先週の三連休、前半は夏風邪でダウン。色々と予定が狂ってしまいました。
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マッチングアプリで知り合った男性との初デートの最中、スマホのドロップメッセージで脅迫される女性を描いたスリラー映画を観てきた。監督は、"Happy Death Day"、"Happy Death Day 2U"、"Freaky"のChristopher Landon。
デートの場所は、高層階にある超高級レストラン。そこで主人公は、自宅に残してきた家族を人質にとられ、デート相手の男性の殺害を強要される。助けを呼ぼうにも、彼女の行動は徹底的に先回りされている。という粗筋だと、すごい完全犯罪を描いているようだが、実際には、ツッコミどころ満載の設定だ。そもそも、犯人側が、なんでここまで面倒くさいことを行ったのか? 他の手段を考えた方が手っ取り早いのでは?? という疑問が拭いきれない。脅迫されているため次々と挙動不審になる女性に対し、デート相手もレストランのスタッフも寛容過ぎるのもリアリティを欠く。
とは言え、半径15m以内のレストランの中にドロップメッセージを送りつけている犯人がいるはず。ということで生じるサスペンスは中々のもの。周到に仕組まれた罠に絡め取られ、いよいよ追い詰められた主人公が放つ、乾坤一擲の逆転劇も爽快。その後も続く物語は、ちょっと蛇足かなと思ったが、終わってみれば、爽やかな余韻を残すために必要なパートだったと納得。
あと、主人公の妹や、バーテンダーの女性といった、良い人キャラの脇役達が、本当に良い人なのが嬉しい(巻き添えを喰う可哀想な登場人物には、前もって嫌われキャラを印象づけている。だから、殺されて良いという訳じゃないが…)
Christopher Landonにしては、コメディ要素は無いが、重くなりすぎない語り口は流石。ワン・アイディアを活かしきった95分間。軽く観る分には、申し分の無い作品だ。
プラネタリウムでホラー映像を上映するという企画を観に、プラネタリアTOKYOに行ってきた。仕掛け人は、お化け屋敷プロデューサー 五味弘文。
真夜中に、廃墟をパトロールする新人警官の一人称視点で語られる40分間のショート・ストーリー。最近よくある、モキュメンタリー風の怖い話で、ホラー映画として考えると、正直、弱い。
が、警官が持つ懐中電灯に照らし出される廃墟内の一人称映像を、プラネタリウムの全天周映像と立体音響システムで体感すると、その没入感は映画館の比では無い。あちこちに仕掛けられたジャンプスケア(びっくり演出)も、極めて効果的だ。結果、かなり怖い。
ということで、ホラー映画としてでは無く、現代的なお化け屋敷として楽しむ分には、納涼気分の味わえる好企画だ。
なお、プラネタリウムを意識したのか、ギリシャ神話「オルフェウスの物語」をテーマにしているという触れ込みだが、これは、全くのこじつけ。そんな小細工しなくても、堂々と「お化け屋敷」を前面に出して宣伝すれば良い企画だと思う。
Roger Watersが2022年7月~2023年12月に行った”This Is Not a Drill Tour”の、チェコ・プラハ公演( 2023年5月)を収録した映像作品を観てきた。CD+BDのパッケージ発売に合わせた、限定劇場公開である。
会場は、プラハのO2アリーナ。キャパ 18,000人。ステージはアリーナの中央に設置され、頭上に巨大な十字型のLEDスクリーン。オープニング前のアナウンスで「Pink Floydは好きだが、Roger Watersの政治的発言が嫌いという奴は、今すぐ、この場を離れて、バーにでも行きやがれ」と言い放つ。この時は、おぉ、ロックだ、と思ったのだが、実は、本当にこの通りの雰囲気のライヴだった。
冒頭の、「Comfortably Numb 2022」から、「The Happiest Days of Our Lives」、「Another Brick in the Wall (Parts2)」、「Another Brick in the Wall (Parts3)」と連打される引き締まったロック・サウンドと、スクリーンに次々と放たれるアジテーションのような言葉に、いきなり圧倒される。ここまでマジの政治的メッセージに溢れているとは! その一方で、この「The Wall」のパートのサウンドのカッコ良さは、やはり凄い。
続いては、彼のソロ作品(「Radio KAOS.」、「Amused to Death」からの選曲)と、新曲のパート。ここでも、国家や権力による抑圧や暴力に対する怒りをストーレートに歌う。
そして、「Have a Cigar」、「Wish You Were Here」、「Shine On You Crazy Dimond (Parts 6 ,7 & 5)」と続く「Wish You Were Here」のパートでは、Syd Barrettとの思い出を語って、しんみりさせる。でも、他のPink Floydメンバーへの言及は無しなのが、何とも…
「Sheep」の演奏では、羊の張りぼて風船が宙を舞い、「Run Like Hell」では豚も飛ぶ。こういうサービス精神がある一方、「Money」、「Us and Them」、「Any Colour you Like」、「Brain Damage」、「Eclipse」と続く「The Dark Side of the Moon」のパートは、この超絶人気アルバムを、ガチガチのプロテスト・ソング組曲に変えてしまう映像と歌唱。圧倒的クオリティのライヴ・パフォーマンスだ。尋常では無いほどの迫力に、ただただ打ちのめされた感じ。
「Final Cut」の収録曲「Two Suns in the Sunset」でも強烈な反戦・反核メッセージを打ち出した後、最後は、自身のプライベートな話なども語った後、新曲「The Bar」の Part 2(Part 1は前半で披露)をバンド・メンバーと楽しく演奏し、大団円。
個人的には、Rodger Wartersの独創性は凄いと思うものの、面倒くさい印象が強いのだが(David Gilmourの分かりやすさの方が好印象だったりする)、まったく自分を曲げない強い政治的主張と、最新テクノロジーも駆使したエンターテインメント性を両立させた、このライヴは本当に凄いと思う。恐るべき 80歳だ。
これは、パッケージを買って家で観るよりも、大劇場で音と映像を浴びる方が、絶対に良い作品だと思う。できれば、一緒に拍手し、発声できる「応援上映」方式で公開してくれる劇場があれば良いのだが…(日本中の劇場が「鬼滅の刃」に乗っ取られているからなぁ)
本田雅人、田中靖人、上野耕平、中山拓海。4人のサックス奏者による公演を観に、銀座・王子ホールに行ってきた。初めて入るホールだが、銀座の王子製紙本社ビルの2階にある、キャパ 315席の小振りながら立派で綺麗なホールだ。少々、前時代的にお高くとまった感じもある…。
フュージョン界のレジェンド・プレイヤー 本田雅人と、クラシック界の権威 田中靖人というベテラン組と、クラシック界の上野耕平とジャズ界の中山拓海という若手のホープによるクァルテット。演奏曲は、事前にプログラムとして配られるクラシックの公演によくあるパターン。
・サクソフォン四重奏曲第1番より第4楽章 / J.B サンジュレー
・ピアノソナタ第8番「悲愴」より第2楽章 / L.V ベートーヴェン
・Caravan / D. エリントン
・動物の謝肉祭より「白鳥」~Ripple of Swan / サンサーンス・中山拓海
・Rose Maze / 中山拓海
-休憩20分-
・Pinocchio / 本田雅人(編曲:挾間美帆)
・Donna Lee / C. パーカー(編曲:挾間美帆)
・New Cinema Paradice /E. モリコーネ(編曲:中山拓海)
・Megalith / 本田雅人
・宝島 / 和泉宏隆(編曲:本田雅人)
-アンコール-
・チャルダッシュ / ヴィットーリオ・モンティ
第1部は、クラシック、Duke Ellingtonのスタンダード & 中山拓海によるクラシック寄りの曲という構成。舞台向かって左から、ソプラノ・サックス、アルト・サックス、バリトン・サックス、テナー・サックスと並ぶ席順。バリトンは田中靖人がずっと担当するが、他の3人は曲によって楽器を持ち替え、その度に席替えをする。まずは、上野耕平がソプラノ、本田雅人がアルト、田中靖人がバリトン、中山拓海がテナーの布陣でスタート。当たり前だが、4人とも上手い。そして、四重奏というのは、やはり良いフォーマットだなと思う。ただ、本田雅人は、クラシック系のお作法が分からないので緊張していると、しきりにぼやいていたが。
途中、ステージから会場のお客さんに尋ねたところ、観客の半数以上がサックス奏者だという(学生さん風の若者も多い)。しかも、クラシック/吹奏楽系と、ジャズ/フージョン系が半々。それを確認した本田雅人、それ以降は、曲の解説やサックス演奏についての語りが、やたらとマニアックで詳細になっていく。私には理解出来ないのだが、それでも、この雰囲気、なんか良いな。
第2部は、挾間美帆による複雑アレンジ・ジャズや本田雅人の曲など。ここにきて、ぐっと元気になる本田雅人。4人の中でも、音色の華やかさでは、群を抜いている。そして、今日のパフォーマンス全体を通して、田中靖人のバリトン・サックスが素晴らしく、クラシック系の曲での安定感、フュージョン系の曲でのドライヴ感、どれも見事だった。ベースが安定しているバンドは、良いなぁと実感。
アンコールは、演者の超絶技巧を楽しむにはうってつけの「チャルダッシュ」。特に、本田雅人とバトルを繰り広げるソプラノの上野耕平がキレッキレ。これで全編終了。とても興味深く、かつ、楽しさと温かさにも満ちたライヴだった。
前日のクァルテットに続いて、本田雅人のビッグ・バンド公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。
メンバーは
・本田雅人
・渡邉瑠菜、鈴木圭、青柳伶、宋環興(サックス)
・エリック・ミヤシロ、具志堅創、斎藤凜太郎、宮城力(トランペット)
・中川英二郎、藤村尚輝、石井優稀、本橋あかり(トロンボーン)
・中川就登(キーボード)
・杉村謙心(ギター)
・須藤満(ベース)
・山本真央樹(ドラムス)
BNT ALL-STAR JAZZ ORCHESTRAでは中央に立って、指揮と演奏を行うエリック・ミヤシロが、トランペット奏者の一人として最後列にいるのが新鮮だ。
開演予定時刻より早めにメンバーがステージ上に揃ってしまったため、3分前倒しで「Theme For B.B.S.」から演奏開始。昨日とは打って変わって、フュージョン系で固めた強力メンバー(昭和音大比率高し)での演奏だけに、緊張感なし、リラックス・モードの本田雅人である。そこから、「Tokyo Train」、「Pinocchio」、「Last Clear Stream」、「Seven」と、安定かつ迫力の演奏が続く。
一方で、変わり種の選曲として、「名探偵コナンのテーマ」。最近一ヶ月間ほど、長野県の高校の芸術鑑賞会に出演していたという本田雅人。高校生のハートをキャッチするために演奏していたそうだ。毎年公開されている映画版の音楽は、都度、新録されていて、本田雅人が、かなりの長期間、あの印象的なフレーズを演奏していたのだ(最近は、アレンジャーが変わったため、クビになったということだが)。分かりやすい、良い曲だ。
高校生の芸術鑑賞会の恩恵はもう1曲。T-SQUAREの「Truth」。本田雅人がT-SQUAREに加入する前に発表されていた曲なので、彼の個人名義のライヴで演奏される機会は多くはないのだが、これも高校の先生から熱望されて演奏していたということで、せっかくのビッグ・バンド・アレンジを、今回も披露してくれた。しかも、今日は、本田雅人と同時期にT-SQUAREのメンバーだった須藤満もいる。極めて有難味のあるパフォーマンスだ。そして何より、とにかく滅茶苦茶カッコ良い曲だ。特に、山本真央樹のドラムスの超絶テクニックに感嘆。これで本編終了。
アンコール(退場して再入場という儀式は割愛)で、「Megalith」。バンド全員のソロをフィーチャーしての楽しい演奏で全編終了。
2日続けて本田雅人。1日目はクラシック系奏者と組んだ異色のクァルテット、2日目は自身がリーダーを務めるビッグ・バンド。それぞれ、華のある彼のサックスを堪能。
いまだに、冷房設定の正解が分からない…… |