IN/OUT (2018.6.24)

サッカーのワールドカップ開幕。自分も含め、にわかファンが急増する時期ですが、いつのまにか、日本が出場することが当たり前のようになっていること、そして、ドーハの悲劇も知らない世代が増えていることには驚きます。


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"MIKE STERN BAND featuring MAKOTO OZONE, TOM KENNEDY & SIMON PHILLIPS"@ブルーノート東京18.6.19

ギタリスト、Mike Sternの公演を観にブルーノート東京に行ってきた。彼と共にプレイするのは、ベースのTom KennedyとドラムスのSimon Phillips、そしてピアノに小曽根真という布陣。

まずは、昨年出た新アルバムの収録曲"Half Crazy"から演奏開始。バンドメンバー1人1人の見せ場をたっぷり盛り込んだ20分近い演奏に、初っ端から大盛り上がりだ。プレイヤー同士が笑顔でアイコンタクトを交わしながら、超絶テクニックを繰り出し合う姿に、観ている側も楽しくなる。

小曽根真は、2014年の東京ジャズフェスティバルでMike Sternと共演したのを観て以来だ。ピアノよりもハモンドオルガンのプレイの方が目立つ。ベースのTom Kennedyも、同じく2014年の東京ジャズフェスティバルでの共演者(当時は、私は彼のことをあまり知らなかった)。軽やかな音色の凄腕テクニックの持ち主であることを実感。そして、Simon Phillips。圧倒的なドラム・プレイの凄さは言うまでも無い。彼のドラムさばきが観たくて、今回も、右側の座席を選んだのである(SimonとMikeの共演を観るのは、昨年の丸の内コットンクラブ以来だ)。

ということで、ステージ上の全員が、キャリアも技術も音楽性も極めて高水準のプレイヤーなのだが、あくまでもMike Sternのバンドということで、出るところは出るが、引くところは引いて、Mikeのギターを際立たせている。そこがまた、職人集団という感じでカッコ良い。

最後は、Jimi Hendrixの"Red House"で締めて、終了。Mike SternとSimon Phillipsが揃った時点で、凄い公演になることは確定していたわけだが、その期待を裏切らない、いや、それ以上のステージだった。

なお、Mike Sternは、2016年の夏、道路に落ちていた建築資材を避けようとして転倒。両腕を骨折し右腕の神経も損傷するという、ギタリストにとっては致命的な大怪我を負ったのだが、数ヶ月後にはピックを接着剤で指先に付けて演奏にカムバックしたという。今回の公演でも、そのようなアクシデントがあったとは思えないプレイを見せてくれたが、近くの席から聞こえてきた彼と握手した人の話しでは、まだ、指先には力が充分には入らないようだ…。それでいて、あのプレイ。凄い。



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"Wonder Wheel"18.6.23

Woody Allenの新作を観てきた。邦題は「女と男の観覧車」

1950年代のコニーアイランド。タイトルのWonder Wheelは、ここにある観覧車の名前である。Kate Winsletが扮する主人公は、元女優だが、自らの不倫が原因が一度目の結婚に失敗。今は、コニーアイランドのレストランでウェイトレスをしながら、再婚相手の夫とWonder Wheeelが見える部屋に暮らしている。40歳目前の彼女が、海水浴場の監視員の若者と恋に落ち、またも不倫に走る。そこに、5年前、ギャングの彼氏と駆け落ちして音信不通になっていた夫の娘が突然姿を現す。

映画としては、極めてレベルが高い作品だと思う。かつてのコニーアイランドを完璧に蘇らせた画面と見事な色彩設計。Woodyらしい洒脱な音楽の使い方。Kate Winsletの不倫相手役 Justin Timberlakeが、観客に直接話しかけるメタな手法。クライマックス・シーンでは、敢えて他の人物を画面に入れず、Kate Winsletだけを映し続けるカメラワークと、そこで繰り広げられるKateの強烈な演技が観る者を圧倒する。Woody Allenが 82歳にして、これまでのキャリアで培ってきた技術を全て注ぎ込んだようなフィルムと言えるかもしれない。

しかし、私は、Kate Winsletが演じた主人公に、どうしても感情移入出来ず、観るのが辛かった。自ら破滅への道を突き進み、その暴走に周囲も巻き込んでしまう性を背負った女性。全く救いの無い物語だと思うし、Woody Allenのような波瀾万丈な(そして毀誉褒貶の激しい)人生をくぐり抜けないと、この映画には共感できないんじゃないかと感じてしまった。が、評論家筋の評価は高いようなので、私の人生経験と洞察が、まだまだということだろうか?



Mike Sternの公演日は、ちょうどワールドカップの日本対コロンビア戦でした。ブルーノート東京を出て、スマートフォンを立ち上げると、2-1で日本がリードのままロスタイムに突入、という時点。表参道の駅に着く頃には試合終了。ライヴの興奮がさらに増幅される良い夜になりました。