IN/OUT (2014.8.17)

夏休みは先週で終わったものの、この週末はサマソニ参戦ということで、まだ夏休み延長戦という感じもありますが、仕事の方は待ってくれない今日この頃です。


in最近のIN

"Baadshah"14.8.8

「歌って!踊って!インド映画祭」第三弾。N.T.R. Junior主演のインド映画を観てきた。邦題は「バードシャー テルグの皇帝」

前回観た「Dabangg」は、ボリウッド映画=ヒンディー語だったのに対し、この作品は、「Maryada Ramanna」と同じく、テグル語の映画である。その内容は、「Maryada Ramanna」よりも、さらに狂ったような、一般的日本人には理解不能な領域に突入していると思うのだが、その半端ない突き抜け方が、逆に爽快。という映画だった。

テグル語映画界のスーパースター、N.T.R. Juniorが扮するのは、暗黒街の大物にして、実は潜入捜査官。ミラノ、香港、ハイダラバードを股にかけて大活躍。果たして彼は、ハイダラバードを標的にした爆破テロを防げるのか! というのが粗筋。N.T.R. Juniorのダンスのキレは素晴らしく、時空を無視した海外ロケ映像が唐突に挿入されるダンス・シーンは豪華絢爛。また、アクション・シーンでの常軌を逸した強さにも度肝を抜かれる。何せ、彼が一歩足を踏み出しただけで、乗用車が5台、吹っ飛ぶのである(うーん、文字にすると意味不明だ…)。

これだけなら、面白いアクション映画になりそうなものだが、そこは奥深いテグル語映画。主人公とヒロインのラヴ・コメ要素がたっぷり盛り込まれている上に、時系列を入れ替えた分かりづらい構成と、ちょっとした挿話にも、一々、たっぷりと時間を割く編集が組み合わさり、ストーリーを追うことが非常に難しい。結果、観る者の頭は、すっかり混乱してしまうのだ。さらに言えば、この映画には、Christopher Nolan監督の「Inception」のパロディとしての側面もある。もう、何が何だか…

恐らく、インド映画の中でも、テグル語映画やタミル語映画は、良くも悪くも、古き良きインド映画の文法を色濃く残しているのだろう。大衆娯楽の王道が、未だにテレビでは無く、映画館に行くこと、という社会で支持されているのではないだろうか。そこでは、集中してストーリーを追っかけるような見方はしないのだ。アクション映画だからと言ってハードなシーンばかりじゃ疲れてしまう。ラヴがあり、笑いがあって、歌と踊りがある。そして、超人的に強くて濃ゆい顔立ちの主人公が、悪人をバッタバッタと殺しちゃう。休憩を挟んで三時間超。あらゆる要素が詰め込まれた世界を目一杯楽しむ。そういう映画には、やはり突き抜けた面白さがある。それが、より西洋化されているようなヒンディー語映画だと、観る方も、ハリウッド映画と同じような見方をしてしまう。結果、先週観た「Dabangg」のように、格好付けが空回りして、粗の目立つ作品になる恐れが高いのだと思う。

なお、この作品の中には「Dabangg」や、Rajni兄貴の「Endhiran」のパロディ・シーンが出てくる。こういうのを見つけて楽しめるようになったことで、インド映画を見続けて良かったと、実感するのである。


サマーソニック 201414.8.16-17

サマーソニック 2014夏フェス、サマーソニックに出かけてきた。会場は、QVCマリンフィールド&幕張メッセ。

会場に着いて、まずは、TOKIOを観る。ジャニーズ初のサマソニ参加。RAINBOW STAGEは超満員で、私は端っこで、ちょっとだけ観た程度だが、なんだか普通に上手なロック・バンドだ。恐らく、前の方で観ている人達は熱心なTOKIOファンだと思うが、私のように端っこで観ている人の多くは、「TOKIOみたいなアイドルは、ロックじゃない」と思いながら冷やかしで覗きに来て、「あれ、普通に上手じゃん」と思っていたんじゃないだろうか。そんな、妙に生暖かい応援感、みたいなものが漂っていた。

ちょっと休憩を入れて(幕張メッセ内だと、冷房もあるし、飲食にも困らないのが助かる。ただ、飲食代は、思いっきり高めに設定されているが…)、BABYMETALを観てみる。女子アイドルとメタルを融合させたという三人組。テクノ×アイドルで大活躍中のPerfumeのメタル版かな? だったら、面白いかも?と期待していたのだが、私には駄目だった。バックは、実力派のミュージシャンを揃えているようだが、いかんせん、子供の声でメタルって、合わない。へんてこりんな設定(キツネの神がメンバーに憑依しているらしい??)が施されているところは、かつての聖飢魔IIみたいだが、彼らは相当な実力派バンドだった。それに対して、BABYMETALって、スタッフが悪ノリしているだけのような気がする…

続いて、浜田麻里。「麻里ちゃんは、ヘビーメタル。」のキャッチ・フレーズでデビューして、31年。ベテランのヘビメタ・クイーンだ。いざ演奏が始まると、ロック・ヴォーカリストとしての説得力が、BABYMETALとは桁違い。曲調は、ヘビメタと言うより、ハードロック歌謡という感じのものが多いと思うが、安心して楽しめる。私にとっての魂の名曲の一つ「Return to Myself ~ しない、しない、ナツ。 」も、当然演奏してくれて、大満足。

ここで、幕張メッセを出て、マリンフィールドに移動しようとしたら、外は小雨が降っている。Superflyのライヴ中だったが、アリーナでの鑑賞はあきらめ、屋根がある三階スタンド席を確保。彼女の洋楽テイスト溢れるハードな楽曲は、割に好きだ。ただ、雨はどんどん強くなり、最後の曲になったところで土砂降りに。演奏中にも関わらず、アリーナと、屋根に覆われていない下の方のスタンド席の観客が次々と帰り始めてしまう。ちょっと可愛そう。

Superflyが退場すると、雨が上がってしまった。そして、御大 Robert Plantが、THE SENSATIONAL SPACE SHIFTERSを率いて登場。このバンドについては予備知識が無かったのだが、メンバーの一人がアフリカ(ガンビア)の民族楽器を弾いたりして、ちょっとエスニックなフォーク・ロック調が基本となっているようだ。そのため、我々がRobert Plantと聞いて期待するLed Zeppelinのサウンドとは、かなり違う。Zeppelinの曲も、何曲か演ってくれるのだが、昔通りの演奏をすることを頑なに拒んでいるようなアレンジで、やや肩透かし感が…。それでも、Robert Plantの歌声自体は、相変わらず素晴らしいし、演奏の方も、Led Zeppelinとは全く違うバンドだと割り切れば、なかなかレベルが高いと思う。最後に"Whole Lotta Love"を、これは、かなりZeppelinを意識した演奏で聞かせてくれて、それなりに楽しめた。

再び幕張メッセ内に戻り、CIBO MATTO。1990年代、主にニューヨークで活躍していた日本人女性二人のユニットだ。2001年から活動を休止していたが、東日本大震災の被災地支援チャリティー・ライヴを機に、また二人で活動を始めたらしい。昔は、日本人であることを強調して海外で目立とうとするキワモノ的な印象を持っていたのだが、中々どうして、こうやってちゃんとライヴを観てみると、実にセンスの良い音楽ユニットだ。誤解していてごめんなさい。

今度は、GARDEN STAGEに移動。マリンフィールドから川を隔てたキャンプ場の隣にある原っぱに作られた舞台。にわか雨が通り過ぎたせいで、すっかり涼しくなっている。演奏しているのは LITTLE DRAGON。スウェーデンの四人組。うち、ヴォーカルの女性は日本人。バンドの音は、いわゆるエレクトロ系だと思うが、彼女(ユキミ・ナガノ)のヴォーカルとパントマイム的な要素も感じられる振り付けが際立っている。今まで知らなかったが、1996年結成。2007年にアルバム・デビューということなので、かなりのキャリアの持ち主のようだ。アルバムを買おう! とまでは思わなかったが、ライヴがあれば、また観てみたいと思えるパフォーマンスだった。

そして、最後は矢野顕子!詳細は「やのコレ」で。実に熱いステージ、大満足。帰りの京葉線は、ラッシュ・アワー以上の混雑ぶりだったが、それも気にならないほど、ご満悦なのである。

サマーソニック 2014 今年は二日通し券を取得していたが、二日目は、片付けなければならないことが有り、夕方からの参戦。MARINE STAGEに直行し、三階スタンド席へ。まずは、Bon JoviのギタリストRichie Samboraのソロ。今回は、気鋭の女性ギタリスト、ORIANTHIをフィーチャーしてのステージということだが、何のことはない、この二人、付きあっているらしい。そういう不純な目で二人の共演を見ていると、Richie Samboraが女たらしというよりも、ORIANTHIに良いように利用されているおじさん、という気がしてくる…。"Livin' On A Prayer"など、Bon Joviの楽曲は盛り上がるが、全体としてはあまり惹きつけられなかった。

続いて、Avril Lavigne。和太鼓奏者をステージに登場させるなど、さすが日本びいきの彼女だ。客の煽り方やスクリーンの使い方も上手く、エンターテインメントとして良く出来ているステージだと思う。が、それ以上に驚いたのは、彼女の、特に女子からの人気ぶりだ。アリーナ前方を埋め尽くしたファンが、曲に合わせて一斉に手を振るところは、スタンド席から見ると壮観だ。

そして、最後が、お待ちかね、QUEEN + Adam Lambert。Freddie Mercuryが亡くなり、John Deaconが引退した今でも、Brian MayとRoger Taylorの二人はQueen名義で活躍中。Freddieに代わるヴォーカルには、なんと、American Idol(米国の、「スター誕生」のような視聴者参加のオーディション番組)で発掘されたAdam Lambert。果たして、どんな人だろうか、興味津々で開演を待つ。

フェスでは、同じステージに次々と違うミュージシャンが出演するのだから、普通はステージ上に楽器を運び込んで演奏するだけだ。しかし、さすが大物。きっちり作り込んだ、ホール・コンサートそのままの立派なセットを用意してきた。そして演奏が始まる。Adam Lambertの歌の上手さ、声量、ステージアクション、そして、ハードゲイっぽさ満載のファッションと容貌。いずれも、Freddieを彷彿とさせる。さすが、Brian MayとRoger Taylorが惚れ込んだ逸材だ。もちろん、一回り小ぶり、という思いは拭えないが、Adamは弱冠32歳。このまま行くと、大化けするかもしれない。

ただし、悲しいかな、QUEENの正式メンバーでは無く、あくまでも"+ Adam Lambert"扱い。Brian Mayがソロでアコースティックな曲を演っているとき、スクリーンにはFreddie Mercuryの姿が映し出され、彼の声が流れる。それを観てしまうと、やはり、Freddieの唯一無二さを実感。さらに、本編ラストの"Bohemian Rhapsody"では、Adamが歌っているところに、すっとFreddieの映像と声がオーバーラップし、そのまま中盤のコーラス・パートは過去のオリジナルQUEENの映像を使い、そして、最後は再びAdamの歌とBrianとRodgerの生演奏になるという演出。Adamは悔しくなかったのかな? ただ、観ていて、違和感は無く、非常に効果的で盛り上がる演出だったと思う。

アンコールは、"We will Rock You"と"We Are the Champions"の超鉄板曲。他にも、ヒット曲目白押しのステージで、私が大好きな"Under Pressure"も、David BowieのパートをRoger Taylorがこなして演奏してくれたし、非常に満足度の高いステージだった。ラスト、幕張の夜空に上がる花火を観て、今年の夏イベント、終了である。



幕張メッセとマリンフィールドが、道路を一本挟んでいるだけなのに、ぐるっと遠回りしないとアクセスできないとか、最寄り駅の海浜幕張駅まで結構距離があるとか、東京駅から海浜幕張に向かうための京葉線の乗り換えが異常に遠いとか、サマソニの欠点の一つは、この移動距離の多さですね。疲れた。