IN/OUT (2020.10.25)

スマートフォンによって我々の行動様式は大きく変わったわけですが、その中の一つにGoogleマップによる経路検索があると思います。初めての場所や店でも、かつてのようにファックスで地図をやり取りしたりすることなく、場所の名前さえ分かれば、それでOK。「待ち合わせでの苦労」というのは、今の若者にはぴんと来ないのでしょう。

とは言え、Googleマップが提示する経路というのが、変にマニアックなのが困ったところです。最短距離に拘るのか、かなり変わった乗り換えを提案してきたり、意表を突く裏道を示してきたりすること、多数。


in最近のIN

「光―呼吸 時をすくう5人」@原美術館20.10.24

原美術館原美術館で開催中の展覧会を観に行ってきた。閉館が決まっているこの建物での最後の展覧会である。

出品者は、今井智己、城戸保、佐藤時啓、佐藤雅晴、リー・キット(李傑)の5名。このうち、佐藤時啓佐藤雅晴リー・キットは、以前、この美術館で観て印象深かった作家だ。

入ってすぐのギャラリーIは、リー・キットが創り出した空間。この展覧会のテーマである「光」を強く意識させる場所になっている。

佐藤雅晴の、実写映像とその映像を緻密にトレースしたアニメーションを組み合わせたビデオ作品は、初めて観たときと同じように衝撃的だ。不思議に引き込まれる世界。

そして、佐藤時啓は、この展覧会に合わせて原美術館を舞台に新作を撮り下ろし。美術館の館内を鏡や光源を持って移動しながら長時間露光した作品群を観ると、この空間があと数ヶ月で無くなってしまうという感慨で不覚にも涙が。

今井智己の、福島第一原発をテーマにした写真シリーズは、写真そのものよりも、原美術館の床の木目が指す方向が作品とシンクロするという、ちょっとした奇跡が凄い。

「光」を平面に定着させたような作品群が、窓から入る自然光まで計算したと思われる館内に並ぶ。とても刺激的で、最後を飾るにふさわしい展覧会だと思う。その一方で、常設作品にも微妙に手が加えられているのも楽しい。この美術館の醍醐味は、原美術館という建物自体が作品や展示と相互に共鳴し合うところに有ると、改めて感じる。閉館までに、何度か通わなければ。


「開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展」@三菱一号館美術館20.10.24

三菱一号館美術館閉館間近の原美術館に続き、開館10周年記念の展覧会を行っている三菱一号館美術館に行ってきた。

丸の内で最初のオフィスビルとして(オリジナルの)三菱一号館が建てられた1894年を軸に、ルドン、ロートレック、ルノワールらの作品が並ぶ、王道の展覧会だ。単純に「やはり、ルノワールの絵には華があるなぁ」ぐらいの素人感想しか持てない者にも十分に楽しめる質と量は、流石、三菱。

あと、私が今まで知らなかった、明治期の日本人画家、山本芳翠の「若い娘の肖像」が、とても印象的だった。この時代、フランスに渡り、これだけの作品を残せる研鑽を積んだというのは驚嘆すべき事だと思う。

専用アプリを用いる音声ガイドの使い勝手の良さにも感心はしたのだが、これだけの容量の音声データをダウンロードさせるのだから、館内に無料Wi-Fiがあると良かったのに、と思うのはワガママかな。



まあ、余裕があるときには、知らない路地裏を探訪するという楽しみを提供してくれる、という事も有るわけですが。