|
コンビニのおにぎりの棚の前で、インバウンド観光客に「お勧めはどれか?」と尋ねられ、英語の瞬発力の衰えに、我ながら情けなくなる今日この頃です。
最近のIN
濱口竜介監督の新作を観てきた。因みに、フランス語でのタイトルは「急に」だけを取り出した"Soudain"(英語の”Suddenly”と同じ意味)
同名の原作、多発性ガンに冒されている哲学者 宮野真生子と、文化人類学者 磯野真穂による往復書簡は既読だったが、果たして、これをどのように商業映画にするのか全く想像が出来ず、期待半分、不安半分で映画館に向かった。
凄い映画だった。全く隙が無い3時間16分、多層的な思索と感情が紡がれる。ドラマチックな盛り上がりが多い訳では無いのに、最初から最後まで求心力を失わない画面。濱口竜介監督、恐るべし。
ただし、原作とは、登場人物像も、舞台も、全く違う。そもそも、往復書簡の原作に対し、映画では、2人が夜通し歩きながら、会話し続ける。時間を掛けてやり取りされる手紙と、リアル・タイムでレスポンスし合う会話では、雰囲気が全然変わってくるし、強い政治的メッセージも含む会話の内容は映画独自のものだ。
原作の宮野真生子に相当するのが、岡本多緒が演じる、フランスで哲学を学んだ演出家。磯野真穂に相当するのが、Virginie Efiraが演じる、日本で文化人類学を学んだ介護施設の施設長。偶然の出会いから、魂を共鳴させるように交流を深める2人。カンヌで最優秀女優賞を共同受賞したのも納得の、素晴らしい演技だ。そして、2人の交流を通じて、”演劇が持つ可能性"と"介護施設のあり方"という、本来、混じり合うことが無いような2つの領域が重なる瞬間は、まさに、映画ならではのマジック。
俳優陣ではもう1人。御年80歳の長塚京三が、パリ大学の留学経験を活かした見事な演技だ。なお、「Astrid et Raphaëlle(アストリッドとラファエル 文書係の事件録)」の警視正でお馴染み、Jean-Louis Garçonも出演していた(大きな役では無いが、観た瞬間に、あっ!と思う)。
最初は、原作とあまりに違っていることに戸惑った(と言うか、立腹すらした)のだが、見終わってみると、原作が秘めている核となるものが、しっかり尊重されていたなと思う。改めて、濱口竜介監督、恐るべし。
スウェーデン人と日本人の混成メンバーによるフュージョン・バンド、SLAKのデビュー・ライヴを観に、BLUES ALLEY JAPANに行ってきた。
メンバーは、それぞれが多方面で活躍する実力派揃い。
・白井アキト(Key)
・Henrik Linder(B)
・Björn Arkö(T.sax)
・川口千里(Ds)
(バンド名は、各自の名字の頭文字を並べたものだ)
ステージ上、向かって左にキーボード、真ん中奥にベース、センターにサックス、右にドラムスの布陣。私の席は、川口千里の真横。ドラムスを叩く手元だけで無く、足下も見える良席だ。
床に置かれたセットリストを視認。
・Beefy Jerk
・Wind-Up Bird
・Sea of Clouds
・From the North Country
・September Wind
・Stating The Obvious(アルバム未収録曲)
~休憩~
・Soft Departure
・On the Right Path
・Almost There
・Moon Spiral
・Sleeping Giant
と、デビュー・アルバム収録の全10曲プラス未収録曲1曲(Björn曰く「次にレコーディングするかも」)。
ミディアム・テンポの大人のフュージョンという感じの曲が多いが、手練れ揃いのメンバーなので、当然の如く、演奏が進むに連れて白熱してくる。しかし、暑苦しくならないのが、北欧&東アジアの特質か。曲によっては、Björn Arköはサックスの他にNuRadを使い、白井アキトはトークボックスを使用。Henrik Linderは6弦ベースに思いっきりエフェクターを効かせた音を出したりと、皆、器用。もちろん、随所に、川口千里の超高速ドラムスが入る。
なお、メインのMCは、日本での活動も多く、日本語が堪能なBjörn Arkö。一方、Henrik Linderは、自分が喋りたいことをスマホに打ち込んで日本語に訳したものを読み上げようとするのだが、Google翻訳の精度と、発音の難しさに大苦戦しているのが微笑ましい。
本編ラストの「Sleeping Giant」では、演奏終盤に「Happy Birthday to You」のメロディーが挿入されて、今日が誕生日の白井アキトを祝い、そのままアンコールに突入。Henrikが弟のギタリストErikと組んだ”Linder Bros”の「We Make Party When We See Us」。Henrik Linderは4弦ベースに持ち替えて、スラップ大会。これで全編終了。
川口千里バンドの熱さとは、また趣が違う、4人の個性が上手く噛み合ったパフォーマンスを堪能である。
James Gunnがリブートした「Superman」の続編を観てきた。
Supergirlを演じるのは、Milly Alcock。Superman役のDavid Corenswetは続投。もちろん、犬ちゃん=Krypto the Superdogも登場する。
生真面目な従兄弟と違い、自分探しの真っ只中で、お酒に溺れることもあるSupergirl。愛犬のKryptoに毒を盛った悪漢から解毒剤を奪取すべく、宇宙へ。
正直、”OUT”と迷う、微妙な感想だ。Supergirlの活躍も、同じ悪漢を親の敵として追う少女の純真さも、Kryptoのやんちゃさも、Supermanの良い人っぷりも、全て想定の範囲内。まったく驚きが無い展開に、逆に驚いてしまう…。肝心のアクション・シーンも、ワチャワチャしているばかりで、キメの見せ場に乏しいような……。
ただ、風呂敷を広げすぎない設定(地球の危機を救うみたいなスケールの話じゃ無い)と、109分というコンパクトな上映時間に収めた事は、やたらと話を盛りがちなアメコミ映画の中では好感が持てる。良くも悪くも、所詮はコミックスの実写化なんだから、これぐらい、お気楽な映画で、丁度良いかな。
大作の貫禄があった「Superman」と、軽快な「Supergirl」が出揃った”DC Universe”。James Gunnの次の一手が楽しみだ。
高橋幸宏がキュレーターとなって2008年に始めた野外音楽フェス「WORLD HAPPINESS」が、彼の没後3年目にして、9年ぶりの復活。私は、2016年と、2017年に参戦したが、ユキヒロの気遣いが感じられる、居心地の良いフェスだった記憶がある。今回は、屋内での開催というのが、9年分、歳をとった私にはありがたい(しかも、当日は小雨が降ったり止んだりの天気)。
席は、2階右側の最前列。ステージからは遠い位置だが、結構、観やすい。なお、ステージは、左 1/3のところで2つに分けられ、メイン・アクトは右手のCenter Stage。若手などはLeft Stageを使う。これによって、片方で演奏している間に、もう一方で次のセッティングが出来るという、ワーハピ伝統のスタイル。ただし、今回のスタッフは、あまり手際が良いとは言えず、毎回、セット替えにかなり手間取っていた。また、演奏者のイヤモニにちゃんと音が返ってなかった場面もあった。結果、スケジュールは押しに押し、当初のアナウンスでは、終演は20時30分頃となっていたが、実際に終わったのは、21時30分。12時30分開始だったので、9時間の長丁場。さすがに疲労困憊なので、以下の記録は要点のみ
東京スカパラダイスオーケストラ
トップバッターで、しっかり盛り上げてくれる。YMOの「SIMOON」、高橋幸宏の「I-KASU!」も演奏。
Open Reel Ensemble
Left Stageの一番手。オープンリール式のテープレコーダーを改造して楽器として演奏するという異色のバンド。テープの片方はテープレコーダーのリールにセットし、もう片方は竿に付けて操作したり、その場で録音した音を早回しや逆回しで再生するなど、自由自在。レコード盤を使ったスクラッチよりも、さらに応用範囲が広い手法だと感心。高橋幸宏の音声を使ったところには、泣けた。これは、凄い物を観た!
moonriders
超ベテランになった彼らに、いきなり「Who's gonna die first?」と歌われてしまうと、異様な迫力があるな。
Rol3ert
2025年から活動するシンガーソングライター。「ロバート」と読む。洋楽風のサウンドで悪くはなかったが、印象は薄いか。
スチャダラパー
大ベテランの安心感。ド鉄板曲「今夜はブギー・バック」を持っているのも強いなぁ。
セブンス・ベガ
2023年結成の4ピース・バンド。ぱっと見、良くあるガールズ・バンドなのだが、キャッチーな曲の中、5弦ベースの低音がゴリゴリ響くのが印象的。これは"買い"かも。
TOWA TEI(DJ)
高橋幸宏やYMO、自身のDeee-Liteの曲などを素材に、テクニックを駆使したクリエイティヴなDJ。流石です。
清水ミチコ
高田漣 & 実弟 イチロウ氏を従えての「ユーミン提供曲メドレー」と「アコースティクYMOメドレー(「Rydeen」~「中国女 (La Femme Chinoise)」~「Tong Poo」)」。そして、「ホルムズ海峡浮遊景色」と「風に吹かれて」。大会場でもちゃんと受けていて、私も嬉しい。巨大体育館に響くメトロノーム、そして最強素人 イチロウ氏。凄いな。
MAJOR FORCE(高木完 & K.U.D.O.)
高木完と K.U.D.O.(工藤昌之)のユニット。クラブ・ミュージックの大ベテランの味。
電気グルーヴ
大物感も漂う、テクノ・サウンド。バックの映像も含め、完成度は高いと思うが、私は、この手のダンサブルなテクノは、ちょっと苦手。
SP YT session
その名の通り、高橋幸宏に縁のある皆さんによるセッション。メンバーは
・⾼野寛
・⾼桑圭(Curly Giraffe)
・堀江博久
・⾼⽥漣
・ゴンドウトモヒコ
・⽩根賢⼀
pupaの曲などを演奏した後、スペシャル・ゲストとしてSteve Jansenが登場!高橋幸宏とのデュエット曲「STAY CLOSE」のヴォーカルを披露した後は、⽩根賢⼀とのツイン・ドラム!。また、スカパラホーンズも1曲、ゲスト参加。その後には、鈴木慶一も登場。最後、THE BEATNIKSの「ちょっとツラインダ」の演奏にはグッと来た。
LAUSBUB
2020年に結成された岩井莉子と髙橋芽以によるテクノポップ・バンド。私の世代だと、”サブカル少女”と呼ばれたような女の子が、令和だと、こうなります。という感じか。頑張ってもらいたい。
細野晴臣
「PLEOCENE」や「AIWOIWAIAOU」など、昔の曲も、さらっと大人のアレンジで披露。この力の抜けた雰囲気は、もはや仙人の域か。思い出話を語って「ユキヒロって、やさしい」。そして、高野寛を呼び込んでスケッチ・ショウの「Supereme Secret」。いちいち、泣ける(この辺りで、30分以上押していたので、多分、曲のカットとかされたのじゃないかと思われるのが、残念。)。
Ginger Root(Solo Set)
日本のポップ・カルチャーからの影響を公言するCameron Lewによるソロ・ユニット。確かに、日本人に聞きやすいポップスになっていると思う。流暢な日本語から垣間見える人柄の良さも好印象。
Cornelius
小山田圭吾によるソロ・ユニット。屋内開催の利点をフル活用。スクリーンとレーザー光線の使い方が巧みで、有機体の体内を思わせる国立代々木競技場第一体育館の館内が、ハイパーな空間に。演奏は、世界の伝承音楽から西洋のポップスの歴史までを俯瞰するような壮大な前半から、YMOの「CUE」のカヴァーが入り、後半は「Turn Turn」、「環境と心理」などのヴォーカル曲。とにかく、カッコ良かった!
ということで、不在なのに、しっかりとユキヒロの存在感が伝わってくるフェスだった。出演者からも、観客からも、愛されているなぁ。来年も、開催よろしくである。
まぁ、自分でコンビニおにぎりを買うことは滅多に無いので、日本人に日本語で聞かれても、色々斬新なメニューも増えている品揃えから、適切な”お勧め”を即座に回答する自信は全く無いのですが。 |