IN/OUT (2013.7.14)

約二ヶ月前に予約した新デジタル・カメラ。発売から二週間経っても、一向に届く気配が無い。ちょっと怒りモードで確認したら、8月発売予定のアクセサリも一緒に予約していて、「まとめて発送」にしていたという自分の不手際に気がついてしまいました。やれやれ。


in最近のIN

「アンドレアス・グルスキー展」13.7.14

ドイツの写真家、Andreas Gurskyの作品展を観に、国立新美術館に行ってきた。

現在、その作品が最も高額で取引される写真家とも言われるGursky(この展覧会にも出品されている「シカゴ商品取引所 III」が、先月、サザビーズで3億2300万円で落札!)。その評判に違わない、迫力のある作品が並んでいる。スーパーカミオカンデの内部、平壌の少女たちによるマスゲーム、東京証券取引所、膨大な商品が並ぶアメリカの99セント・ショップなどの被写体が、整然とした構図と美しい色彩で写されている。その構成力に圧倒されるだけでなく、近くで凝視すると、画面の隅々まで精緻に描写された情報量の多さにも驚かされる。単純な写真ではなく、時間をかけて何度も撮影した画像をデジタル処理し、再構築しているのだ。

また、バンコクのチャオプラヤ川の水面を写した作品。一見、抽象絵画のようだが、よく見ると、川に浮かぶゴミや油膜が、その色彩を構成している。そのアイディアと表現力に感嘆。

大小様々な作品が並ぶ館内は、Gursky自ら構成したもの。年代順やシリーズ別といった単純な配列ではなく、展示室全体で一つの作品となるよう工夫が凝らされているところも見応えがある。Wim Wendersが被写体になっているといった裏話が聞ける石丸幹二による音声ガイドも必聴。グッズ売り場には、画面のタッチ操作で作品の細部を自由に拡大して見ることができる「さわって、グルスキー」が置いてあり、これも楽しい。

デジタル・テクノロジーによって、絵画に接近した写真とも言えそうな展示の数々、たっぷりと堪能した。


「貴婦人と一角獣展」13.7.14

グルスキー展で圧倒された後、館内のカフェで昼食。続いて、同じく国立新美術観で開催中の「貴婦人と一角獣展」の展示室へ。

フランス国立クリュニー中世美術館に収蔵されているタピスリー「貴婦人と一角獣」。1500年頃に制作された中世ヨーロッパ美術の最高傑作が、奇跡の初来日。という謳い文句だが、「奇跡」という惹句に偽りなし。6枚連作のタピスリーが揃って日本で観られる機会など、二度とないと思う。東京での展示終了の一日前にようやく観に行ったのだが、本当に行ってよかった。

展示室に入ると、出し惜しみすることなく、6枚のタピスリーが、どどーんと並んでいる。その圧倒的な存在感に、呆然。グルスキー展とは異質の、歴史の重みが詰まったオーラには、ただただ驚嘆するばかりだ。

3m四方ほどの大きさのタピスリーが6枚。全長 22m。それぞれ、触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚の人間の五感を象徴し、最後の一枚は「我が唯一の望み」。全体を俯瞰して、そのパワーに圧倒された後は、一枚ずつ鑑賞しつつ、タピスリーに込められた意味を謎解きするのも興味深い(その助けとして、やはりオーディオガイドは必聴)。

その後の展示室では、タピスリーの細部や時代背景が解説される。そういった情報を仕入れた後で、もう一度、6枚が並ぶ展示室に入ることができるという構成は、実に巧みだ。昨年の、「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝で、リヒテンシュタイン侯爵の「夏の離宮」を再現して度肝を抜いてくれた国立新美術館、今回も良い仕事っぷりである。

この後、この展覧会は大阪に巡回するそうだ。もう一度、観るチャンスがあるかな。


「ミン・ウォン展 私のなかの私」13.7.14

二つの展覧会をたっぷりと堪能した後、所用で銀座へ。と、銀座資生堂ビルに「ミン・ウォン」の文字を発見! シンガポール出身のアーティスト、Ming Wong。2011年、原美術館で観た「"Ming Wong: LIFE OF IMITATION"」の印象が蘇る。時間に余裕があったので、迷わず、資生堂ギャラリーに突入。

"LIFE OF IMITATION"ではシンガポールの「国民映画」を再現したMing Wong。今回は、日本に滞在し、日本映画を再構築。歌舞伎チックな「時代劇」、小津映画っぽい「現代劇」、ヱヴァンゲリヲンと攻殻機動隊をミックしたような実写の「アニメ」の三本。外人が見た日本映画の印象を、外人が片言の日本語で演じる。それを銀座のギャラリーで観るという感覚が面白い。

資生堂ギャラリーは、これまで全くノー・マークのアート・スペースだったが、こんなマニアックな展示を無料で行うとは侮れない。ただ、銀座を行き交う人が、Ming Wongの作品に興味を持つのか? というのは、ちょっと心配である。実際、この日も、私以外の客はほとんどおらず…。シンガポール文化愛好家は見逃すことなかれ。



まあ、カメラの入手が遅れた分、PCの自作に充てる時間が出来たとポジティブに考えることにしよう。と思っていたら、ついつい、購入予定になかったCherryの赤軸キーボード(Filcoではなく、割安の韓国Leopold社製)をポチってしまう今日この頃です。