IN/OUT (2017.6.11)

宅配便業界の人手不足や労働環境が問題となっていますが、その原因に挙げられているのが、ネット通販、特にアマゾンの過剰とも言えるサービスです。今後のアマゾンの対応が注目される中、我が道を突き進んでいるように見えるのが、ヨドバシカメラ。アマゾン以上に早い配達には、いつも驚かされます。


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"STING 57th & 9th Tour" @ 日本武道館17.6.6

Stingの公演を観に、日本武道館に行ってきた。

私にとっては、いまだにThe Policeの印象が強い彼だが、バンドとしての活動は1977年の結成から実質8年足らず(その後、何度かイベント的に再結成しているが)。一方、ソロ・デビューが1985年なので、すっかりソロの活動の方が長くなっている。ただ、ソロ転向後は、ジャズ、さらにクラシック系に接近し、最近、私はあまり熱心にフォローしなくなっていた。しかし、昨年発表したアルバム"57th & 9th"が、久々のロック・アルバム。これが、快作!このアルバムを引っさげての、ワールド・ツアーでの来日公演である。

ギリギリのタイミングで武道館に到着。今回は有り難くもアリーナ席だ。前座があると聞いていたのだが、18時30分、ステージにSting御大が登場。アコースティックギターで、新アルバムから"Heading South on the Great North Road"を披露。続いて、Stingの息子、Joe Sumnerのステージ。ギター一本での弾き語り。父上そっくりの声質に会場がどよめく。何故か、日本語が妙にに達者である。彼に続いて、テキサス出身の活きの良いロックバンド、The Last Bandolerosのパフォーマンス。

前座が終わって、一旦、休憩。一部から、不満の声が聞こえてくるが、前座付きの公演は昔からあるパターンで、文句付ける事は無いと思うのだが。最近のオーディエンスは、こういうのに馴染みがないのだろうか?

19時30分、いよいよ、御大のステージ。バックは、ドラムスとギター二人で、キーボードは無し。さらに、先ほどの前座の連中がバックコーラスを務めるという、なんだかフリーダムかつ男ばかりのステージ。凝ったセットやスクリーンも無いシンプルな舞台だが、照明は中々凝っている。

新アルバム主体でソロ作品が中心の選曲かと思っていたが、一曲目が"Synchronicity II"。私が、The Policeの作品の中でも偏愛する曲の一つだ!(贅沢言えば、"Synchronicity I"も聴きたかったが…)。二曲目は、"Spirits in the Material World"。予想外のThe Police作品の連打に感涙。さらに、ソロ作"Englishman in New York"と、懐かしめの曲を続けた後、ようやく、新アルバムから"I Can't Stop Thinking About You"。ここに新作を入れてきても違和感無く盛り上がることが、今回のアルバムが原点回帰の傑作であることの証左だ。

そこから、新アルバムの曲をきっちり披露しながらも、"Message in a Bottle"、"Walking on the Moon"など、過去の超名曲もフォローするという、鉄板のセットリスト。さらに、途中、息子のヴォーカルで、David Bowieの"Ashes to Ashes"が披露されるという、嬉しいサプライズも有り(彼は、BowieのTシャツも着ていた。父親よりもBowieが好きなのか? はたまた、Sting印の曲を歌うのは、まだ免許皆伝となっていないのか?)。本編最後は、The Policeの最初期のヒット曲"Roxanne"。演奏の途中ににBill Withersの"Ain't No Sunshine"を挿入するというアレンジで(個人的に)大盛り上がり。上原&矢野と同じく、Stingもこの曲を合体アレンジに取り入れるとは。これも、Synchronicityの一種だ。

アンコールは、The Policeの"Next to You"、そして、大ヒット曲"Every Breath You Take"。バンド全員で挨拶をしてステージを去った後に、さらに、2回目のアンコール。Stingはアコースティック・ギターを弾きながら、ソロ作 "Fragile"。これで全編終了。

Sting(65歳)は、ベースを弾きまくるし、声も出ているし、ジャンプも決める。体型も崩れていない。そして、外連味無しのロックど真ん中というステージが実に嬉しい。パフォーマンスにもセットリストにも大満足。いやぁ、良いコンサートだった。


「メルセデス・ベンツ アート・スコープ 2015-2017 ー 漂白する想像力」@ 原美術館17.6.10

原美術館日本とドイツで、互いに現代美術のアーティストを派遣・招聘し合って、異文化での生活を体験しながら交流を図るという、メルセデス・ベンツ日本株式会社が支援する活動「メルセデス・ベンツ アート・スコープ」の最新の成果を展示する展覧会を観に、原美術館に行ってきた。原美術館は、この活動のパートナーになっていて、前回は、2014年に開催されている。

今回の出品者は、泉太郎と、メンヤ・ステヴェンソン。さらに、過去にこのプログラムに参加した佐藤時啓が招待出品している。

泉太郎の作品は、液晶ディスプレイを用いたインスタレーション。なかでも、飛行機の座席を模した椅子とディスプレイが並ぶ空間(長距離の国際線フライトで、皆、ビデオを観ているところのようなイメージ)を創り出した作品は、力作であると同時に、10名以上のボランティアを、12時間以上、この座席に拘束したという製作過程を聞くと、なんとも味わい深い。こういう、馬鹿馬鹿しさこそ、現代美術の一つの本質だなぁと思ってしまう。

メンヤ・ステヴェンソンの作品は、日本に滞在した西洋人から見た日本という視点が面白い。特に、原美術館一階の、特徴的な窓に8枚の写真を貼った作品は、窓から見える景色を借景とする日本的発想が巧いと感心する。

しかし、一番、印象深かったのは、佐藤時啓の写真作品だ。彼は、長時間露光撮影している間に、光源を持って移動することで、光は写真に残るが、素早く移動する本人の姿は残らないという、独特の手法で作品を作っている。本来、瞬間を切り取るはずの写真の中に、時間の経過を封じ込めたような味わいがあるのだが、今回は、さらに、1990年頃に製作された作品の横に、つい最近、同じ場所で撮った写真を並べている。時間の封じ込め方が、さらに重層的になっていて、とても刺激的だ。

展示品数こそ少ないが、中々、楽しめる展覧会だった。さらに、会期中の土日は、原美術館と品川駅の間に、メルセデス・ベンツ V-Classによるシャトル便を運行するというサービスも実施。さすが、ベンツの高級ミニバン。非常に快適な乗り心地だった。


"A Monster Calls"17.6.10

Patrick Nessによる同名の児童文学を、彼自身が脚本を手掛けて映画化した作品を観てきた。邦題は、「怪物はささやく」。監督は、スペイン人 J.A. Bayona。彼の作品は、2007年の"El orfanato(邦題:永遠のこどもたち"が印象深かったが、現実と空想が溶け合ったダークなファンタジー映画にはうってつけの監督で、期待していた。

難病を患う母と暮らす少年。空想癖が強く、学校では虐められ、夜は、難病の母を想い悪夢にうなされる日々を過ごしている。そんな彼のもと、夜ごと、怪物が現れる。怪物は「これから3つの物語を語る。そして4つ目の物語は、おまえが語るのだ」と告げる…。ストーリーの骨子だけ抜き出すと、いかにも児童文学という感じだが、実際には、期待を遙かに超える傑作だった。

怪物によって明かされる少年が抱えていた「真実」は、児童文学で語るには、ハードで重すぎるのではないだろうか?むしろ、ある程度、年齢を重ねた人にこそ響くような気がする。というか、私にとっては、ここ数年で、涙の流出量では最大の作品となった。

怪物が語る物語は、水彩画タッチの画面で描かれるのだが、そのイメージが鮮烈。そして、空想が現実を浸潤する様は、Big Fish的な要素もあると感じた。Sigourney WeaverやFelicity Jonesといった大物も出演しているし、怪物の声とモーションキャプチャーはLiam Neesonだ。これだけの作品なのに、上映館が少ない(都内だと3館だけ)のは、実に勿体無い。



ヨドバシの配送が早いとは分かっていても、まさか、土曜の夜10時に頼んだ物が、日曜の朝8時30分に届くとは、まさに、エクストリームなサービス。というか、週末の朝、ここまで頑張らなくても結構ですよと、アマゾンよりもヨドバシ派の私ですら言いたくなってしまった今日この頃です。