IN/OUT (2023.12.17)

12月中旬になっても、いまだに顔を出してくる「暖気」。本当に温暖化が定着してしまったような年末です(あまり、年末感を感じないけど…


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「ザ・リターン・オブ・エマーソン、レイク&パーマー -WELCOME BACK MY FRIENDS-」@EX THEATER ROPPONGI23.12.12

EX THEATER ROPPONGIEmerson, Lake & Palmerのライヴを観に、EX THEATER ROPPONGIに行ってきた。

もちろん、Keith Emersonは2016年3月11日に、Greg Lakeは2016年12月7日に逝去している。今回は、3面の巨大LEDスクリーンにKeith EmersonとGreg Lakeの勇姿を映し(1992年のRoyal Albert Hallでのライヴ映像)、唯一、生存しているCarl Palmer(73歳)と共演させるという趣向。さらに、サポートメンバーに、Paul Bielatowicz(guitar, vocal)と、Simon Fitzpatrick(bass, chapman stick)も迎えている。果たして、どんなパフォーマンスになるのか、期待半分、不安半分での参戦である。

オープニング映像の後、お約束の「Karn Evil 9: 1st Impression, Part 2」で演奏スタート。1992年のEmerson, Lakeと2023年のPalmerが共演。硬質でパワフルで手数の多い、皆が聴きたかった通りのCarl Palmerのドラムスが熱い。途中から、Paul BielatowiczとSimon Fitzpatrickを加えたリアル・トリオでの演奏になる。Keith EmersonのキーボードをPaul Bielatowiczのギターで再現するのだが、意外なほど違和感の無い音でお見事。ただし、ヴォーカルもPaulが担当するのだが、これは、激しく見劣りがする。というか、Greg Lakeのヴォーカルは、唯一無二の魅力を持っていることを改めて思い知る。

その後も、「Hoedown」、「Knife Edge」、「Take A Pebble」、「Tarkus」、「From the Beginning」などなど、初期の名曲の数々を、Keith & Gregの映像と共演したり、Paul & Simonとリアル共演したりして演奏。合間には、Simonのチャップマン・スティックとPaulのギター、それぞれのソロ・コーナーがあったり、まさかのCarl Palmerがヴォーカルで「Benny The Bouncer」を披露したり(Greg Lakeは、この曲をライヴでは歌わなかったので今回は自分が、ということ。まあ、下手では無いが、ご愛敬のヴォーカルだった…)。

また、Carl Palmerのドラムス・ソロもガッツリ。73歳とは思えないパワフルさと、ベテランらしい遊び心に満ちたソロ・プレイは見応えあり。個人的には、大画面で観るGreg Lakeメインの「Lucky Man」に痺れた。深みのあるヴォーカルと、ラスト近くの尖ったKeith Emersonのシンセ・サウンド。つくづく、カッコ良し。

なお、今回、使われている1992年のRoyal Albert Hallでのライヴは、マルチ・トラックで録音されていたので、ドラムスだけを抜いて、Carlのリアル・プレイと合わせることが可能だったとのこと。

EX THEATER ROPPONGIラストは、「Fanfare for the Common Man」。この曲の時だけは、写真撮影OK(1枚だけ撮ったが、タイミングが良くなかったな…)。映像の中のKeith Emersonのソロが、ハモンド・オルガンにナイフを突き立て、ぶっ倒し、破壊する勢いで弾きまくる、実に見事な暴れっぷりで、懐かしいやら、嬉しいやら。

最後にクレジット風の映像が流れ(Ohio State University Marching Bandが演奏するEL&Pナンバー!)、特にアンコールは無く、全編終了。

Carl Palmerの健在ぶりは予想を超える素晴らしさだったが、Paul BielatowiczとSimon Fitzpatrickの参加が必要だったのかは微妙な気がする。まぁ、過去のライヴ映像にドラムスだけ生で全編やり切るのは、カラオケ・ショーみたいになるし、編集された映像ではドラムスの生演奏と合わせきれない場合に融通を効かせる都合があったのかもしれない。ただ、リード・ヴォーカルは、全編、Greg Lakeで貫いてもらいたかった。

ということで、ライヴの興奮という面では物足りないが、メンバーが歯抜けになってしまったベテラン・バンドの公演としては、こういう形態も有りだな、と感心。いずれにせよ、たとえカラオケ・ショーだったとしても、やはり、観に行っちゃうんだよなぁ。


「枯れ葉」23.12.16

Aki Kaurismäki監督の新作を観てきた。フィンランドを代表する映画監督、Kaurismäki兄弟の弟の方だ。二人とも有名監督だが、私は兄のMika Kaurismäkiの「世界で一番しあわせな食堂」しか観たことが無く、Akiの作品はこれが初見である。原題は"Kuolleet lehdet"、英語タイトルは”Fallen Leaves”

1時間21分の小品。主人公は、働いていたスーパーから賞味期限切れの食材を持ち帰ろうとしてクビになった女性と、飲酒を止められず工場をクビになった男性という、冴えない二人。彼らが出会い、お互いの存在に希望を見いだすという筋立てだが、ラヴ・ストーリーと呼べるほどのロマンチックな展開は皆無。しかし、なんとも滋味深い。貧しい庶民の暮らしを淡々と撮るのが監督の特長ということだが、まさに、その通りの映画だ。

必要最低限の台詞にちょっと捻ったユーモアが潜んでいるところ、また、二人が最初に出かけた映画館で観るのが、Jim Jarmuschの"The Dead Don't Die"だという微妙な外し方など、そこはかとない面白味が溢れているのが楽しい。

そして、ラスト・シーンの鮮やかさが、つくづく、良い映画を観たなと思わせてくれる。なるほど、Aki Kaurismäkiが名匠と呼ばれ、多くのファンを持つのも納得の作品だ。あと、犬好きの人は必見だと思う。


「小曽根真 クリスマス・ジャズナイト2023t ”Beyond Generations”」@Bunkamura オーチャードホール23.12.17

オーチャードホール小曽根真がクリスマス・シーズンに開催している公演を観に、オーチャードホールに行ってきた。2006年以降、ほぼ毎年、様々なゲストを招いて開催しているそうだが、私はこれが初参戦。今年は世代を超えたメンバーを集めたということで”Beyond Generations”とサブ・タイトルが付いている。

メンバーは、
ピアノ:小曽根真
トランペット:エリック・ミヤシロ/岡崎好朗/松井秀太郎/Joey CURRERI
トロンボーン:中川英二郎/半田信英/藤村尚輝/小椋瑞季
サックス:岡崎正典/馬場智章/岩持芳宏/Nicola CAMINITI/Tal KALMAN
ベース:小川晋平
ドラムス:きたいくにと

コンサート・タイトルは”JAZZ NIGHT”だが、日曜日の午後3時に開演(前日、2日公演の1日目は、19時開演)。二部構成の内、第一部は、ピアノを中心としたビッグ・バンド。エリック・ミヤシロや中川英二郎など、ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラでお馴染みのメンバーも多いが、あちらが、フュージョン系のブラス・バンドという雰囲気が強いのに対し、今日の演奏は、ぐっと、ジャズ味が強い。

一方、第二部は、メンバーそれぞれにスポットを当てる感じ。まずは、エリック・ミヤシロ、松井秀太郎、中川英二郎、Nicola CAMINITI、馬場智章、Tal KALMANが一列に並んで、それぞれソロを回していく。特に、エリックと松井秀太郎の掛け合いが熱い。2人とも、トランペットの音色自体が素晴らしい。

次は、ニューヨークから招いた海外勢3人をフィーチャーし、続いて、小曽根真のソロ。そこから、岡崎好朗&岡崎正典の岡崎Bros.をメインにした演奏へと続いていく。

演奏の後半、岡崎Bros.が観客席に降りて、通路を歩きながらパフォーマンスを続ける。観客席後方からは、捌けていた他のバンド・メンバーが演奏しながら歩いてきて合流。全員、ステージに上がって大団円。小曽根真の「メリークリスマス!」の掛け声で、キャノン砲から金色のテープが飛び出して本編終了。

アンコールは、「Happy Xmas (War Is Over)」。まさかの小曽根真がヴォーカルを披露。これで最後まで行くのは、キツいなと思ったところで、ゲスト・シンガーとして石川紅奈が登場。透明感のある女声ヴォーカルと、手練れのホーン・セクション。場内にはハート型の紙吹雪が舞い、実に良い雰囲気のクリスマス・ソングだ。これで、全編終了。

世代も国籍も様々なメンバーを束ね、ステージを牽引し、自らも超絶技巧のピアノをたっぷり披露する、小曽根真の親分肌が炸裂、という感じの2時間半。ホリデー・シーズンにピッタリのイベントだった。



大晦日まであと2週間。来週からは冬らしい寒さになるそうので、もう少しは年末感が強まるかな。