IN/OUT (2024.3.3)

職場の同僚が東京マラソンに参加したので、観戦に行ってきました。専用のアプリを入れると、自分が応援している選手がどこを走っているのか地図上にリアルタイムで表示され、各チェックポイント通過のタイムや、ゴールの予想時間も更新されるという便利さに驚きました。


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"Anatomie d'une chute"24.3.3

2023年 第76回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに選ばれた映画を観てきた。邦題は「落下の解剖学」。

フランスの山荘に住む高名な作家の夫が、自宅前で転落死した姿で見つかる。発見者は、過去の事故で視覚に障害を負った息子と、その介助犬。捜査の結果、作家は殺人の容疑者となる。そして、法廷で明らかになる事実とは… というストーリー。

作家として成功している妻。自分も作家志望でありながら、一作も書き上げられないまま彼女を支える役割に甘んじ、ストレスをため込んでいる夫。裁判を通して、そうした現代的な夫婦関係が残酷なまでに明らかになる。被告となった作家を追い詰めるのは、ミソジニーに囚われている雰囲気もある検事。一方、弁護士は作家に個人的な好意を抱いている。さらに、作家がバイセクシャルで、女性と不倫関係にあったことも暴露される。そうした大人達のやり取りを、好むと好まざるに関わらず聞かされることになる息子。登場人物全てが、単純な善人・悪人と割り切れない、複雑な背景を抱えていることが浮き彫りになってくる。

ということで、非常に重い映画である。一応、物語は決着するのだが、果たしてそれが真実なのか、誰にも分からない。それでも、この作品は、カンヌで評価された玄人向けの映画というだけでなく、フランスで150万人以上の観客を動員。商業的な成功も収めている。重いテーマをスリリングな法廷劇として提示するJustine Triet監督の力量、恐るべしである。

そして、もう一つの見所が、主人公の息子の介助犬であるボーダー・コリー犬の名演技だ。穿った見方をすれば、この犬こそが事件の真相に最も深く関わっている。どちらかと言えば(私の感覚では)不細工犬なのだが、素晴らしい演技。結果、カンヌ映画祭では、パルム・ドールだけでなく、パルム・ドッグ(映画祭で上映された作品の中で優秀な演技を披露した犬に贈られる)も受賞したというのも納得である。

2時間31分の長尺の重い映画。集中力を要求する作品だが、その分、感情の揺さぶられ方も半端ない。体調の良いときに観るべき作品だろう。


"Argylle"24.3.3

Matthew Vaughn監督の新作を観てきた。

Bryce Dallas Howardが扮する作家が主人公。彼女が書いたスパイ小説が、実在するスパイ組織の行動と一致してしまったことから、引きこもり気味の生活を送っていた主人公は現実のスパイ戦に巻き込まれていくというお話。タイトルのArgylleは、主人公が書いている小説内で活躍するエージェントの名前。

主人公が書いたフィクションが、何故、現実のスパイ組織の行動を言い当てているのか。その辺は、結構、有りがちなオチで、意外性には乏しい。ストーリー展開は、中盤まではもたつく感じだが、終盤のアクション・シーンの凝りまくった演出で一気に盛り上げるという、Matthew Vaughn監督のいつものパターンである。が、今作の意表を突いたアクションは、実にお見事(一部、カメラワーク的に「Baahubali 2: The Conclusion / バーフバリ 王の凱旋 完全版」を思い出したり)。この監督の作品は、粗はあるけど、それ以上の中毒性がある。

役者の皆さんも、それぞれハマり役。特に、劇中劇的に描かれる、主人公の小説内で活躍するスパイ・チーム、主役のAgent Argylleに扮するHenry Cavill、彼のパートナー役のJohn Cena、二人をサポートするAranda DeBoseのトリオは、スピンオフで映画してもらいたいぐらいの相性の良さだと思う。

あと、いつもながら、音楽のセンスがナイス。特に、Ariana DeBose, Boy George & Nile Rodgersによる「Electric Energy」は、1980年後半あたりのディスコ・サウンド風の佳曲。

2時間19分の尺は、もう少し切り詰めた方が良かったような気はするが、快作であることに間違い無い。


「清水ミチコアワー ~ひとり祝賀会~」@茅ヶ崎市民文化会館24.3.2

茅ヶ崎市民文化会館正月の武道館2月10日の久喜総合文化会館に続いて、清水ミチコのライヴを観に、神奈川県の茅ヶ崎市民文化会館に行ってきた。

会場は、茅ヶ崎駅から徒歩8分ほど。大ホールは、キャパ 1381席。

15時30分、開演。基本的なフォーマットは、これまでと同じだが、清水ミチコのコンディションがかなり良いようだ。久喜市で試していた新ネタが、さらに磨かれていたのも楽しい。茅ヶ崎ということで、観客との「今何時?」、「そうね、~」のコール&レスポンスが見事にハマっていて、さすが、サザンの地元である。こういう地元ネタがあるから、遠征したくなるのだ。

そして、今回も、アルフィーとYOASOBIの「作曲法」の完成度の高さに、感嘆&爆笑。アンコールの、矢野顕子自身が歌った体の「希望のうた」の出来も素晴らしかった。声では無くて、ピアノの手癖が似ている物真似って、つくづく凄いと思う。複数公演を追っかける価値大なのである。



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"Madame Web"24.3.3

SSU(Sony's Spider-Man Universe)の新作を観てきた。Spider-Manを巡る権利関係は、何とも複雑なことになっているようだが、MCUとは別系統の作品だ(SSUとMCUはマルチバースの関係にあるというのが、公式設定らしい)。

アメコミでのMadame Web初登場時の設定は、筋無力症を患った盲目の老女。蜘蛛の巣のような生命維持装置に繋がれた姿が、その名前の由来というキャラクターだ。しかし、この映画でMadame Webを演じるのは、30代のDakota Johnson。しかも、五体満足で元気に動き回っている。その時点で、嫌な予感はしたのだが、その予感以上の駄作としか言えない、誉めるところが皆無の映画だった…。

とにかく、ストーリーが雑。どこもかしこも穴だらけで、説得力が無さ過ぎる。ラストでは、Madame Webのキャラ設定を強引に辻褄合わせするような展開があり、これがまた何ともお粗末。アメコミの実写化映画は、荒唐無稽さとリアリティのバランスの取り方が肝だと思うのだが、この映画の製作陣は、全く、そういった事を理解していないのではないか?

そろそろ、アメコミ映画の人気も陰ってきたようだが、そういう悪い流れを一気に加速させそうな大駄作だ。エンドロールに流れるThe Cranberriesの"Dreams"だけは良かったかな。



東京マラソンただ、位置は特定できても、目の前をあっという間に通り過ぎてしまうので、結局、走っている姿は視認できず…。長距離走の沿道応援というのは、今回が初めてでしたが、一瞬の個人の応援よりは、全体を包む祝祭的雰囲気を楽しむものなのかなと思う、今日この頃です。