IN/OUT (2017.7.30) |
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私の職場は、これから一週間の夏休み。本来なら、梅雨明けの一番暑い時期に通勤しなくて済むはずが、今年の場合、梅雨が戻ってきたかのような微妙な天候で、有り難みが半減してしまっているような気もします… 最近のIN"The Mummy" (17.7.29)Tom Cruise主演の新作を観てきた。この映画、元々は、1932年に製作されたBoris Karloff主演作で、邦題は「ミイラ再生」。1959年にPeter CushingとChristopher Leeを迎えてリメイクされたのが「ミイラの幽霊」。1999年にBrendan Fraserを主演にリブートされたのが「ハムナプトラ」。原題はいずれも"The Mummy"なのだが、邦題はバラバラ。日本人的には「マミー」というカタカナと「ミイラ」が結びつかないからだと思われるが、今作は、ついに「ザ・マミー」の邦題での公開となった。 エジプト王女のミイラが現代に蘇るというホラー・ストーリーと、例によって身体を張ったアクションで自らのカッコ良さをアピールしまくるTom Cruiseの組み合わせは、まあまあ予想の範囲内。思っていたより、ホラー要素を前面に出しているという印象だが、結局は、Tom様映画ということになる。 それよりも、この作品が興味深いのは、これが、Universal Picturesが立ち上げた"Dark Universe"の第一作ということだ。Marvelの"Marvel Cinematic Universe"("Avengers"で大成功)、DC Comicsの"DC Extended Universe"(Marvelに差を付けられているが、"Wonder Woman"に期待大)、Legendary Picturesの"MonsterVerse"(登場するのが、ゴジラ、キングコング、キングギドラなど、日本人には一番馴染みがあるかも)に対抗し、老舗のUniversal Picturesが、往年のハリウッド・モンスター映画をシリーズとして復活させるという企画。今回の「ミイラ」を皮切りに、フランケンシュタイン、半魚人、透明人間、狼男、ドラキュラ、オペラの怪人などが登場するという。21世紀になって「大アマゾンの半魚人」の新作を観られるとは! なんだか、映画会社の正気を疑うような企画だが、その一作目にTom Cruiseを持ってきたところに、本気が伝わってくる。さらに、この映画でRussell Croweが演じているのが、Dr. Jekyll。ホラー界の、あの有名キャラクターだ。どうやら、彼が、一連の"Dark Universe"作品で狂言回しを務めるらしい。その彼が、映画の最後の方でつぶやく「怪物には怪物をぶつけた方が良いかもしれない」という言葉から、将来は、ミイラ vs 狼男、みたいな対決映画も作られるという可能性もありそうだ。 ということで、この作品自体は凡作ではあったが、このシリーズ企画が途中で打ち切られないよう、応援せねばという義務感に駆られてしまったのである。 "The Founder" (17.7.29)マクドナルドの"Founder"=創業者、を名乗る男を描いた映画を観てきた。 元々は、カリフォルニアの田舎町でMcDonald兄弟が開業していたハンバーガー屋だったのだが、そこを訪れたミルクシェーキ用ミキサーのセールスマン Ray Krocが、その徹底した効率的な店舗運営に感銘を受け、フランチャイズ化を提案。そして、あっという間に店舗網を拡大。やがて、自分たちが開発した店舗運営システムと品質管理に拘っていたMcDonald兄弟は、270万ドルで権利を手放し、Ray Krocによる事業拡大が続いた、というのが、マクドナルドの大雑把な歴史である。本来の創業者であり、基本レシピと画期的なファストフード店運営を発案したMcDonald兄弟は、追放された後、自分たちの店舗に"McDonald"の名称を使うことすら許されなかったという、正直、酷い話しである。大まかなところは、私も聞いたことがあったが、この映画で、そのえげつなさに驚かされた。 Ray Krocが、McDonald兄弟と知り合った時は、既に52歳を超えており、それまでは、様々な商品を売り歩くセールスマンに過ぎなかった。野心と押しの強さと自己顕示欲に溢れてはいたが、自分で何かを産み出す才能には恵まれていなかったと思われる彼が、ファストフード店の運営システムという「商材」に出会ったことが、彼自身や、周囲の人々の運命だけでなく、世界中の人の食生活まで変えてしまったのだ。 彼の強烈なキャラクターは、多くの人が嫌悪感を抱きそうなものだが、一方で、店頭の掃除も厭わず自ら率先して行う姿や、若手の才能を見抜く眼力、意志決定の速さなど、優秀な経営者としての資質にも(悔しいけれど)溢れているのは間違いない。この、えげつない資本主義社会の企業競争で、勝ち残るのは、こういう嫌われるぐらいの自己主張に溢れた人物なのだ。孫正義や柳井正も、Ray Krocの信奉者というのは、頷けるところである。 この強烈な人物の物語を、スピーディーに語りきる脚本と演出が巧みなのだが、それ以上に、この化け物じみた、とも言えそうな人物を、鬼気迫る演技で体現したMichael Keatonが素晴らしい。全肯定する人(個人的には、私とは友達になれないと思うが…)から、嫌悪する人まで、色々な見方をする人がいるだろうが、営利企業で働いている人には必見作だと思う。 とは言っても、暑いことに違いは無く。あまり、活動的な休みにはならないかな。 |