IN/OUT (2019.9.15)

先週の台風の被害は、予想を遙かに超えるものになってしまいました。個人的には被害は無かったのですが、いつまで経っても「災害への弱さを露呈した」というニュースが無くならないものです。


in最近のIN

神保彰 featuring Will Lee & Otmaro Ruiz @ ビルボードライブ東京19.9.11

日本フュージョン界のトップ・ドラマー 神保彰を中心としたトリオ公演を観に、ビルボードライブ東京に行ってきた。

もちろん、私の目当ては、矢野顕子トリオのベーシスト、Will Leeだ。一方、神保彰は、先月、Mike Sternのブルーノート東京公演で観たばかり。キーボードのOtmaro Ruizは、6月に、Simon Phillipsのブルーノート東京公演で観ている。この辺りの、ジャズ・フュージョン系のミュージシャン達は、色々な順列・組み合わせでライヴを繰り返しているなぁと感心するし、観客としては、様々なパターンで新しい化学反応を楽しめるというのは有り難いことだ。

向かって左にキーボード、右にドラムス、そして、センターがWill Leeという布陣で演奏スタート。今年発売された神保彰の新作アルバム(還暦祝いで2枚リリース)からの曲を中心に、カシオペアを彷彿とさせるロック・テイストのナンバーから、この日が9月11日だったということで、9.11に思いを馳せてしっとりと演奏された「September Moon」まで。どんな曲でも、神保彰のドラムスは、どこまでも端正な印象である。背筋を伸ばし、超高速のソロを見せつけるときでも、雰囲気は涼しげ。一方、Willは、矢野顕子トリオでのプレイと同様、楽しそうではあるが、お茶目さは控え目。エフェクターとSEを駆使した凝ったソロも披露。

本編ラストは、2007年発表のアルバムから「Jimbomba」。Willの「ジンボンバ、ジンボー、ジンボンバー」のかけ声も楽しい。アンコールはThe Beatlesの「Come Togegher」をファンキーなアレンジで。

当たり前だが、三人とも見事なテクニックで、聴き応えのあるライヴだった。昔からのファンと思われる、高齢男性達の「神保!」コールが熱いのも印象的だ。


"Kaala"19.9.14

キネカ大森で開催中のインディアンムービーウイークの一作、"Super Star" Rajniの主演作を観てきた。タイトルはRajniが演じる主人公の名前。邦題は「カーラ 黒い砦の闘い」

間もなく政界入りが確実と言われているRajinikanthだが、俳優としても新作に出演を続けている。だが、中々、タイムリーに日本公開されないのが、ファンとしては悩みである。本作も2018年の作品だが、このようなイベントがなければ、日本での一般公開は無かったかもしれない。有り難いことだ。

ただし、この作品、Rajni映画としては、かなり硬派。ムンバイの巨大スラムを舞台に、スラムの王と呼ばれるタミル人の主人公と、スラムの再開発(と、土地の獲得)に執念を燃やす権力者の敵役が火花を散らすのだが、この敵役のやり口がかなりエグい。権力を笠に着、警察を意のままに動かす一方で、荒くれ者も使い、主人公の周囲の主要登場人物も容赦なく殺していく。対するRajniは、例によって超人的な戦闘力と、素敵なダンス・スキルを披露してくれるが、そういったシーンは多くは無く、エンタメ要素は極力抑えめだ。敵役がヒンドゥー教原理主義者なのに対し、ヒンドゥー教徒だけでなくイスラム教徒や仏教徒も共に暮らすスラムを束ねる主人公が、どの宗教にも敬意を払っているところが重要な背景となっているのも、重い。

スラムの人々が土地を持つ権利を主張するRajniの闘いは、爽快感は少なく、物語が進むにつれ、悲壮感すら漂ってくる。黒ずくめの服に身を包んだRajniと、白の衣装を身に纏った敵役。この配色(インドでは、黒は低カースト、白は高カーストを象徴するのが通例)が、ラストシーンの大胆な色彩設計に繋がり、映画は一気に神話的重厚さを帯びる。

骨太の社会派映画に、様々な暗喩を散りばめ、Rajniの個性もしっかり活かされた見応えのある作品だ。ただ、Rajni初心者にいきなりお薦めするのはハードルが高いかな。



ということで、来月に予定されているRajniの主演作"2.0(Endhiran(ロボット)の続編!)"に向け、インド映画強化月間という感じになっている今日この頃です。