IN/OUT (2018.10.7) |
|
日の光や空の色はすっかり秋なのに、気温だけが真夏のように上がった日曜日。台風が日本海側を通過したことによる一時的な現象だということですが、温暖化が進むと、これが当たり前の秋になっちゃうこともあり得るのですかね? 最近のIN「製作50周年記念『2001年宇宙の旅』70mm版特別上映」@国立映画アーカイブ (18.10.6)1968年に公開されてから50年。Stanley Kubrick監督の超絶傑作にして、私のオールタイムベスト、"2001: A Space Odyssey"。ワーナー・ブラザースが Christopher Nolanの協力を得て、当時のオリジナルの画と音を再現すべく作成した70mmニュープリント("unrestored"版)が、今年のカンヌ映画祭でプレミア上映された後、世界各国で順次上映されているのだが、ついに日本にも上陸。国立映画アーカイブ(京橋にある東京国立近代美術館フィルムセンターが、2018年4月1日から、独立行政法人国立美術館 国立映画アーカイブになった)で、ユネスコ「世界視聴覚遺産の日」記念特別イベントとして、6日間12回のみ、上映されることになった。この後、フィルムは、次の海外上映が待っているので、追加上映の可能性は無し。しかも、現在、日本で70mmのフィルムを上映できるのは、国立映画アーカイブだけ。つまり、これを見逃せば、もう一生、70mm上映での"2001"を観ることが出来ない可能性大なのである(今となっては、大阪 梅田 OS劇場のシネラマで"2001"を観たことがあるというのは、自慢できることだと再認識)。当然、私も出かけてきた。 ただし、前売り券は秒殺。受付開始の2時間前から当日券に並び、ギリギリセーフ(私が着いたときには長蛇の列。徹夜組もいたそうだ)。全310席の長瀬記念ホール OZUに入場することが出来た。 上映前に、国立映画アーカイブの学芸員の方から挨拶があったのだが、これが熱い! チケット争奪戦の末にこの場に来ることが出来た観客に感謝を述べ、今回のチケットに転売屋が暗躍した事への怒りを露わにし、70mmフィルムの映写がいかに難しいか語り(オリジナルのフィルムに経年劣化で微妙な収縮が生じており、このニュープリント版もピント合わせが非常にデリケートだそうだ)、それでも技術的なハードルを全力で乗り切ったと言い切る。なお、日本語字幕はフィルムに焼き付けるのではなく、映画の画面とは別に、下に別のスクリーンを設けて投影する方式。「読みにくいかもしれませんが、160分中、セリフがあるのは40分ぐらいですから」に、場内から「分かってるな」という親密な雰囲気の笑い声。素晴らしいスタッフと良い観客が作り上げたイベントだなと、上映前からグッと来る。 さらに、このフィルムにはワーナー・ブラザースによる上映指示書が付いていて、今回も、当然それに従う。 映画の素晴らしさは言うまでも無し。何度も観ているが、やはり凄い。どのシーンを取っても完璧な構図の画面と、それに見事に調和した音楽。観客の多くがハードSFに馴染みがなかった50年前には「難解すぎる」と言われた内容も、今では、むしろ分かりやすいと思える。冗長に堕すギリギリで緊張感を保つ、この堂々たる演出を、現在、商業映画として製作するのは極めてハードルが高いと思われ、まさに歴史的傑作だ。 ネガにあった傷や裂け目も本来の姿としてそのまま残されたというunrestored版は、最近のデジタル上映される新作映画とは、やはり一味違う画質だ。画面全体の奥行きが深く濃厚と言うのだろうか。大画面ならIMAXの方が遙かに高画質なのは間違いなく、数値化して比較すればすれば、恐らく、その差は歴然だろう。しかし、アナログ・フィルムが秘める情報量は、数値化とは別次元の豊潤さ持っていると思う。丁度、ハイレゾと呼ばれるデジタル・オーディオが隆盛を極めても、LPレコードを真空管アンプで楽しむ人が一定数いるのと同じで、映画でも、フィルムが持つ独特の磁力は凄いものなのだ。さらに、オリジナルの6chを再現した音響(ただし、オリジナルの磁気サウンドトラックが再生不能なため、1980年代に製作された35mmの保存用素材をソースとしているだそうだ)も、圧倒的な迫力。国立の施設とは思えない爆音ぶりだ。 映像も音も超プレミアム級。1回の上映に310人。× 12回で3,720人(複数回観る人もいるだろうからそれ以下)しか味わえない、まさに至福の映画体験だった。映画が終わって照明が明るくなると、拍手が起こり、しかも、多くの人が映写室の方を向いて映写技師に拍手を贈っていたのが印象的だった。 "The Equalizer 2" (18.10.6)Denzel Washington主演のアクション映画を観てきた。 彼が演じるのは、元CIAエージェント。前作ではホームセンターの店員だったが、今作ではLyft(Uberと同様の配車サービス)のドライバーとして働いている。しかし、その乗客が悪人の食い物にされていると知るや、凄腕の仕事人と化し、CIA仕込みの殺人スキルで悪を成敗するのだ。まさに、Denzel Washingtonの、毅然とした真面目な人格者というパブリック・イメージにピッタリのハマり役。 今回は、CIA時代の上官で、現在も親友である人物が殺され、その復讐を果たすことを物語の主軸に、例によって、町の人達に救いの手を差し伸べる姿が並行して描かれる。この、町の人達とのエピソードを丁寧に積み重ねることで、通常の一本調子のアクション映画とは一線を画する雰囲気を出すことに成功していると思う。安心して観られる作品だ。 物静かで、読書を愛し、どこまでも市井の人達の見方で、しかし、いざとなると滅茶苦茶高い戦闘能力を示すという、スーパーマン過ぎるきらいはある主人公だが、Denzel Washingtonが演じることで説得力を出していると思う。さらなるシリーズ化の要望は多そうだが、Denzel Washingtonが既に64歳であることと、良いキャラだったCIAの元上官を今回殺しちゃったことで、この後を続けるのは、結構難しいかな? "2001"は、10/19から、IMAXでの上映も企画されているそうで、これは見比べるしかないなと興奮する、今日この頃です。 |