IN/OUT (2019.9.22) |
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2週続けて、月曜が休み。もちろん、有り難くはあるのだけれど、こちらのペースとは関係無しに祝日がやたらと挟まる今の日本のカレンダーには、不満も溜まる今日この頃です。 最近のIN"Ad Astra" (19.9.22)Brad Pittの主演最新作を観てきた。 舞台は、月や火星に有人基地が建造され、月には民間機も飛んでいる近未来(航空会社は、Pan AmではなくVirginだ)。月面では、資源開発を巡って緊張が高まり、危険な地域では略奪行為も横行するという、生々しい未来になっている。 この設定からも分かるとおり、この映画を特徴付けるのは、良心的な科学考証だ。"2001: A Space Odyssey"で描かれたリアルな宇宙の旅を、2019年の最新の知見でアップデイトしようという製作陣の意気込みが伝わってきて好印象だ。 ただし、ストーリーは辛気くさい。地球外生命体の探求に人生を捧げ、16年前に海王星付近で消息を絶った父親を探し、Brad Pittが宇宙を旅する。その旅路は、"2001"よりも、むしろ"Apocalypse Now(地獄の黙示録)"を彷彿とさせ、惹きつけられるのだが、随所に、Brad Pittの内省的な独白が入るのが、正直、鬱陶しい。それに比べると、"2001"ってハードボイルドだよなぁと、今更ながら感心する。 結局、米国人は、親子の葛藤の末に、父を乗り越える息子という物語が好きなのだ。せっかく大風呂敷を拡げ放題の大宇宙という舞台を選んでも、最終的には親子の相克の物語に収斂してしまうというのは、如何なものかと感じてしまう。この物語にしても、("Apocalypse Now"で、Kurtz大佐とWillard大尉が他人だったように)父と息子という要素無しで成立させるストーリー展開も可能だったと思うのだが… Brad Pittだけでなく、Tommy Lee JonesやDonald Sutherlandなど、俳優陣は豪華。そんな中、米軍火星基地の責任者を演じたRuth Neggaの存在感が印象的だった。物語の最後で、彼女のその後を描いても良かったと思う。 と言うわけで、ストーリーには若干の不満はあるし、万人には勧めづらい地味な作品だと思うが、"2001"へのオマージュとリアリティに拘った宇宙の描写を観るだけで、SF好き、宇宙好きの人は大興奮間違い無しの映画だと思う。 "Petta" (19.9.23)キネカ大森で開催中のインディアンムービーウイークの一作、"Super Star" Rajniの主演作を観てきた。タイトルは、今回もRajniが演じる主人公の名前。邦題はそのまま「ペーッタ」。2019年現在、Rajinikanthの最新作だ。 この映画でRajniが扮するのは、大学の寮に、新任の寮長としてやってきた謎の男。寮内で行われていた先輩による新人虐めを豪腕で止めさせ、不味い食堂の飯は、自ら調理の腕をふるって劇的に改善し、男子学生の恋の相談に乗って彼女の母親を説得し(ついでに、彼女の母親に惚れてしまう)、着任早々大活躍。前半は、古き良きRajniの明朗快活コメディ的な要素と、やたらとカッコをつけたポーズに溢れ、原点回帰を思わせる。 しかし、後半、彼がこの大学にやってきた真の理由が分かった後は、一転、ハードなバイオレンスに溢れる復讐譚になる。ここでのRajniは、目的のためには手段を選ばないダークヒーローと化す。 ということで、明暗、二つのRajniが楽しめ、まさに、彼のSuper Starっぷりを堪能できる作品になっている。音楽も、Rajni映画の冒頭のお約束、SUPER STARロゴが表示される時のテーマ曲をアレンジしてあるという確信犯。 68歳のRajniのアクションは、全盛期のキレは無いものの、一時、多用された無理なCG加工は控え、その佇まいのカッコ良さで魅せてくれる。実際の彼は、今ではすっかり禿頭のおじいちゃん顔なのだが、映画の中では、メークもバッチリ。やっぱり、カッコ良い。 監督のKarthik Subbarajは、タミル映画界ではニューウェーブの監督ということだが、こと、本作に関しては、原点回帰のRajniのカッコ良さを過剰なまでに見せつけることに専念してくれたようだ。私としては大満足だが、(主人公が信ずる)正義のためなら、悪人は殺し放題という展開。その行為に全く介入しない警察。そして、ハード過ぎるラストには、眉をひそめる人も多いかもしれない。 そもそも、国民の祝日が多いのって、あまり「先進国」っぽく無いような気がする…。 |