IN/OUT (2023.12.10)

今年は、例年より早く、冬の矢野顕子祭りが終了してしまいましたが、まだまだライヴ強化期間は続く。


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「上原ひろみ Hiromi's Sonicwonder JAPAN TOUR 2023 "SONICWONDERLAND"」@東京国際フォーラム ホールA23.12.7

東京国際フォーラム上原ひろみの新プロジェクト” Hiromi's Sonicwonder”の公演を観に、東京国際フォーラムに行ってきた。浜松公演に続いて、2度目の参戦である。

ステージ向かって左から、ピアノ、トランペット(Adam O’Farrill)、ベース(Hadrien Feraud)、ドラムス(Gene Coye)の順で並ぶところは浜松と同じだが、何せ、アクトシティ浜松 大ホールの 2,336席に対し、東京国際フォーラム ホールAは2倍以上の5,012席。やはりデカい。そのため、ステージの両脇に大きなスクリーンが設置されている。

新アルバムの1曲目「Wanted」からスタート。私が2度目で耳が慣れたのか、バンドがさらに熟成されてきたのか、はたまた大ホール仕様の演奏スタイルになっているからなのか、最初に聴いたときとは、結構、印象が違う。音の輪郭がくっきりして、ダイナミック感が増している気がする。まぁ、浜松で聴いたときは(新譜は買って、予習していたのだが)驚きの連続だったので、やはり耳が慣れたのかな。また、これまで、あまり音響に感心したことが無かった東京国際フォーラム ホールAだが、今日のPAは素晴らしいバランスだったと思う。両脇のモニターに映る映像も、見たいところを的確に押さえてくれるカメラワークが好印象。

今回は、第2部 1曲目が、星空をイメージした照明効果も相まって、特に心に響いた。一方、浜松で度肝を抜かれた「Up」は、Gene Coyeの変態ドラムス・ソロよりも、ひろみ嬢のピアノの超絶技巧が凄かった。日々、演奏が変わるから、何回でも観たくなるのだよなぁ。そう言えば、第一部の「Go Go」の演奏の前には「曲の始まりと終わりだけが決まっていて、あとは全員、全て即興」という発言があった。ジャズ・ミュージシャンのカッコ良さよ。

アンコールは、しっとりしたひろみ嬢のソロ「Blue Giant」と、ご陽気な「Bonus Stage」の演奏で大団円。という構成は同じ。終始、驚きっぱなしだった浜松に対し、二度目の余裕で落ち着いて鑑賞という事前の目論みは崩れ、結局、さらに興奮しっぱなしということになってしまった。もちろん、大満足である。前回はあまり意識しなかったプログレ臭を感じられたのも嬉しかったな。


「挾間美帆 m_unit」@ブルーノート東京23.12.7

ブルーノート東京デビュー10周年を迎えた、挾間美帆率いるジャズ室内楽団「m_unit」のライヴを観に、ブルーノート東京に行ってきた。9月に日本ツアーの文京シビックホール公演を観に行ったが、今回はクラブ公演である。

m_unitのメンバーは、
指揮者の挾間美帆
弦楽四重奏のマレー飛鳥(vn)、 沖増菜摘(vn)、 吉田篤貴(va)、 島津由美(vc
ホーンセクションの土井徳浩(as) 、 庵原良司(ts)、 竹村直哉(bs)、 真砂陽地(tp)、上里友二(hrn
そして、鍵盤とリズム隊の香取良彦(vib)、佐藤浩一(p), 須川崇志(b), 伊吹文裕(ds

ブルーノート東京は、ネット予約した場合、前日に座席番号が記されたメールが届き、その画面を見せて入場するシステムになっている。私は、そのメールを見て、やや後方の席だと思っていたのだが、ビッグ・バンドが入るため普段よりステージが拡張されていて、結果、挾間美帆にかなり近い席になっていた。嬉しくはあるが、これは、ライヴ中も姿勢を正さねば。

演奏は、新アルバム「Beyond Orbits」の1曲目の「Abeam」からスタート。やはり、間近で音圧を体感できるクラブ公演は楽しい!演奏されるのは、挾間美帆の才気が詰まった複雑な構成を精緻に組み上げた曲だが、高度な演奏テクニックを誇るm_unitの手に掛かると、疾走感溢れるエキサイティングなパフォーマンスになる。しかも、クラブ公演の距離感だと、メンバー達がお互いのプレイを楽しんでいるような表情がしっかり見えるのも嬉しい。

その後も、新アルバムの曲を中心に、一部、懐かし目の曲も織り交ぜて、ライヴは進む。特に、挾間美帆が宇宙の話(ここに、矢野顕子との共通点が!)をした後に演奏された「Elliptical Orbit (from 「Exoplanet Suite」)」が超絶カッコ良し。

m_unitは、弦楽四重奏が加わっているのと、ホーン・セクションにトロンボーンでは無くホルンが入っているのが特色だが、それがとても効果的だと思う。ただ、個人的には、サックスだけでなく、ストリングスのソロも聴きたいところではある。別のセット(今回のブルーノート東京公演は2日間4セット)ではマレー飛鳥のヴァイオリン・ソロがあったらしく、そこだけは残念。

本編ラストは、「Time River」。庵原良司のソロが熱い。そして、アンコールは、「From Life Comes Beauty」。当然のスタンディング・オヴェイションで全編終了。

前日に観た、上原ひろみのHiromi's Sonicwonderが、変態的プレイを得意とする曲者達がアドリブを畳みかけ、圧倒的な昂揚感を導くのに対し、挾間美帆 m_unitの方は、ドラムスもトランペットも極めて正統派のプレイ・スタイルだが、凡百のビッグ・バンドとは一線を画す高度な構成で、やはり、素晴らしい昂揚感をもたらしてくれる。アプローチは対照的だが、音楽の楽しさ、素晴らしさをガッツリ体感できた二連戦だった。



冬のライヴは、分厚いコートが邪魔。観客席に持ち込むのは持て余してしまうし、クロークに預けると終演後の混雑が面倒。その点、今のところ、薄手のコートで問題ない気温が続いているのがありがたいところです。