IN/OUT (2016.8.28)

新しくゲットしたWindows Phoneは、画面サイズが5.7インチ。これまで、大画面のスマートフォンに対して、携帯性を損なうとして否定的だったのですが、いざ、使ってみると、眼にも指先にも優しい。もう、逆戻りは出来ません。


in最近のIN

"11 minutes"16.8.27

ポーランドの映画監督 Jerzy Skolimowski(御年 78歳)の作品を観てきた。

嫉妬深い夫と女優の妻、女優をオーディションのためにホテルに呼びだす下心ありありの映画監督、強盗を決行しようとする若者、曰くありげなホットドッグ屋、そして女性に連れられた犬など、様々な視点で、ある日の夕方5時から5時11分の出来事が描写される。同じ出来事が、別の視点で語り直されたりしつつ、やがて、様々な人々とエピソードは、一点に集約していく。

11分間という短い時間では、それぞれの登場人物のバックグランドは明らかにならず、そこで起きているドラマが何を意味しているのか情報は不足している。それに加え、スマホの動画録画や、監視カメラの映像などを多用した不安定な画面。不気味さを煽る音楽。低空を飛ぶ大型旅客機と、空に浮かぶ「何か」。観客の不安をかき立てる演出がたっぷりと加えられ、一体何が起きているのか、そして、何が起きるのか、分からないまま映画は進み、最後に、唖然とするようなラストを迎える。

アガサ・クリスティの「ゼロ時間へ」を想起させる構造だ。事件が物語の出発点になるのでは無く、事件が発生する瞬間に向かって、様々な人々の行動が収斂していくのだ。そして、その事件というのが、こちらの意表を突くものなのがミソ。散々、謎めいた描写をちりばめておいて、ここに着地させるか! 老獪な監督が、してやったりと笑っている姿が浮かぶ。

一寸先は闇の、現代社会の不安を切り取った作品だと言えるだろう。感情移入できる登場人物がほとんどいないことや、事件の後味が決して良くないことなど、万人に勧められる作品では無いと思うが、その悪夢的雰囲気は、妙に引っかかる。


"WORLD HAPPINESS 2016"16.8.28

WORLD HAPINESS 2016 高橋幸宏がキュレーターを務める野外フェスを観てきた。今年で9回目になるイベントだが、私は初参戦。そして、今年が夢の島公園陸上競技場が会場として使える最後の年(東京オリンピックに向けた整備のため)。キュレーターの個性を反映して、Yellow Magic Orchestra周辺のミュージシャンの出演が多く、他の夏フェスとは一味違う、どちらかと言えば野外っぽくない出演者も集まるという印象があるイベントだ。もちろん、私のお目当ては、矢野顕子。

他の大型夏フェスと違い、会場は一箇所。そこにステージが二つ設置される構成。片方で演奏している間に、もう片方のセッティングができるので、パフォーマンスが途切れることが無い。また、入場者には一人用のレジャーシートが渡され、これを敷いた場所が、その人の席という仕組みになっている。開演前に、シートを敷いてしまえば、あとは一日中、移動すること無く全てのパフォーマンスを観ることが出来る訳だ。さらに、個々人の「領土」が決まっているので、人気のアーティストの出演時、前列に人が殺到するという修羅場も起こらない。「大人のサマ・フェス」と呼ばれることのあるワールドハピネスだが、その理由が分かる気がする。因みに、さすが日本のイベント。皆、自分のシートの上に荷物を置きっ放しにしたままで、飲食物を買いに行ったり、トイレに立ったりしている。これ、海外では考えられない光景だろう。いずれにせよ、文字通り、ハピネスに満ちた空間だ。

天候は、ギリギリ、雨が降っていない曇り。時折、涼しい風も吹き、夏の野外イベントとは思えない過ごしやすさなのもありがたい。という訳で、比較的、前方・中央の辺りにシートを敷いて、オープニング・アクトの柴田聡子から、AFTER SCHOOL HANGOUT(林立夫&沼澤尚 with 鈴木茂, 森俊之, 沖山優司 featuring Leyona and 高橋幸宏、スペシャル・ゲスト:矢野顕子)、WEAVER、矢野顕子(ゲスト:Seiho)、Ykiki Beat、スチャダラパー、ポカスカジャン、ムーンライダーズ、GLIM SPANKY、東京スカパラダイスオーケストラ、水曜日のカンパネラ、電気グルーヴ、大森靖子、そして、トリのMETAFIVEの全ステージを堪能。残念ながら、大森靖子のあたりから小雨が降り始め、最後のMETAFIVEの頃には、しっかりとした本降りになり、レインコートを羽織っての観戦となったが、この程度で済んでラッキーだと言うべきだろう。むしろ、一日中、炎天下だった方が、ダメージは大きかったはずだ。

矢野さんは、このフェスの雰囲気に合わせてか、全体にリラックス・ムードで楽しそう(2014年のサマソニでの攻めっぷりとは好対照)。詳細は、やのコレに記載。

今回、気になったミュージシャンは、初めて観た、WEAVERとGLIM SPANKY。一度、ちゃんと聴いてみようと思った。また、久しぶりに観たポカスカジャン。今日も、「森のメリー・アン」や「Let It Beかくれんぼ」などの爆笑音楽ネタで楽しませていただいた。

そして、このフェスで最も働くのが、高橋幸宏会長である。AFTER SCHOOL HANGOUTと、ムーンライダーズのステージに出演し、さらに、自身が率いる新バンド METAFIVEでトリも務める。METAFIVEは、私はこれまでチェックしていなかったのだが、高橋幸宏の他に、小山田圭吾、砂原"まりん"良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井と、錚々たるメンバーが揃った「新人バンド」だ。いざ、目の当たりにしてみると、その音は、さすがのカッコ良さ。髙橋幸宏らしいメロディも感じさせながら、サウンドはしっかり新しい。雨も気にならない、熱いステージだ。METAFIVEの新曲群もカッコ良いのだが、一曲、ユキヒロのヴォーカルで懐かしの「Radio Junk」を聴けたのも感涙ものだった。YMO ワールドツアーを思い出す。

最後にアンコール。ゲスト・ドラマーにSteve Jansenが参加。元JAPANのメンバーで、昔から髙橋幸宏と親交が深い。たまたま、この時期、訪日していると分かったので、出演を誘ったとのことだ。彼が参加して披露された本日最後の曲は、意表を突いて「君に、胸キュン」。Steve Jansenが出るからには、YMOの曲だろうと予想はしていたが…。高橋幸宏作曲の名曲が数ある中、この路線で来ましたか。「まりんが、どうしても演りたいと言うから。まあ、夏の終わりだし。これが最後かもしれないけどね」とのことだったが。しかしまあ、名曲は名曲だ。Steve Jansenのドラムも全く衰えていないし、この曲に高橋幸宏のヴォーカルは、本当にベスト・マッチ。夏を締めくくるのにふさわしいエンディングだったな。



ただ、大きな液晶画面を顔に付けるのは嫌なので、ブルートゥース・ヘッドセットも必携に。こうして、荷物はかさばるようになっていく…