IN/OUT (2026.9.27)

台風に右往左往させられたシルバーウィーク。そして、その後も、雨基調の天候が続いています。


in最近のIN

「『怖い』本」@ 東洋文庫ミュージアム (26.9.22)

東洋文庫ミュージアム東洋文庫ミュージアムで開催中の、「怖い」という言葉から連想される様々な事をテーマにした展覧会を観てきた。

駒込駅から徒歩10分ほど。六義園の近くにある、アジア全域の歴史と文化=東洋学を専門とするこのミュージアムを訪れるのは初めてだったが、予想の10倍ぐらい立派な施設だ。

東洋文庫ミュージアム「往生要集」から始まる展示は、当然ながら書物ばかりだが、「今昔物語集」、「雨月物語」、「山海経」、「聊斎志異」などなど、知識としては知っていても、実物を見るのは初めての物ばかり。眼福である。

東洋文庫ミュージアム中でも、私が一番観たかったのが、「九相図巻」。野外に置かれた遺体が朽ちていくさまを、九段階に分けて描いた仏教絵画。仏僧の色欲を絶つ修行に使われそうだが、夢野久作の「ドグラマグラ」の愛読者には堪らないのだ!

展示されていたのは、「第七 白骨連相」と「第八 骨散相」だけだったが、さすがのおどろおどろしさ。9点全てを観たかったところだが、これだけでも満足度高し(期間によって、違う相が展示されていたようだ。サイトの解説文『展示の噉食相は、遺体の腐敗した臭いを嗅ぎつけた野生の獣が、遺体を食い荒らす場面を描いています』が怖い)。

このほか、日本の怪談や妖怪、アジアの怪談、さらには、悪人についてや、刑罰の様子など、善良な子どもが見たらトラウマになりそうな(でも、多くの子どもはワクワクしそうな)、禍々しい書物の数々。

東洋文庫ミュージアム意外なところでは、江戸時代に、今の茨城県に漂流したUFO「うつろ舟の図」も!

東洋文庫ミュージアムまた、天災や疾病も「怖いもの」として取り上げられている。地震だったり、病を起こす身中の虫だったり。

という訳で、隅から隅まで、興味深いものしかない、満足度マックスの展覧会だった。


「トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま~魔術、メディア、アート~」@ TOKYO NODE (26.9.22)

TOKYO NODE映像、彫刻、音、光、言葉を組み合わせた不可思議な没入型インスタレーションで知られるTony Oursler(1957年-)の、日本初となる大規模個展を観に、虎ノ門ヒルズ TOKYO NODEに行ってきた。

TOKYO NODE入ってすぐの展示は「スペキュラー」。吊された球体に眼球の動画が投影された、不穏な空間。さすが、立体物に映像を投影する表現スタイルのパイオニアと言われるだけのことはある。

TOKYO NODEその後も、立体物に人の顔を投影した展示が続くが、正直、最初の展示のインパクトが強すぎて、それ以降は、同工異曲の感が拭えない。

TOKYO NODETOKYO NODEとは言え、「ロック2、4、6」のような大規模なインスタレーションの迫力は流石。

ただ、世界初公開となるDavid Bowieとの共作「空(くう)(東京版)」は、期待が大きかっただけに、ちょっとがっかり。Bowieの楽曲を使って欲しかった…

TOKYO NODE最後の展示室。「カリカチュア」と「キメラ」。

どの展示も、空間としては面白い。が、ちょっと私の好みからはズレていたかなぁ。

TOKYO NODEなお、彼は、超常現象やUMAにも関心があったそうで(マジシャンだった祖父から引き継いだみたいだ)、彼がコレクションしたネッシーやビッグフットの写真、さらには、UFOとコンタクティーを題材にした作品も展示されていた。昭和の男子中学生マインドに近いものを感じ、この点は好印象なのだ。


「梅井美咲 × 北村蕗 / °pbdb 1st EP『qpep°1』Release Live」@ ビルボードライブ横浜 (26.9.22)

ビルボードライブ横浜作曲、演奏、ヴォーカル、トラックメイクまでを手掛ける若手ミュージシャン、梅井美咲と北村蕗。それぞれ、ソロでも活動している2人は、ユニット「°pbdb」も組んでいる。そんな2人の公演を観に、ビルボードライブ横浜に行ってきた。私の関心は、矢野顕子の最新アルバム「生きものたちへ」に参加した北村蕗。

ステージ向かって左にグランド・ピアノ。傍らにはアコースティック・ギターも置いてある。右には、キーボードとノートPC。エレキ・ギターも置いてある。私の席は、キーボードのRolandとKORGのロゴがハッキリ視認できる位置。

2人が登場。まずは、梅井美咲がグランド・ピアノ、北村蕗がキーボードで演奏を開始。ピアノと電子音、そして、スキャットの組み合わせが、どことなく矢野顕子味もあるような。特に、梅井美咲のピアノ演奏は、(音楽性は全然違うが)音のチョイスに、矢野顕子っぽさを感じる箇所がある。なるほど、北村蕗と矢野顕子は相性が良い訳だ、と思ったり。

演奏は、°pbdbの曲だけでなく、梅井美咲、北村蕗、それぞれのソロ曲も採り上げているようだ。曲によって、2人はピアノとキーボードを入れ替わり(楽器は共用しているが、PCは、それぞれ専用のものが2台)、時にはピアノを連弾し、さらに、北村蕗はフルート演奏も披露。シンセ・ビート強めの曲もあるが、予想していたほど打ち込み系の比重は高くなく、むしろ、アコースティックな響きの方が目立つ。

両者とも演奏技量が高く、浮遊感のあるサウンドは、中々、癖になる。ライヴを観るのは初めての2人だったが、どちらも、実に才気溢れるミュージシャンだ。今後も、要チェックだな。

なお、金髪に染めて活き活きと歌う北村蕗は、「生きものたちへ」のメイキング・ヴィデオとは別人のよう。やはり、大御所に囲まれて、緊張していたのだな。


「”Tokyo Pop Chronicle” ~The Music Continues 都市型ポップスの革新者たち~」@ SGCホール有明 (26.9.26)

SGCホール有明東京発ポップミュージックの系譜を辿り、その魅力を現代に蘇らせる。というコンセプトのイベントを観に、SGCホール有明に行ってきた。

SGCホール有明は、初めて訪れたが、3,767席(アリーナをスタンディングにすると、最大 5,306人収容)の大規模ホールにしては、とても音響が良い。ただ、私は、お台場という場所自体が、あまり好きじゃ無い…(ゆりかもめの東京ビッグサイト駅とりんかい線の国際展示場駅が最寄りで、アクセスも悪いわけじゃ無いのだが)

出演者は、
メイン・アクトに、ブレッド&バター、杉真理、伊藤銀次、尾崎亜美、清水ミチコ、鈴木茂、南佳孝、金延幸子
ゲスト・プレイヤーとして、林立夫、小原礼
ハウス・バンドとして、高野寛、高田漣、伊賀航、坂田学、ハタヤテツヤ、ツヤトモヒコ、吉永亮
トーク・ゲストに、松本隆、佐野史郎
と、超豪華。もちろん私は、清水ミチコが一番のお目当てである。

松任谷ユーミソと佐野史郎による注意事項のアナウンスの後、開演。まずは、ブレッド&バター。正直、冒頭のMCで、そのお爺ちゃんぶりに心配になるが、歌い始めると、まだまだ声は出ている。私は、ちゃんと聴いていなかったミュージシャンだが、1970年代の洗練された湘南お洒落ポップスという雰囲気で、「あの頃のまま」、「ピンクシャドウ」、「Summer Blue」の3曲。

続いて、杉真理。こちらも、1970~80年代当時の私は、熱心なリスナーとは言えないのだが、チョコレートのCMソングだった「バカンスはいつも雨」は、聴いた瞬間、懐かしい! さらに、「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」収録の「Nobody」と「A面で恋をして(伊藤銀次を大滝詠一に、高野寛を佐野元春に見立てたトライアングルで演奏)」。このアルバムは、当時、結構、聴き込んだなぁ。

尾崎亜美。小原礼と2人だけで「オリビアを聞きながら 」。演奏が始まった瞬間から圧倒される。楽曲の良さ、パフォーマンスの出来、そして、何よりも2人が放つオーラ。前の2組には申し訳ないが、レベルが違う。2人で、もう1曲、デビュー曲の「瞑想」。バンドを呼び込んで(ドラムスは林立夫)「マイピュアレディ」。私にとって、ド真ん中の選曲。素晴らしい。

清水ミチコは、高田漣と清水イチロウ君と共に、ユーミンが他の人(アグネス・チャン、薬師丸ひろ子、松田聖子)に提供した歌を、1番は提供された人、2番はユーミソとして歌うネタ。そして、アコースティクYMOメドレー(「Rydeen」、「中国女 (La Femme Chinoise)」、「Tong Poo(矢野顕子版)」)と、鉄板の音楽ネタ。なお、YMOメドレーでのユキヒロの代役は、いつものメトロノームでは無く、”充血君(シンバルを叩くお猿のおもちゃ)”。見事なパフォーマンス。それにしても、高田漣。演奏技量は当然として、本当に良い人柄だというのが伝わってくるな。

ここで、松本隆、鈴木茂、金延幸子、南佳孝、佐野史郎によるトーク・コーナー。冒頭、佐野史郎が、”はっぴいえんどは、シティポップでは無く、ロックだ!”と力説していたのには、深く共感。また、”大滝詠一と付きあっていた”との爆弾発言を軽く放り込んでくる金延幸子、恐るべし。若干、進行がグダグダになりかけるところ、(意外にも)鈴木茂が、趣旨に沿った話題を持ち出して、軌道修正を図る。”矢野誠のストリングス・アレンジこそが、その後のシティ・ポップの進化を語る上で欠かせないファクターだ”という彼の指摘に、深く首肯する。

16時開始で21時終了予定という長丁場のイベントだが、この時点で18時30分。ここから後半戦だが、所用が有り、途中退出。鈴木茂の「砂の女」、伊藤銀次による「Down Town」、南佳孝の”ウォンチュー!”などなど、聴きたかったところだが、残念。

それでも、尾崎亜美のパフォーマンスと、ユルくも深いトークショーで、それなりに元は取れたかな。


「ANDREA MOTIS Guitar Trio "Intimate"」@ ブルーノート東京 (26.9.27)

ブルーノート東京スペイン・バルセロナ出身のシンガー&トランぺッター、Andrea Motisのライヴを観に、ブルーノート東京に行ってきた。
一昨年の、ギターとパーカッションを加えたトリオ公演、
昨年の、ギターとのデュオ公演、
と来て、今年は、ギターを2人(Jurandir dã Silva & Josep Traver)を従えてのトリオ編成である。

ステージ中央に一人掛けのソファ。その両脇に椅子。向かって左の椅子のところにはアコースティック・ギター。右にはエレキ・ギターが置いてある。

先に、ギタリスト 2人が登場し、演奏開始。ある程度、たっぷり演奏したところで、歌いながらAndrea Motis登場。オリジナル曲の他、Amy Winehouseの「You Sent Me Flying」のカヴァー(今年2月に発売されたAndrea Motisのアルバム「Intimate」の1曲目) 、フランスのシャンソン、キューバのシンガー・ソングライターの曲など。お洒落ギターと、癖のないヴォーカル。そこに、トランペットとタンバリンがアクセントを付ける。心地良い時間が流れる。

本編ラストで、ゲストとして井上銘が登場。彼女とは、過去、何度か共演していて、今回のブルーノート東京公演の前にも、姉妹店のBlue Note Placeで”井上銘 & 魚返明未 featuring ANDREA MOTIS”でパフォーマンスをしているのだ。ギタリスト 3人をバックに、彼女の来日公演での定番「真夜中のドア」。間奏での井上銘のギター・ソロが冴える。

アンコール。1曲目は3人で。そして、2曲目で、再度、井上銘が登場。間奏で、たっぷりとギター・ソロを披露したところから、3人でギターを弾き倒す展開になだれ込み、そこにAndreaのトランペットも加わり、何とも多幸感に溢れるステージに。大満足の中、全編終了。ただただ、心地良いライヴだった。



夏が始まる前は、これまで以上の酷暑が長く続くことに身構えていたのに、長雨というのは意外な展開です。まぁ、”いつもと同じ夏”というのは幻想で、季節というのは、毎年、何かしらの異常があるのが通常なのだろうと思う、今日この頃です。