IN/OUT (2023.10.15)

ということで、特典クーポンに踊らされて、スマートフォンとスマートウォッチを更新。それにしても、スマートフォンの機種変更では、設定引き継ぎが、どんどん自動化されていて、かなり楽になっていることに驚きます(パスワードの引き継ぎなどは、アプリによっては煩わしいが…)。本当は、この機会に、初期化してスッキリさせたいところも諸々あるのですが、楽な方に流されちゃいますね…


in最近のIN

”Crimes of the Future”23.10.9

David Cronenberg監督の新作を観てきた。

近未来、人工的な環境に適応するように進化した人類は、痛みの感覚を失い、自傷行為への抵抗感は消え失せ、肉体的快楽の概念は大きく変容している。主人公は、"Accelerated Evolution Syndrome(加速進化症候群)"を患い、体内に次々と新たな臓器が生じる体質の持ち主。彼とパートナーの女性は、体内にある間にタトゥーを施した新臓器を公開手術で摘出することをパフォーマンスとして行うアーティストだ。そんな主人公の元に、プラスチックを食べるように進化したという少年の遺体が持ち込まれる…。

何とも訳が分からない設定だが、実際に観ても、Cronenbergの映画らしく、ストーリーを明確に理解することは極めて困難だ。色々な情報を総合した上で超単純化すると、人類がプラスチックを消化できる新たな段階に進化することを推進しようとする人達(新人類)と、それを阻止しようとする政府(旧人類)との間で、特異体質の主人公はどちらに与するか決断を迫られる。という物語のようだ。

しかし、ストーリーについていけなくても、とにかくDavid Cronenbergの悪夢的世界が延々と続く映像は強烈。画面には、有機物と機械が融合したエロティックな造形物と、PG12規制とは思えない過激なイメージが溢れかえる。御年79歳にして、こんな変態映画(誉め言葉)を製作するとは、さすがド変態映画監督(超誉め言葉)。そして、この変態世界で存在感を放つViggo MortensenとLéa Seydouxの演技も鬼気迫る。

全くもって、善良な一般市民には推奨できない映画だが、Cronenbergの集大成のような作品は、好事家には必見だろう。

Strangerなお、鑑賞したのは、Strangerという墨田区菊川にあるミニシアター。クラウド・ファンディングで立ち上げられたという49席の極小映画館だ。小規模ながら、映像と音響の設備はしっかりしているし、ロビーのカフェで供されるコーヒーとスナック(私はブラウニーをいただいた)のレベルも高く、そして、意外なほど客の入りも良かった。入り口には”THANK YOU FOR YOUR STRANGE LOVE”という文句が掲げられているのが、いかにも、という感じだが、そこまでマニア臭がキツいわけではなく、中々、面白い映画館だ。


JEWEL @ ブルーノート東京23.10.12

ブルーノート東京Jewelのライヴを観に、ブルーノート東京に行ってきた。

彼女は、1995年にデビューしたシンガー・ソングライター。個人的には、特に2001年のアルバム”This Way”が捨て曲無しの名盤だと思っていて、当時はかなりのヘビー・ローテーションで聴いていた。また、2002年のシンガポール公演も、非常に印象深いパファーマンスだった。しかし、その後、特に追っかける事も無く21年が過ぎてしまった。ブルーノート東京のスケジュール表に懐かしの名前を見つけ、速攻、予約したのである。

それにしても、スケジュール発表は9月後半と、かなり直前だった(そのため、別のライヴ予定を急遽キャンセルしたのだ)。どうやら、彼女の息子の希望で日本に旅行することになったのだが、それを知ったブルーノート東京のスタッフが打診し、一日だけの公演が実現したらしい。そのため、今回のパフォーマンスは彼女一人のアコースティック・ギター弾き語り。ステージ上にはマイク・スタンド一本だけという、超シンプルなセッティングだ。

登場したJewelは、まずはアカペラで"Over the Rainbow"。そして、ギターを抱えて"Near You Always"。歌い終わると、極めてフランクな調子で、会場から聴きたい曲を募る。いかにも、急遽決まったライヴに、ほぼ手ぶらで臨んだという雰囲気だ。しかし、そこは5歳頃から父親とステージに上がっていた筋金入りのパフォーマー。歌唱の声はしっかり出ているし、2本のギターを使い分ける演奏も、実に巧み。

そして、3曲目にして、私が最も聴きたかった極私的名曲"Hands"!、続いて、これまた大好きな"Standing Still"!!。気分は、21年前のシンガポール時代にタイムスリップである。

2022年の最新アルバム”Freewheelin' Woman”の収録曲などは、私は全く押さえていなかったのだが、新しい作品のクオリティも中々のものだ。何よりも、以前と変わらない、ダイナミック・レンジの広い歌声が嬉しい。もちろん、名盤”This Way”からも”Break me”など感涙曲を披露してくれる。

観客席に白人の姿が多いせいか、手加減なしの英語で会場からリクエストや質問を募るやり取りには、自らの英語力の衰えを感じてしまったが、ミュージシャンがリラックスした雰囲気でパフォーマンスしている姿を見るのは、楽しい。後半になるにつれ、どんどん歌声の力強さが増していき、特に、観客からの熱心なリクエストに応えた”Carnivore”での熱唱は鮮烈。

2002年のライヴでは、結構、濃密なロック要素を感じたのだが、21年経った今回は、弾き語りというフォーマットもあって、ドロドロ感は無く、カントリー風味のポップスが全開。それでも、ところどころにロックっぽいノリも感じるところに嬉しくなる。勝手な思い入れだが、お互い、歳を重ねたなぁとしみじみ。「一旦、退場して、また戻ってくるお約束は、”silly game”。そんなことはせず、今からが、アンコール」と宣言して、最後にアカペラで歌ってくれたのが、2002年と同じく「ヨーデル(お祖父様がスイスからの移民なのだ)」というところに、さらにしみじみしたのである。良いライヴだった。


”Blue Note Tokyo 35th presents In Concert at Sumida Triphony Hall JUNKO ONISHI Solo TIGRAN HAMASYAN ”StandArt” ”@ すみだトリフォニーホール23.10.12

すみだトリフォニーホールブルーノート東京の35周年記念公演の一環として開催されたピアニスト2名のダブルビル形式(二本立て)のコンサートを観に、すみだトリフォニーホールに行ってきた(予算節約なのか、会場にポスターの類いは皆無だった…)。

まず、大西順子。彼女のパフォーマンスは、トリオ、カルテット、セクステットと、様々なフォーマットで観てきたが、今回はソロ。ユニット形式のライヴでは、観客席に背中を向けたポジションでピアノを弾く姿ばかり見ていた訳だが、さすがにソロだと演奏中の顔が見える。結構、新鮮である。

一方、演奏の方は容赦無い。左手で高速のリフレインを刻みながら、右手でさらに超高速の複雑な旋律を奏でまくる。ほとんど不協和音ギリギリの響きもぶち込みながら、ついてきてみろ、と言わんばかりのアグレッシブなプレイが続く。耳障りの良さとは無縁だが、どこまでも強靱なピアノを、約1時間、弾きっぱなし。カッコ良すぎである。

そして、Tigran Hamasyan。アルメニア出身のピアニスト。1987年生まれで、2006年のThelonious Monk International Jazz Piano Competitionのグランプリに輝いた経歴を持つ実力派ということだが、私はこれが初見である。今回は、ドラムスとベースを従えたトリオ編成でのパフォーマンス。

正直、最初はピンと来なかった。生ピアノの音色を浴びていた大西順子の部と一転、PAを通した音に違和感を覚えてしまうし、トリオの演奏にも、あまり揺すぶられるものが無い。確かに、テンションが高く、スリリングな演奏だが、君達が三人がかりで紡いでいる音を、大西順子は一人で轟かせていたぞ、と思ってしまう。

しかし、演奏が進むにつれ、加速し続け、熱量が高まりまくっていくパフォーマンスに、グイグイ引き込まれていった。最後の曲になる頃には、すっかり前のめりだ。いやはや、世界には凄いパフォーマーがいるものだ。

アンコールでは一転、口笛付きのピアノ・ソロで、沁みるメロディを奏でる。Tigran Hamasyan、素晴らしい才人だと認識。

結局、両者1時間ずつ、途中に20分間の休憩もあったので、それなりに長時間の公演だったが、終わってみれば、大満足である。


”The Equalizer 3”23.10.14

Denzel Washington主演のアクション映画を観てきた。2014年の"The Equalizer"、2018年の"The Equalizer 2"に続くシリーズ最新作にして最終作である。監督は、シリーズを通してAntoine Fuqua。

Denzel Washington演じるMcCallさん、CIAを退職後はLyftの運転手をしているかと思いきや、本作では、いきなりイタリアのワイナリーを舞台に、見事な手際で大量殺人。そして、怪我を負った彼を暖かく受け容れてくれたイタリアの田舎町で、さらに悪漢を退治しまくる。たまたま彼が身を寄せた田舎町を地上げしようとして、見事に返り討ちに遭ったマフィアの皆様には、不運としか言い様がない。ということで、Denzel様が、イタリアで引退後の余生を送ることを考える穏やかな顔と、超高効率殺戮マシーンとして殺しまくる姿を、ただただ愛でる109分間。

CIAで鍛え抜かれたDenzel Washington = McCallさんは、とにかく強い。強すぎて、彼がマフィアの親分宅にカチコミかけるシーンも、返り討ちに遭うかもという心配は1mmも無い。ただし、R15+のレーティング通り、殺人シーンの描写はかなりハード。いささか、やり過ぎ感もあるのが、この映画に感じた唯一の違和感か。

過剰な暴力さえ我慢すれば、知力・体力ともに圧倒的に優れた主人公による勧善懲悪ストーリーは爽快。さらに、このシリーズの恒例、若者を導くメンターとして振る舞う姿はDenzel Washingtonのパブリック・イメージ通り、そもそも、なぜ、CIAを引退したはずの主人公がイタリアまで出かけて大暴れするのか? という理由が、最後にちゃんと明かされ、それがいかにもMcCallさんらしいところも、上手いなぁと思う109分間。シリーズ物として、これまで見続けてきたファンをニヤリとさせてくれる仕掛けの数々も嬉しい。引き締まったアクション映画の佳作だと思う。



一方、スマートウォッチのセッティングは結構難航。Android系(Wear OS)のスマートウォッチは、まだまだ発展途上なのでしょう。それでも、一年間使ってみると、すっかり手放せなくなってしまいましたが。