IN/OUT (2025.2.16)

今日の日中は、コートが要らないほどの暖かさ。陽射しもすっかり春を感じさせるものになってきました。まぁ、スギ花粉の飛散も、いよいよピークに向かうということでもありますが…


in最近のIN

"The Wild Robot"25.2.11

T・ジョイ PRINCE 品川米国の児童文学を映画化したDreamWorksのアニメを観てきた。邦題は「野生の島のロズ」

家事手伝い用のロボットが、客先へ配達される途中の事故で、野生動物しかいない島に流れ着く。ロボットは、動物の言葉を学習し、島の生活に順応しようとするが、動物たちは冷たい。そんな中、孵化したばかりの雁のひなに母鳥と思われてしまったロボットは、ひなに餌をやり、泳ぎを教え、飛ぶことを教える、というミッションを遂行することになる。というお話。

隙の無いアニメの良作だ。ハート・ウォーミングなストーリー。擬人化はされているが、綺麗事だけには収まらない動物たちの描写。プログラムの初期設定に囚われながらも、成長していくロボット。 底には、(説教臭くならない絶妙なラインの)文明批評も見え隠れする。

ハリウッド製アニメには、ほとんど興味が無く、DreamWorksのアニメ映画は(彼らの第1作である)”Antz”以来、27年ぶり。国民の祝日に、お子様達に囲まれての鑑賞だったが、中々好印象の作品だ(とはいえ、あまりにも毒の無い映画だったので、この後続けて、3回目の「九龍城寨之圍城」を鑑賞したのだが…


「DIC川村記念美術館 1990–2025 作品、建築、自然」@ DIC川村記念美術館25.2.15

DIC川村記念美術館2025年3月で休館となり、規模縮小の上、都内に移転することが決まったDIC川村記念美術館。以前から、一度は訪れたいと思っていたのだが、いよいよ残り期間が少なくなったところで、初の訪問である。

閉館のニュースを知って、今のうちに駆けつけようと思っている人は多く、連日、大賑わいという話は聞いていたのだが、確かに、東京駅前からの直通バスは満席。千葉県佐倉市の郊外、広大な敷地に立つ美術館は、結構な混雑ぶりだ。

現在行われているのは、庭園と館内全ての展示室を用いて、約180点のコレクションを展示するという、休館間際の在庫一掃セール的な展覧会だ。

入館して最初の展示室には、印象派からキュビズムまで、ずらっと名品が並ぶ。ただ、(収蔵品をたっぷり見せるというコンセプトの展覧会なのだから当然だが)いささか焦点がぼやけているような気はする。

しかし、その後は、テーマを絞った展示室が続く。Joseph Cornellの作品だけを集めた部屋、この美術館の名物「ロスコ・ルーム」(Mark Rothkoの「シーグラム壁画」専用に設計された展示室)、Frank Stellaの作品を時系列に並べた展示室。いずれも、その空間に身を置くと、一種、異様な迫力に圧倒される。評判通り、ロスコ・ルームの雰囲気は、他に類を見ないし、ミニマルな作風からどんどん変容・発展していくFrank Stellaの作品群は圧巻。

今どきの美術館としては、とてもストイックな展示方針なのも印象的だ。館内は、一切の撮影は禁止。作品に付けられた解説は、タイトルと作者名など最低限(ただし、良質のオーディオ・ガイドを無料でダウンロードできる)。豊かな自然に囲まれた、美術品の魅力を最大限引き出すよう設計された建物で、作品と真摯に対峙してもらおうという意図が伝わる。なお、館内のピクトグラムのデザインなど、細部にまで拘りが込められているのも印象的だ。

DIC川村記念美術館白鳥が泳ぐ池など、周囲の庭園も素晴らしい雰囲気だ。ただ、この環境の良さは、都心からのアクセスの便利さとトレードオフで成立しているのが辛い。実際、この建物と庭園を維持し、東京駅や佐倉駅から専用バスを走らせ、質の高い展覧会を開催するコストに見合う集客を維持するのは、並大抵のことでは無いはずだ。ヘッジファンドから資本効率改善のため休館を迫られたというのも、仕方ないだろう。文化活動と資本効率を同列で語るなという綺麗事は通じないのが現実なのだ。

私も、こうなる前に来る機会を持っておくべきだった。休館が報じられてから、初めて訪問するようでは、経営陣の決断を批判することは出来ない……。それでも、無くすには実に惜しい美術館だと実感。


"Captain America: Brave New World"25.2.15

TOHOシネマズ日本橋MCUの新作を観てきた。Steve Rogersから”Captain America”の名を引き継いだSam Wilsonが主人公。

正直、”Avengers: Endgame"以降のMCUは、蛇足感が拭えず、もう観なくても良いかな、という気になっているのだが、Avengersの中で、それほど目立っていた訳では無いFalcon = Sam Wilsonが果たしてCaptainの名に値するのか?一応、観てみることに。

相変わらず、MCUは手堅い。娯楽作として高いレベルを維持しつつ、新しいAvengers結成に向けた布石をしっかり打っている。Sam Wilsonを演じるAnthony Mackieも、説得力ある演技だ。

そして、この映画の肝は、Harrison Fordが演じる米国大統領だ(これまでのMCUでは、故William Hurtが演じていたキャラクター。今作で大統領に出世)。怒りっぽく、偽情報にも騙され、あわや戦争に突入という危なっかしい大統領は、現実を皮肉っているような設定だ。

さらに、同盟国・日本が重要な役割を担っているのも見所。平岳大が演じる総理大臣のような、胆力のあるリーダーが現実の日本にも欲しい…

ということで、今後のMCUの展開に対する期待がそれほど上がったという訳では無いが、これはこれで、キッチリ楽しませていただいた。


"Daddio"25.2.16

シネスイッチ銀座Dakota JohnsonとSean Pennの主演作を観てきた。タイトルは、「おじさん / おっちゃん」みたいな感じの、男性に対する呼びかけ語。邦題は「ドライブ・イン・マンハッタン」

真夜中のタクシー。JFK空港からマンハッタンの自宅に向かう乗客 Dakota Johnsonと、運転手 Sean Penn。舞台は、ほぼタクシーの中だけ。登場人物も二人だけの会話劇。

お喋り好きのタクシー運転手というのは、私は苦手だ。ざっくばらんに話しかけるSean Pennは、まさに私が不得手とするタイプ。しかし、Dakota Johnsonは、ちょっと面倒くさいと思いながらも、ウィットに富んだ返答を投げ返す。そこから、徐々に、プライベートの深いところに突っ込んだ領域にまで、会話は進んでいく。

設定だけ聞くと、初対面の人間に対し、そんなに明け透けに話すのか?という気もするが、若いながらも、自立した、知的な女性に見えるDakota Johnsonが抱える闇に気付き、時に野卑な言葉遣いではあるが、親身に寄り添う人生経験豊富なSean Penn。二人とも、役柄に見事にハマっていて、違和感なく、飽きることも無く、JFKからマンハッタンまでの道中を、ほぼリアルタイムで観客は付き合うことになる。

シネスイッチ銀座ということで、(米国人の明け透け話というのは、どぎついなという感覚は残るが…)静かで、ほろ苦く、しみじみと良い作品だった。

鑑賞したのは、シネスイッチ銀座。名画座らしい雰囲気を残し、手描きの映画解説が掲示されているのが、お楽しみ。設備面など、古臭い感じはあるが、このままで頑張ってもらいたいと思う映画館だ。今回の作品も、この映画館の雰囲気に合っていたと思う。



天気予報によれば、まだしばらくは気温の低い日も多いようですが、やはり今年の冬は、滅茶苦茶寒いという感じの日は殆ど無いまま終わりそうですね。