IN/OUT (2017.8.6) |
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一週間の夏休みでした。関西に帰省している間、現地は連日の猛暑日。一方、東京では最高気温が30度を下回る日が続いていたようで、休み前に、ある程度予想していたし、別に避暑に行ったわけでは無いのですが、ここまで温度差があると、何か損した気に… 最近のIN「大ラジカセ展」@西武渋谷店 (17.8.3)ラジカセの展覧会を観に、西武渋谷店の特設会場に出かけてきた。 ラジカセ=ラジオとカセットテープレコーダーが合体した音響家電というのは、もしかしたら、今の若い世代には知らない人も多いのかもしれないが、かつては、誰もが持っている音響機器だった。そして、その時代の若者文化の確かな一部を担っていた機械だったのだ(エアチェックという言葉に胸が熱くなる人は多いだろう。さらに、日本ではタケノコ族、ニューヨークではHIP HOPの誕生に、ラジカセの存在は欠かせなかったはずだ)。デジタル・オーディオの進化で、すっかり過去の遺物となったラジカセだが、最近、再び注目を集めているという。アナログレコードやカセットテープなどが、今の若い世代にも、その独特の手触りと温もりのある音質が(身も蓋も無い言い方をすれば、原音に忠実なハイファイではなく、適度に音質が劣化しているので耳が疲れないということだと思う)アピールしているらしいのだ。そんな中、家電蒐集家 松崎順一氏のコレクションから、ヴィンテージ・ラジカセを100台展示し、さらに、その周辺文化も紹介するという展覧会が開催されているのである。 実は、前日、NHKニュースで(シブ5時でも、ニュース7でも、ニュースウォッチ9でも、ニュースチェック11でも)採り上げられていて、私もしっかり視聴し、興味を持った訳だが、実際の展示は、割に小規模で、ややガッカリ感もあった(恐らく、NHKの製作陣のツボに、世代的にハマったのだろう)。何より、私の愛機だったSONYのXYZ(今ではカーナビのブランドらしいが、元は、ラジカセ。ZILBA'Pの後継機だったのだ。と、書いているだけで、盛り上がってしまうな…)が展示されていなかったのが残念。まあ、もう一台の思い入れマシン、ナショナルのRX-F3が展示されていたから良しとするか。 ということで、ラジカセ 100台の展示は、やや期待外れだったし、カセットに因んだアート(みうらじゅん、安齋肇、スージー甘金、テリージョンスン、永井博など、良い意味で偏った人選)も、イマイチ面白味に欠けるかな。 しかし、平日午後でも、会場には、前日のNHK効果もあってか、続々と入場者があり、皆、思い出話を語っている様子に、この展覧会は資料的価値や文化的価値よりも、「追体験」の一点で評価すべきイベントだよなぁと思う。 そして、私にとって一番印象的だったのは、昭和の男子の部屋を再現したコーナー。ラジカセよりも、マイルド・セブンのデザインのスチール製ゴミ箱、そして、マジソンバッグとの再会に感涙。分かる人には分かるアイテムなのだ。 「サンシャワー 東南アジアの現代美術展」@国立新美術館×森美術館 (17.8.4)ASEAN地域における1980年代以降の現代美術を紹介する大規模な展覧会を観てきた。出展作家は、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオスから、86名/組。約190点に上る膨大な作品を9つのセクションに分け、最初の5つは国立新美術館で、後半の4つを森美術館で展示するという、まさに大規模展覧会。全部観るには、それなりの時間と体力を要するが、2館共通券が1,800円(単館だと1,000円)という観覧料は、極めてコスト・パフォーマンスが高いと思う。 まずは、国立新美術館へ。南国のご陽気な美術が並んでいるのかなという先入観は、会場に入るやいなや、打ち崩される。ここに並ぶのは、多民族・多宗教の複雑な社会、長く続いた植民地支配、独立後の内乱など、東南アジア諸国が抱える様々な問題を正面から告発するような、硬派な作品ばかりだ。いわゆる先進国のように、アート・シーンが商業と結びついて確立している訳では無いと思われる国が多いせいだろうか、アートが持つ社会正義的な力をストレートに信じたような(ある意味、青臭く、商業ルートには乗らないような)作品も多い。 そんな中、シンガポールのブー・ジュンフェンによるインスタレーション「ハッピー・フリー」が異彩を放っている。もし、シンガポールがマレーシアから分離独立してなかったら、という架空の設定で、統一マレーシア成立50周年記念ソングが、シンガポール風KTV(カラオケ・ボックス)に流れているという作品。50周年の祝賀ムードに溢れた能天気なメロディーラインが耳につき、カラオケ・ビデオには、もちろん、歌詞が出るので、マイクを持って歌うことも可能(実際、ノリのよい学生さんらしき若者が歌っていた)。細部まで作り込まれた空間が面白くも、奥が深い。 国立新美術館の地下のカフェテリアで昼食後、森美術館へ。こちらも、メッセージ色は強いが、もう少し、ポップな雰囲気の作品も多いように感じる。ただ、とにかくボリュームたっぷりの展覧会なので、最後の方に展示されている、フィリピンのフェリックス・バコロールによる巨大インスタレーション、1,200個の色鮮やかな風鈴が並ぶ「荒れそうな空模様」に辿り着く頃には、すっかり満腹感を覚えてしまう。一日で見て回る場合、インターバルは長目に取った方が良いかもしれない。 いずれにしても、ASEAN 10ヶ国の熱気が伝わってくる展覧会だ。さらに、美術展の枠を超え、国立新美術館や六本木ヒルズ内のカフェや、グランドハイアット東京(六本木)のレストランで、東南アジア料理が楽しめるコラボレーション・メニューが用意されていたりして、東南アジア祭 in 六本木という雰囲気もある。この地域が好きな人には必見の展覧会だろう。 "WORLD HAPPINESS 2017" (17.8.6)高橋幸宏が中心となって開催されている夏フェス、"WOLRD HAPINESS"に行ってきた。10年目となる今年は、会場を葛西臨海公園 汐風の広場に移しての開催である(従来の開催地、夢の島公園陸上競技場がオリンピックに向けた整備で使用不可となったため)。さらに、今回は、ユキヒロに加え、いとうせいこうもキュレーターに迎えており、いかにものメンバーが揃った布陣なのである。 天気予報では、気温は上がるが曇りがちということだったが、実際は、朝から陽射しが強い。開場の1時間半前、10時には到着し、列に並んだのだが、既に暑い。場内には、11時30分過ぎに入り、昨年の経験を踏まえ、サブ・ステージ側ブロックの中央寄り、少し後ろの場所をキープ(ワーハピでは、入場時に小さなレジャーシートが配られる。それを敷くことで場所を確保するシステム)。ここなら、メインとサブの両方のステージを、同じぐらいの感覚で観ることが出来るという算段だ。このフェスは、左右に配置されたメインとサブのステージを交互に使うことで、セット・チェンジで演奏が途切れることが無いようになっているので、場所取りは重要なのだ。会場のセッティング自体は、夢の島公園陸上競技場時代と同じだが、葛西臨海公園は、一日中、日陰は皆無。ステージに向かって上る方向で傾斜がついているところなどは、ちょっと辛い感じもある。 12時30分。まずは、岡崎体育の関西のイチビリっぽいステージで開幕。続いて、高橋幸宏といとうせいこうによる開会宣言。8月6日ということで、広島に思いを馳せ、一分間の黙祷。 続くステージ、コトリンゴは、ドラム、ウッドベース、チェロ、サックスの4人をバックにピアノの弾き語り。ロック・フェスっぽくは無いし、彼女の声質も、私には柔らかすぎると感じられるが、アレンジが素晴らしい。そして、「悲しくてやりきれない」を披露する際、ゲストで、のん=能年玲奈登場。デュエットとなる。映画「この世界の片隅に」で涙した人には、堪らない瞬間だ。 その後の、高橋幸宏が惚れ込んだというエレクトロニカの宮内優里と、ブルースロックっぽいNulbarichの二組は、私にはあまりピンと来ず。明朗快活なシンガーソングライター 関取花は、その声量の豊かさが好印象。 この辺りから、私のお目当てのミュージシャンが続く。まずは、いとうせいこう with DUBFORCE guest スチャダラパー、高木完。ダブ・ミュージックは、私が、自腹を切って音源を買うタイプの音楽ではないが、この人達は、ライヴで観ると、やっぱり格好良いなと思う。しかも、ドラムスが屋敷豪太! モデルのメイリン・ヤンのソロ・プロジェクト ZOMBIE-CHANGは、最近のミュージシャンの中で気になっている一人だ。モデルとしても人気らしいのだが、作詞・作曲も自分でこなし、一人でシンセ類を操りながら歌うという才女ぶり。その音楽は、80年代ニューウェイブが好きだった人には、刺さると思う。というか、私には刺さった。 昨年は、サブ・ステージで演奏していて、好印象を持ったGLIM SPANKY。今年は、メイン・ステージでの演奏。松尾レミの、いかにも姐御ロックっぽい歌唱と、暑苦しいまでのロック・サウンド。そこに加わる、どこかゴシック調の雰囲気。昨年から、着実に進化しているようで、さらに好きになった。 みうらじゅんが、ミュージシャンとして自作の曲を、ボブ・ディラン張りに熱唱するという企画の後は、くるり。彼らもまた、お目当てミュージシャンの一組だ。最近の活動を熱心に追っかけている訳では無いのだが、やはり、くるりの楽曲はクオリティが高いと実感。そして、サポート・メンバーとしてドラムスを叩くのは、Cliff Almond! 私にとっては、今でも「うちの子」=矢野顕子の元祖さとがえる・トリオのドラマーだ。やっぱり巧い。というか、今日の出演陣の中で、こと、ドラムのテクニックで言えば、図抜けていたと思う。久しぶりに彼のプレイを見られたのは、今日の、個人的ハイライトの一つだ。 竹中直人は、ドラム、ギター、さらに高木完をバックに、歌唱。歌手としての才能も確かな人だ。そして、会場が一番熱くなったのは、電気グルーヴ。彼らの音楽も、私が自腹を切って音源を購入するタイプでは無いのだが、私が出かける音楽フェスで遭遇する確率が非常に高く、ライヴは何度も観ている。さすが、ベテランの盛り上げっぷりだ。 TOWA TEIのDJプレイ(ワーハピ名物とも言えるYMOのカバーだが、今回は、ここで「中国女」が使われていた)があり、夕方、ようやく涼しくなった所で、ラスト、高橋幸宏の登場。沖山優司、白根賢一、鈴木慶一、高野寛、堀江博久、矢口博康、砂原良徳、ゴンドウトモヒコという錚々たるバックを従え、1980年台の曲("Murder by the Music"が聴けて、嬉しい)から、最近の作品、5月のバカ田大学祭ライブで披露された「シェー・シェー・シェー・DA・DA・DA・Yeah・Yeah・Yeah・Ya・Ya・Ya」まで。ユキヒロのカッコ良さ全開で楽しい。そして、サプライズ・ゲストで、のん=能年玲奈再登場。後ろに緑の尻尾を付けたドラゴン風の衣装(歌詞に出てくるティラノサウルスのイメージかな?)。この豪華メンバーをバックに歌うは「タイムマシンにお願い」! 当然、ドラムスは高橋幸宏!! ユキヒロのドラムでこの曲を、また聴けるとは!!! のんの歌唱も、臆すること無くぶっ飛んでいて良かった。これもまた、今日の、個人的ハイライトの一つだ、 一旦、ステージから皆がはけ、セッティングを修正した後、舞台に登場したのは、METAFIVE。すなわち、高橋幸宏、砂原良徳、ゴンドウトモヒコ、TOWA TEI、小山田圭吾、LEO今井。さらに、ユキヒロと共にキュレーターを務めたいとうせいこうが登場し、ラストの一曲(この一曲だけのために、小山田圭吾とLEO今井は登場したことになる)、いとうせいこう & TINNIE PUNXの「東京ブロンクス」。ラップも、普段、私が聴くタイプの音楽ではないが、この曲は好きだし、何より、バックが豪華すぎる。しっかり堪能して、19時前、全編終了。 昨年と違い、一日中晴天に恵まれ、熱中症予防に気を遣っての参戦となったが、やはり、フェスは楽しい。特に、高橋幸宏がキュレーターということで、大人の雰囲気が強いワールドハピネスは、また来年も参戦したいものだ。 そして、東京に戻ってきたら、また暑いという皮肉なタイミング。WOLRD HAPINES 2017観戦後は、「日焼けは軽いやけど」ということを実感しています。 |