IN/OUT (2021.3.28)

桜が満開です。温暖化の影響か、毎年、時期が早まっているように思います。昔は、入学式の頃に満開になっていたはず。


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「"SAVE LIVE MUSIC RETURNS" 上原ひろみ ~ソロ~」@ブルーノート東京21.3.24

コロナ禍に苦しむライヴ業界のためにと、上原ひろみが昨年の「SAVE LIVE MUSIC」に続き企画した「SAVE LIVE MUSIC RETURNS」。3種のシリーズで18日間・36公演に挑むというものだが、その第一弾、「PIANO QUINTET」が終わった時点で、コロナ禍再燃のため延期となってしまった。

そして、今回、ようやく、残る二つのプログラムが開催されることになった。待ち焦がれていた人が多かったためか、チケット争奪戦は熾烈を極めたが、「SOLO」1公演と「DUO」2公演を予約できた(本当は2公演ずつ狙ったのだが)。しかし、その後で緊急事態宣言が延長されたため、宣言期間内の「DUO」1公演は断念せざるを得なかった(2nd Showの予約を1st Showへ振替を提示されたのだが、平日の1stの参戦は厳しい)。

と、紆余曲折を経て、ようやく参戦することが出来た「SOLO」公演だが、飲食店の時短営業要請は続いており、2nd Showではソフト・ドリンク以外の飲食物の提供が無いという異例の開催となってしまった。

しかし、その分、観客の期待は高まるし、この期間に作った新曲の披露もあったりして、ひろみ嬢の意気込みもいつも以上だったと思う。MCは一回だけで演奏に集中。外連味たっぷりの演奏を堪能。

特に、本編ラストの「The Tom and Jerry Show」の超高速プレイは楽しさ満載。ここぞというところでカラフルな光を一気にほとばしらせた照明さんも、ナイス・アシスト。

アンコールの「What a Wonderful World」で全編終了となるまで、たっぷりとライヴの醍醐味に浸ることがでできた。


「"SAVE LIVE MUSIC RETURNS" 上原ひろみ ~デュオ~ with 熊谷和徳」@ブルーノート東京21.3.27

上原ひろみのシリーズ公演、最後はタップダンサー 熊谷和徳とのデュオ公演である。これまでも何度か共演しているお二人だが、私がライヴ参戦するのはこれが初めてだ。

土曜日の1st Show。種類は少ないが、飲食可能なのは嬉しい。舞台は、向かって左にピアノ。右にタップ台が用意されている。私の席は左右ほぼ真ん中の好位置だ。

開演。お二人が登場するや、すぐに始まったパフォーマンスは、正に、デュオ。決して、ピアノの伴奏でダンサーが踊るというステージでは無い。二人のミュージシャンが奏でる音楽の素晴らしさに圧倒される。なまじ、鍵盤とタップ、両方が良く見える席だっただけに、どちらに目をやるかという幸福な悩みも嬉しい(結局、ひろみ嬢の鍵盤さばきを観る方が多くなったが)。

熊谷和徳のタップは、ひろみ嬢の高速プレイに負けないスピードであるだけでなく、足をスライドさせることでドラムスのブラシ奏法のような音も奏でるなど、多彩な表現力に満ちたパーカッションだ。目の前で足の動きを見つめても、あれだけの音数を叩き出せることが不思議なほどだ。そして、これだけ激しい演奏を繰り広げながら、要所要所でビシッとタイミングが合う姿に、国際的に活躍するお二人の超ハイレベルな実力を思い知る。

途中、MCは全く無く、1曲20分程度のパフォーマンスを3曲。その体力にも驚くばかりだ。特に、スメタナの「モルダウ」を採り上げた演奏の昂揚感は、本当に圧倒的。ソロやトリオが良いのは無論だが、ひろみ嬢の異種格闘技戦(ジャズ・ハープや、弦楽四重奏など)は、楽しさと驚きに満ちあふれていて見逃せないと、改めて実感。

アンコールはChaplinの「Smile」。終盤に繰り広げられるタップと手拍子のコール&レスポンスも楽しく、全編終了。ひたすら凄いライヴ体験だった。


"Nomadland"21.3.27

Frances McDormand主演のロードムービーを観てきた。ノマドというと、日本では、カフェでAir Macを拡げて仕事をしている意識高い系若者というイメージもあるが、ここで描かれるノマドは、放浪生活を送る高齢の労働者たちだ。

彼女が演じる主人公は、リーマンショック後、工場が閉鎖して消え去った企業城下町を後に、亡き夫の思い出などを詰め込んだRV車で季節労働の現場を渡り歩く生活を送っている。その姿を淡々と描くだけの作品だが、尋常では無い緊張感と迫力に満ちた映像だ。

この迫力の多くは、ほとんどの登場人物を、役者で無く、本物の車上生活者=ノマドが演じることで醸し出されている。劇映画とドキュメンタリーの境界が曖昧になる中、Frances McDormandの存在感が際立つ。彼女は、原作のノンフィクションに惚れ込み、自ら製作者に名を連ねている。さらに、極めて米国的なこの題材を、中国出身の若手監督の手に委ねた慧眼も素晴らしい。Chloé Zhao監督は、その期待に見事に応えている。

この映画に、ニューヨークやロサンゼルスのような大都市は出てこない。登場する「ノマド」は、「ホームレス」ではなく「ハウスレス」。車で生活すると言っても、いわゆる「レッドネック」とも違う。誠実な生き方を自らの意思で選んだ誇り高い人達だ(もちろん、そこには、高齢層の貧困という厳しい現実があるが)。そして、その誇りで結ばれたコミュニティも存在する。私が知らなかった米国のリアルが描かれている。

季節労働の現場を渡り歩く主人公だが、最も稼ぎが良いのは、ホリデー・シーズンのAmazonの巨大配送センターというのも、まさにリアル。娯楽性は殆ど無いが、観るべき作品だと思う。



桜の木の下にビニールシートを拡げて、という正統派のお花見をした経験はほとんどありません。というか、あのどんちゃん騒ぎは恥ずべき光景だと思っていたので、コロナ後のニュー・ノーマルで、お花見宴会が過去の遺物になってくれればなぁと思う、今日この頃です。