IN/OUT (2018.6.17)

意外なほどの梅雨寒。着るものに戸惑う今日この頃です。


in最近のIN

"This Is Spinal Tap"18.6.16

ロックバンド、Spinal Tapの全米ツアーに密着した映画を観てきた。映画自体は1984年の製作で、公開当時から高く評価されていたのだが、なぜか34年後の今、日本で劇場公開となった。

Spinal Tapは、1960年代から活動を始め、"one of England's loudest bands"と呼ばれるベテラン・バンド。この映画の製作時までに発売したアルバムは15枚。時代によって音楽性を変え、メンバーチェンジも重ねてきたが、この当時はハードロック系のサウンド。やや人気に陰りも出てきたが、新アルバム"Smell the Glove"のプロモーションのため、久々の米国ツアーを敢行。そこに、昔から彼らの大ファンだった映画監督Marty DiBergiが密着し、バンドの歴史やバンド内の人間関係を明らかにしていく。

という設定の、架空のバンドを扱ったコメディである。監督は、後に"Stand by Me"や"Misery"などの傑作を撮るRob Reiner。彼にとって、これがデビュー作であり、自身も、Marty DiBergi監督役で出演している。音楽業界を舞台にした疑似ドキュメンタリー(モキュメンタリー)は、最近では、2016年の"Popstar: Never Stop Never Stopping(俺たちポップスター"などあるが、そうした映画の原典と言える傑作だ。

ドラマーが不慮の死を遂げたり、メンバーのガールフレンドがバンド内に不協和音をもたらしたり、落ち目になったバンドが何故か日本で人気に火が点いたり、全編、ロックバンド・あるあるネタが満載。これは楽しい。爆笑と言うよりは、ニヤリという感じで、笑いっぱなしである。

笑いだけでは無い。この手の映画のキモは、架空のバンドが演奏する音楽のクオリティだが、その面でもこの作品は素晴らしい。下ネタばかりの歌詞はともかく、そのサウンドは、当時の様々な流行を取り入れた、いかにも有りそうなロック・ナンバーばかり。Bon Joviっぽい曲もあれば、Ozzy Osbourneのような雰囲気のものや、YES風もある。

極めてクオリティの高いモキュメンタリーだが、ラスト近くには意外にもグッと涙腺を刺激するシーンもある。上映館は少ないが、ロックファンにはお薦めの快作だ。


"A German Life"18.6.16

ナチスドイツの国民啓蒙・宣伝大臣 Joseph Goebbelsの秘書を務めていた女性 Brunhilde Pomselにインタビューした映画を観てきた。邦題は「ゲッベルスと私」。

モノクロの高精細カメラが、撮影当時 103歳だったBrunhilde Pomselを捉えたインタビュー映像と、その合間に、戦時の記録フィルムが挿入されるだけの、ストイックな映像が続き、正直、「映画」としての面白味は無い。しかし、彼女が語る言葉と、TV用に検閲されたものでは無いリアルな記録フィルムの迫力が尋常では無い。

Brunhilde Pomselは、1942年から1945年までGoebbelsの秘書として働き、終戦後はソヴィエト軍に捕らえられ、5年間、強制収容所に抑留された。解放後はドイツの公共放送局で働いていたという。映像では、103歳とは思えない、しっかりした口調と確かな記憶力で当時の事を真摯に語る(2017年に106歳で亡くなられたそうだ)。

彼女は、自分には罪は無い。もし、罪があるとすれば、当時のドイツ国民全員だ。と言い切る。強制収容所の実態も知らなかったとし、ユダヤ人の友人がいたことも強調する。この発言を、現代の我々が非難するのは簡単だ。国全体があのような動きになったときに、個人は流されざるを得ないという彼女の言い分を、自分は違うと否定するのもたやすいことだ。しかし、本当にそうなのか。突きつけられる課題は重い。

特に、今こそ、観るべき映像だと思うし、この素材だと、この手法がベストだったとは思う。が、それでも、もう少し見やすい(眠けを誘わない)演出が取れなかったのか、という点だけは残念。


「『バーフバリ 伝説誕生』&『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』2作連続絶叫爆裂マサラ上映~改装前のWooooow!!(王)騒ぎ篇~」@キネカ大森18.6.17

魂の傑作映画「Bahubali: The Beginning / バーフバリ 伝説誕生」と「Baahubali 2: The Conclusion / バーフバリ 王の凱旋」の連続マサラ上映イベントを体験しに、キネカ大森に行ってきた。開館34年目にして、初のロビーの改装を行うということで(大森の西友の中に入居している映画館だが、本当に古くさいのだ)、休館する前日に開催されたイベント上映である。

マサラ上映の特長は、キネカ大森のサイトに記載されていた注意事項を見れば、雰囲気が分かると思う。一部、抜粋すると
【ご案内】
*コスプレや上映中の応援、掛け声、ツッコミなど大歓迎です。
*クラッカー、紙吹雪、鳴り物、応援グッズ、サイリウム等も持ち込み、ご使用いただけます。
*スタンディングやダンス、歌もOKですが、他のお客様のご迷惑にならない範囲でお願いいたします。
【上映中の禁止事項】
*水・ミルク・砂・お米を撒く
*火気・爆発物を持ち込む
*映画館内にて破壊行為
*ターメリックを撒く(ターメリック風の黄色い紙吹雪はOKです)
*象に乗って入場する(牛もダメです)
*矢を放つ・ヤシの木をしならせて飛び込んでくる(あぶないです)
《お掃除までが、絶叫爆裂マサラ上映です》

この手の、会場の皆と一体化するイベントというのは、正直、苦手である。「シン・ゴジラ」の「絶叫上映」が話題になったときも、距離を置いていた。しかし、王の力は偉大である。さらに、今回は、二作連続(しかも"The Conclusion"の方はノーカット完全版)ということで、体験してみることにした。一応、インド風衣装とサイリウム、携帯用のほうきとちりとりを事前に仕入れ、準備万端。心配なのは、6時間近い上映時間に耐え抜く体力である。

映画館に集結した人を観ると、女性比率が高い。サリー着用の人は思ったほど多くはないが、それでも、ほとんどの人がインドを意識した衣装でキメている。16時、上映前の映画館の人の挨拶時点からクラッカーが鳴り、第一部の上映スタート。決めポーズや決め台詞の度に、歓声が沸き、クラッカーが弾け、鈴やタンバリンが鳴り響き、紙吹雪が舞う。音楽シーンでは、鳴り物がリズムを取る。ということは、キメキメのポーズと台詞だけで構成されていると言っても過言では無いこの映画、ずーっと大騒ぎなのである。中でも、奴隷剣士カッタッパが画面に登場する度に、悲痛な声で「カッタッパ!!」と絶叫する女性の存在が際立ち、誰と言うこと無く「カッタッパ姉さん」という名前が付いていたのが面白い。

また、歓声の対象が、主役側だけで無いのが驚きだった。バラーラデーヴァやビッジャラデーヴァなど、敵役にも熱い声援が飛ぶ。この映画世界に深入りし、人物像を掘り下げまくり、彼ら敵役が抱える因果を分析した結果、彼らは単なる悪者では無いということに思い至ってファンになってしまった人が多数いるようだ。

ということで、第一部の後、休憩が入り、第二部。そして上映終了後には全員で床に積もった紙吹雪を掃除してイベント終了。正直、皆と揃ってハイテンションで騒ぐのは、やはり苦手だとは感じたが、マサラ上映で他のお客さんの視点も取り入れると、映画に対する理解が、さらに進むのは発見だった。この映画は、最低でも、第一部 → 第二部 → もう一度第一部 → 第二部 と複数サイクル観ることで、その緻密な設定に驚くことができるのだが、このサイクルの一部にマサラ上映を取り入れるのは非常に有効だ。



因みにキネマ大森では、来月の改装完成後、オープニング・イベントとして、「『バーフバリ 伝説誕生』&『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』2作連続絶叫爆裂マサラ上映 ~新生キネカ大森でWooooow!!(王)を称えよ!篇~」を予定しているらしい。さて、どうしようかな…