スパイ大作戦」シリーズの最新作を観てきた。彼が自らプロデューサー兼主役として、Tom Cruiseをカッコ良く見せること(だけ?)に拘ったシリーズだ。

映画の出だしは、ややテンポが悪く感じたのだが、物語が転がり始めると、あとは一気呵成にアクションのつるべ打ち。ただ、Tomのスタント・シーンは、相変わらずとんでもない事をやっているのだが、もはや驚かなくなってしまったな。クライマックス・シーンは、「The Cassandra Crossing(1976年。邦題「カサンドラ・クロス」)」が頭をよぎったのだが(我ながら古い…)、もちろん、アクションのアイディアと迫力は全くの桁違い。

正直、ストーリーはいささか雑で、ご都合主義も目立つ。が、人気娯楽シリーズの最新作として、とても良く出来ていると思う。敵の正体もタイムリーだし、ヒロイン的なポジションの女性を複数投入するサービス精神も良し(Tomのモテっぷりを強調する意図もあるだろうが)。二部作の前編だが、後編への期待を煽りつつも、一本の映画として完結させているところもお見事。

このシリーズは、これで7作目。初期の4作は、毎回替わる監督毎に色合いが大きく変わっていたが、2015年の”Rogue Nation”、2018年の”Fallout”に続いて、3作連続でChristopher McQuarrieが監督したことで、シリーズ物としての安定感が増している。Tom Cruiseと、Ving Rhames & Simon Peggのチームワーク(と言うか、この二人がTomにひたすら尽くす関係。という気もする)が醸し出すお馴染み感も楽しい。

ただし、シリーズ物としての安定感は、マンネリと表裏一体な訳で、どのような新機軸を入れてくるかが製作陣の腕の見せ所になる。それを意識したのか、今作で、あの登場人物が殺されてしまったのは、個人的にはとても残念だ。さすがに、”Part Two”でまさかの復活は無いだろうなぁ。


「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023 サマーナイト・ジャズ」@ミューザ川崎シンフォニーホール23.7.23

ミューザ川崎「音楽のまち・かわさき」を標榜する川崎市で、2005年から続く夏の音楽祭「フェスタサマーミューザ KAWASAKI」。その一環で開催された公演を観に、ミューザ川崎シンフォニーホールへ行ってきた。

ミューザ川崎この日の出し物は「サマーナイト・ジャズ」。ミューザ川崎のジャズ部門・ホールアドバイザーに新たに就任した宮本貴奈の就任披露公演でもある。彼女のパフォーマンスはブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラのピアニストとしては何度も観たことはあるが、彼女自身がフロントに立つライヴを観るのは初めてだ。

目を疑うほどの豪華メンバーでのライヴなのだが、私はチケット取得にすっかり出遅れ、席は舞台の裏側(このホールは、ステージの後方にも座席が配置されている。サントリーホールに近い感じだ)。プレイヤーを後ろから観ることになるし、音響も良くないだろうが、まあ、一度は体験してみたいと思っていた座席なので、これはこれでOKである。

開演時刻は17時。その前、16時20分から、若手ミュージシャンによるプレコンサートとして、中川就登(ピアニスト。23歳)と鈴木真明地(サックスとタップダンス。19歳)のコンビの演奏が25分間、客電が点いたままの状態で行われる。タップが入ることで、大道芸風味が出てくるが、かしこまらずに聴く分には、良い感じだった。

本公演は三部構成。第一部は「宮本貴奈ステージ」。宮本貴奈のピアノとヴォーカル(ブルーノート東京では観たことが無かったが、彼女はヴォーカルもいけるのだ)。ベースのPat Glynnと、ドラムスのDennis Frehseを従え、「Fragrant Forest~香る森」、「Tea for Two」。さらに、ギターの小沼ようすけも参加して、「Tell Me a Bedtime Story」、「Over the Rainbow」、「Rainbow」。意外にも(と言うのは失礼だが)、ヴォーカリストとしても中々のものだ。

15分の休憩後、第二部「ゲストステージ」。第一部の4人はそのままに、八神純子、佐藤竹善という豪華ヴォーカリストとエレクトリック・ヴァイオリンのSUGIZO、さらに、トランペットのエリック・ミヤシロ、サックスの本田雅人、トロンボーンの中川英二郎という、凄い布陣だ。佐藤竹善は、Bill Withers の「Hello Like Before ~ Just the Two of Us」、Sing Like Talking(と言うか、自身)の「Spirit of Love」。SUGIZOは、ギタリストではなく、ヴァイオリニストとしてDavid Bowieの「Life on Mars?」、八神純子は自身の「Mr.ブルー ~私の地球~」、「みずいろの雨」。宮本貴奈のトリオをバックに彼らがリードを取りつつ、ブラス隊が要所要所に参加。本田雅人は、サックスだけで無く、バック・コーラスも披露。なんとも贅沢。

そして、第三部は「追悼バート・バカラック特集」。鍵盤ハーモニカを演奏する宮本貴奈、チューバを吹くPat Glynn、タンバリンを持ったDennis Frehse、そして佐藤竹善が行進しながら入場し、「Raindrops Keep Fallin’ on My Head(雨にぬれても)」。ここから、「Arthur’s Theme((ニューヨーク・シティ・セレナーデ)」、「The Look of Love(愛の面影)」等々、 Burt Bacharachの名曲の数々が、豪華ゲストの組み合わせを色々変えながら演奏される。特に、佐藤竹善・八神純子・宮本貴奈の三人がアカペラで披露した「Close to You(遙かなる影)」は聴き応え有り。本編最後は、全員揃って「That’s What Friends Are for(愛のハーモニー)」。ジャズ系ミュージシャンとポップス系ヴォーカリストの中、ロッカー SUGIZOのオーバーな所作が浮いているような、味わい深いような、という微妙な空気も見所か。

アンコールは、SUGIZOと宮本貴奈の二人で坂本龍一の「Merry Christmas Mr. Lawrence」。というか、演奏前に披露されたSUZIGOの思い出話に敬意を表して「禁じられた色彩」と表記すべきかな。SUGIZOのエレクトリック・ヴァイオリンは、David Sylvianのヴォーカルをイメージしていたようだ。

そして、全員が再登場して、アンコール2曲目「What a Wonderful World 」で全編終了。

ということで、豪華メンバーのお楽しみ感満載のパフォーマンスを堪能したのだが、それ以上に感銘を受けたのは、このホールの音響の素晴らしさだ。舞台の後方の席で、演奏者の顔は見えないし、PAスピーカーもこちらには向いていない。それでも、響いてくる音は、実に豊潤、特に八神純子の声質と合っているのだろうか、彼女のヴォーカルがとても魅力的に聴こえたのが印象的だった。「みずいろの雨」での八神純子のヴォーカルとブラス隊のホーンの響きとの絡み合いは実に美しかった。

そして、ホールアドバイザー就任披露公演で、これまでのキャリアで築いてきた人脈の賜物と思われる豪華ゲスト陣を集め、音楽監督としてまとめた上に、ピアニストとして、ヴォーカリストとしても実力を見せつけた宮本貴奈。お見事である。今後、このホールで、どのようなジャズ系のプログラムが組まれるのか、楽しみだ。



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”Mad Heidi”23.7.17

「アルプスの少女ハイジ」を元ネタにした、B級映画を観てきた。

映画の舞台は、別の世界線のスイス。ここでは、チーズ会社の社長がスイス大統領になり独裁者として君臨している。ハイジの恋人ペーターは、闇で自家製チーズを売り捌いていたことがバレ、処刑される。さらにオンジも、山小屋ごと爆破されてしまう。復讐に燃えるハイジは、謎の精霊()の導きで修行を積み、最強戦士として独裁者に戦いを挑む! というお馬鹿映画。世界19カ国538人のジャンル映画マニアによるクラウド・ファンディングで、約2億9000万円の資金を集め製作されたということだ。

この手のB級映画は嫌いではない。大人になったハイジ。なぜかイケイケの黒人になっているペーター。もちろん、オンジもクララもロッテンマイヤーさんも登場するサービス精神は楽しいし、チーズへの偏愛や鳩時計など、スイスのあるあるネタを徹底的に笑い飛ばすのは痛快(製作者達は、スイス人)だし、日本の「女囚さそり」や「修羅雪姫」へのオマージュも興味深い(そのため、クララ役には日系の女優を抜擢)。チープなゴア描写も、これはこれで味わい深い。しかし、全ては予想の範囲内。全体としては、微妙な印象だ。

結局の所、スイスの映画オタクが、Quentin Tarantinoと、その界隈のRobert Rodriguezなどに憧れて、それっぽい自主製作映画を作りました。というだけに見えてしまう。意識的に狙っているのだと理解はするのだが、なんか、中途半端にTarantinoをパクって、スベっちゃった。という風に見えるシーン多数。それでも、破綻することなく、それなりにまとまっているのが、逆に辛いと思ってしまう。私の見方が捻くれすぎているかなぁ?



じめじめした雨のシーズンだったのが、梅雨明けで一気に夏本番! というメリハリが無くなってしまった最近の気候だと、梅雨入り/梅雨明け明け宣言は不要なんじゃ無いかと思う、今日この頃です。