IN/OUT (2026.10.4)

近所の大通り沿いに、オレンジ色の幟を持った集団が立っていて、あの政党絡みの人達だったら嫌だなぁ…と身構えたのですが、近づいてみると、大学名が書かれていました。どうやら大学駅伝関係のイベントがあったみたいで、彼ら以外にも、それぞれのスクール・カラーの幟の下に多くの人達が集まっていました。

伝統の色だから、簡単には変えられないのでしょうが、あの政党の関係者と誤解されるようになった某大学、お気の毒…


in最近のIN

「Disclosure Day」 (26.10.2)

丸の内ピカデリーSteven Spielberg監督の新作を観てきた。

何らかの理由で宇宙人に選ばれた少数の人が、地球人の代表としてコンタクトする。というプロットは、1977年の「Close Encounters of the Third Kind(未知との遭遇)」と良く似ている。つまり、約50年間、Spielbergの宇宙人観って、全く進歩していないように見える。しかも、今作では、”Area 51”に関わる陰謀論などを、”真実”扱いしていて、私としては、ツッコミどころがあり過ぎる馬鹿設定だと言わざるを得ない。これが、20世紀中に公開されたのならまだしも、2026年に公開される映画だとは…。色々な認識がアップデートされていないのが、イタい。そもそも、今の時代、「真実を開示!」と言って衝撃映像を流したところで、AIによるフェイク画像と思われて終わりだと思う…。

まぁ、SpielbergはSF系統の作品も多く手掛けているが、実際にはファンタジー寄りで、彼のSFマインドって、「木曜スペシャルの矢追純一のUFO特番」に熱中した昭和の子どもレベルだと思っている。

とは言え、2時間25分間、全く飽きさせない緩急自在の演出は、やはり見事。「未知との遭遇」が、当時、誰も見た事が無かったような圧倒的ヴィジュアルで押し切ったのに対し、今作は、手練れの演出が光る。アクション・シーンの迫力も素晴らしい。結局、良くも悪くも隅々までSteven Spielbergらしさが詰まった作品なのだ。 ”大切なのは共感力。だから、周囲の声をちゃんと聴こう” という、シンプルでイノセントなメッセージも、Spielberg映画の中だと、クサくならない。

この映画が、トンチキ陰謀論に堕さなかったのは、ジャンル映画を熟知したSpielbergの演出のキレだけでなく、主演のEmily Bluntの貢献が大きい。この手の映画では、常に圧巻の存在感を示す彼女。今作でも、難しい役柄を説得力を持って演じきっている。彼女の演技の素晴らしさを愛でるだけでも、十二分に元が取れる映画だ。


「愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた」 (26.10.3)

T-Joyプリンス品川忌野清志郎のドキュメンタリー映画を観てきた。

幅広い時代の豊富なライヴ映像と、三浦友和、竹中直人、三宅伸治、泉谷しげる、梅津和時、角田光代、金平茂紀、百世のインタビュー映像で構成されている。音楽的には、文句なく楽しく観ることができた。初期のフォーク時代の映像がたっぷりあったのも貴重だ。

ただ、正直、ドキュメンタリー映画としては構成力が弱いような気がするし、説明不足の感もある。既存の清志郎ファンに向けた作品という印象で、若い人に向けたガイドとしては不親切かな。そして、何より、インタビューに応えている人の人選には不満が多い。もっと、絶対に外せない人がいるだろうと思う。

また、清志郎の逝去後、2025年に開催されたトリビュート・イベント「SWEET LOVER SOULS」の映像が長目に使われていたのが気になった。『語り継ぐ』のと同時に、『歌い継ぐ』ことにも重点を置いた、というコンセプトは理解出来るが、ちょっと、尺を取りすぎかな。あなたが歌っても…と感じてしまうカヴァーを流すより、1分でも多く、清志郎本人のパフォーマンスを観たいのだ。

と言いつつ、このトリビュート・バンドでバンド・マスターを務めるRei嬢のカッコよさをたっぷり見られたのは嬉しい。また、梅津和時がリハーサルで見せた清志郎の楽曲への深い理解と愛情にグッと来るし、何より、アイナ・ジ・エンドの「スローバラード」の歌唱と、そこに絡むReiと梅津和時のプレイが、突出して素晴らしすぎて、ここは落涙ポイントだった。

あと、消しゴムハンコ作家として活動している娘の百世さんが、お父さんそっくりで、その作品にも共通のセンスがうかがえるのが微笑ましい。

人間像の掘り下げみたいなところには期待せず観る分には、充分に楽しめる作品だ。


「マリー・アントワネット・スタイル」@ 横浜美術館 (26.10.3)

横浜美術館歴史上もっともファッショナブルな王妃、Marie-Antoinette(1755–1793)の「スタイル」が、いかに時代を超えて人びとを魅了してきたかを紹介する展覧会を観に、横浜美術館に行ってきた。英国のV&A(Victoria and Albert Museum)が企画した世界巡回展である。

横浜美術館日本でも高い知名度を誇る王妃だけに、入場まで70分の待機列。

横浜美術館場内に入っても、人気の展示の前には分厚い人の壁がある。その壁の向こうには、18世紀のフランスのドレスの数々。そして、実際に彼女が身に付けていた宝飾品なども多数。中には、1785年の「首飾り事件」の元凶の一部、「サザーランド・ダイヤモンド」の実物も!(写真は、ちょっとピントがズレた…)

横浜美術館日本製の香箪笥などが展示されていたのも印象的。彼女は、日本の漆工芸品も好きだったそうだ。

横浜美術館悪趣味なところでは、「フランス革命で用いられたギロチンの刃 」。そして、「斬首後に型取りしたとされるマリー・アントワネットの蠟製胸像の写真」なども 横浜美術館

横浜美術館終盤には、王妃がつくりあげた「スタイル」にインスピレーションを得た現代のクリエイターたちの作品も並ぶ。Sofia Coppolaの2006年の監督作「Marie Antoinette」などの映画で実際に使用されたドレスや、

横浜美術館Jeremy Scott、Vivienne Westwood、John Gallianoらによるモードも展示されている。

質量共にたっぷりの展示。中条あやみと豊永利行によるオーディオガイドのレベルも高い。これなら、混雑するのも仕方が無いな。

横浜美術館なお、世界巡回展ではあるが、日本での開催となれば、フォトスポットとして、池田理代子の絵も欠かせないのである。こうやって見ると、デフォルメされていると思っていた少女漫画の絵柄よりも、本物の衣装の方が遥かに華美だったな…。


「Mr. Nobody Against Putin」 (26.10.4)

シアターイメージフォーラムウクライナ侵攻後、ロシアで行われている愛国教育の全貌を描いたドキュメンタリー映画を観てきた。デンマーク・チェコの合作映画。邦題は「プーチンの愛国教室」

撮影者 Pavel Talankinは、人口1万人ほどのロシアの田舎町の学校教師。校内のイベントや、その撮影を担当し、生徒達からも慕われている。初めは、ほのぼのとした学校風景を捉えていたカメラは、2022年2月のウクライナ侵攻開始を機に、学校に持ち込まれた愛国教育の様子を撮影するようになる。国家が作成したカリキュラムの実行の証拠として提出されるものなので、堂々と撮影は出来たのだ。しかし、愛国心を強化する授業だけに留まらず、傭兵を教室に入れての兵器の学習など、軍事色が濃くなっていく学校現場。その事に疑問を持つ教師もいる一方で、信念を持って子供達に洗脳まがいの教育を行う者もいる。戦地に送られる教え子も出てくる。

政府に批判的な態度に目を付けられたPavel Talankinは、結局、撮影素材と共に国外に脱出し、デンマークを拠点に活動するドキュメンタリー作家 David Borensteinと共同で、この作品を製作。2026年のアカデミー賞で最優秀ドキュメンタリーに選ばれる一方、当然、ロシアでは上映禁止になっている。

何とも恐ろしく、嫌な気分になるドキュメンタリーだが、何よりも、最近の世の中を見ていると、日本でもこのような事が意外に簡単に起こり得るのだろう、という実感があることが、怖い。子供達が「母親を愛するのと同じように、国家は無条件に愛すべき存在だ」と教え込まれる様子に恐怖を感じるが、そのような事を言う人は日本にも少なくない。そして、ちょっとした風向きで、彼らが権力を握り、その思想を無条件に受け容れるべきものとして強要してくることは、絵空事とは言い切れない。

映画としての出来には、私には乗り切れなかったところもあるのだが、映像自体は強烈。今、起きていること、そして、今後、起こり得ることを知るため、観ておくべき作品だと思う。



それにしても、関東での大学駅伝の人気は大したものだと感じます。学生時代を関西で過ごした身としては、いまだに馴染めませんが(大学スポーツと言えば、アメリカンフットボール派)…