"No Music, No Life"なんて言葉、普段は嘘臭くて嫌いなんだけど、強プレッシャー下にあると、あながち嘘臭いとばかりも言えないかも、などと日和ってみたりもする今日この頃です。
Jewelのコンサートを観に、Suntec Cityへ行って来た。
彼女に対しては、いまいち、とらえどころの無いミュージシャンという印象を持っていた。AMGによれば、Adult Alternative Pop/Rock というスタイルになっているが、それほど個性的とも思えない楽曲は、むしろ、カントリー・ミュージックに近いのではないか、という気がしていた(もしかしたら、アラスカ育ちの人はカントリー・ミュージック・クラブに入れない、という、米国人以外には伺いしれない掟があるのだろうか)。ただ、個人的ツボにはまる佳曲が、どのアルバムにも、一つ二つ含まれていて、油断ならないミュージシャンでもある。
さて、5人のバックバンドを従えてのライヴだが、出だしは、最新アルバムの収録曲をそのままのアレンジで聴かせる、やや面白みにかけるものだった。声に強烈な個性が無いし、ダンスなどのパフォーマンスも無い。喋りで盛り上げるという訳でもない。彼女のMCは、何だか「天然」が入っているような感じもある。しかし、徐々に温まってくるにつれ、良い感じになってきた。ソロで「ポルカ」を披露するなどリラックスさせたと思ったら、一転、
「さぁ、立ち上がって。みんな、前に来て」
との御発言。禁止されているとは言え、立ち上がるぐらいは「外タレ」の公演では当たり前だが、席を離れ、前に出てこい、というのは、当地では滅多にあることじゃない。
しかし、Jewel様がおっしゃるのだから、これは前に行かなければ失礼というものだ。元々、二列目に座っていたので、あっと言う間にステージ間際へ。結果、超至近距離での鑑賞となった。
ここから演奏した曲のせいもあるのだろうが、近くで見ると意外にも、彼女は、ドロドロしたロックの濃密なオーラを発している。巨大ホールを圧するようなものではなく、もっと限定された空間を密度濃く埋め尽くす、というタイプのオーラだ。そして、その空間の中では、圧倒的な存在感を見せてくれる。予想外だったが、実に、充実した「ロック」を堪能できた。
しかしながら、それだけで終わらないのが、またスゴイところである。アンコールのラストに、無伴奏で、ご陽気な「ヨーデル」を披露して公演終了(祖父がスイスからの移民というバックグラウンドがあるらしい)。いやはや、Jewel様、全く油断できない。