IN/OUT (2014.7.13)

ゴーヤ 近所の、いわゆる「緑のカーテン」のゴーヤに花が咲き始めました。

毎年恒例ではあるのですが、このカーテン、ビルとビルの間の、窓が無く、日当たりも良くない所にあるので、省エネ効果があるのか、はなはだ疑問です。もしかしたら、ビルで働く人達の食用なのかしらん?


in最近のIN

"La danza de la realidad"14.7.12

Alejandro Jodorowsky監督が23年ぶりに撮った新作映画を観てきた。邦題は「リアリティのダンス」。

先日観た"Jodorowsky's Dune"での、御年84歳のJodorowskyの現在でも変わらぬカッコ良さに痺れて観に行った新作だが、正直、70年代の「カルト映画のグル」が、80歳を過ぎてから撮った映画だと、頭でっかちで時代錯誤の、眠くなる作品ではないかという不安もあった。しかし、実際には、私の予想を遙かに超える傑作だった。私が言うのもおこがましいが、Jodorowsky、本物の天才だ。

映画は、1920年代、軍事政権下のチリを舞台に、ロシア系ユダヤ人の少年とその家族を描く、Jodorowskyの自伝的な作品だ。彼自身も、少年時代の彼を見つめ、導く存在として画面に登場する。父親は、厳格で権威主義的な共産主義者。鉱山事故で不具となった者達を叩きのめす一方で、隔離された感染症患者に水を与えに行くような人道主義的行動も取る矛盾に満ちた人物。一方、母親は信心深く、時に、ちょっとした奇跡も起こしてしまうような宗教的な人物。彼女の台詞だけが全てオペラ調の歌唱になっているという、一見、突拍子も無い演出が、彼女の個性を巧みに際立たせていて、効果的だ。

スクリーンに登場するサーカスの芸人や不具者達。観ているうちに不確かになってくる現実と非現実の境目。エネルギーと過剰な色彩に満ちたシュールで美しい画面。そして、父親が辿る、地獄巡りのような放浪劇。あの、"El topo"にも似た要素が溢れているが、そこに、自らの家族と生い立ちを振り返る現在のJodorowskyの優しく大らかな眼差しが加わり、この作品を、深味のある感動作にしている。

本人が画面に登場しているので、事実に即した自伝かと思いきや、ここで描かれていることの多くは、Jodorowskyの空想の出来事だという話も聞く。しかし、そんなことは、どうでも良い。天才が、リアリティと踊るダンスの妙を存分に堪能できる130分。今のところ、今年観た映画のNo.1だ。


「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより14.7.13

東京国立近代美術館 東京国立美術館で開催中の展覧会を観てきた。サブタイトルにあるとおり、世界でも有数の近現代美術コレクションを抱えるヤゲオ財団の所蔵品の一部を貸し出してもらって展示するものだ。

ヤゲオ財団は、台湾の大手電子部品メーカー、ヤゲオ・コーポレーションのCEO、Pierre Tie Min Chen氏が設立したものだが、このChen氏、"living with art"のコンセプトの元、コレクションをしまい込むのでは無く、台北・香港・東京にそれぞれ構える住居や別荘、さらにはオフィスの中に作品を展示しているという。また、世界的な美術館への寄託も積極的に行っているという。一代で、世界的に認められたコレクションを築いたということは、美術品に対する眼力と、それを購入できる財力、どちらも半端ないということだろう。単なる成金では無いのである。

さすがに、集められた作品は、どれも見応えがある。Andy WarholAndreas Gurskyなどの西洋の巨匠の作品だけで無く、中国人作家の作品も数多く揃えられているのが特徴だろう。中でも、杉本博司の「海景」・「最後の晩餐」と、Mark RothkoとGerhard Richterの油彩画が並ぶ展示室は、実に迫力があって、強烈なインパクトだった。

作品のレベルの高さもさることながら、この美術展の一番の特徴は、その展示方法と解説文だ。会場に入ったところに掲示されている案内文は、美術館を寿司屋に、作品をネタに、キュレーターを寿司職人に例え、美術品の価値=ネタの美味しさとは別の尺度で測られる「時価」について語るという型破りな文章。そして、各展示室に掲げられている掲示も、その展示室に飾られている作品の美術的価値について語る文章が上段に、そして下段では、経済的観点、あるいは興行的観点から作品を語るという他に類を見ないもの。さらに、Chen氏の住居にそれらの作品が飾られている写真も掲載されてる(本当に、"living with art"なのだ。バスルームやリビングに、とんでもない価値の美術品が並んでいる!)。

さらに、会場の最後には「コレクター・チャレンジ」というゲームまで用意されている。そこには、展示されている作品の中から20点のミニチュアと家の模型が置いてある。予算は50億円()。20点の作品から5点を選び、Chen氏のように、家の中に飾る。すると、その選んだ作品の「市場価格」の合計が表示され、いかに50億円に近づけるか、という趣向。そのヒントとして「展覧会を別の角度から楽しんでいただくためのガイド」という小冊子が置いてあり(いきなり「今からあなたに50億円をお渡しします」という見出し!)、そこには、市場価格の参考になるような、各作家の最近の落札情報が記されている。ここまで、堂々と、美術品の時価に触れた展覧会って、前代未聞なんじゃないか?

しかも、この、かなり冒険的な企画が、どちらかと言えば地味な印象で、竹橋という冴えないロケーション(← 失礼)の、東京国立近代美術館で行われているというのが、さらに面白い。因みに、この後「所蔵作品展」も見て回ったのだが、こちらは、やはり地味で真面目な印象だった。戦時中に作られた国策アニメで、噂には聞いていた「動物となり組」を視聴することが出来たのは、望外の幸運だったが。



この辺りは、台風の風雨は肩透かし気味でしたが、蒸し暑さが一気に増した今日この頃です。