IN/OUT (2016.11.27) |
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駅前スーパーマーケットが改装。何だか、富裕層向けトンチキお洒落店舗になってしまって残念。 最近のINYES 来日公演 @ オーチャードホール (16.11.22)YESの来日公演を観に、オーチャードホールへ行ってきた。昨年、Chris Squireが死去したため、このバンドのライブは、2014年の「Fragile(こわれもの)」と「Close to the Edge(危機)」完全再現ライヴが最後になってしまったと思っていた。しかし、ベーシストにBilly Sherwood を迎え、まさかの活動継続で来日公演である。Billyは、2011年のTony Kayeとの公演で観たことがある。YESのメンバーとしては、1997年~2000年にかけて活動していた人だが、その時の印象は薄い。ただ、ライヴで観た限り、器用なマルチ・プレイヤーという感じだったので、Chrisの代役としてある程度期待できそうだ。 問題は、今回のライヴでの演奏予定が、1973年の「Tales from Topographic Oceans(海洋地形学の物語)」と、1980年の「Drama(ドラマ)」の収録曲が中心になるということ。「Tales from Topographic Oceans」は、大成功を収めた「Close to the Edge」の次のアルバム。当時、ヒンドゥー教の経典にはまっていたJon Andersonの嗜好と、バンドとしての太作志向が暴発し、LP 2枚組で全4曲 80分(各曲、20分ずつぐらいある)。どこを取っても、当時のYESサウンドが詰まっているとも言えるが、さすがに冗長。録音前に、Bill Brufordが脱退してしまうし、録音後にはRick Wakemanもバンドを離れてしまった事もあり、当時のファンを大いに困惑させた問題作だ。一方、「Drama」は、バンドのフロントマンでもあったJon Andersonがまさかの脱退。代わりのメンバーに「Video Killed The Radio Star」で一世を風靡していた The BugglesのTrevor HornとGeoffrey Downesを迎えるという仰天人事で、これまた、当時のファンを途方にくれさせた問題作。その二枚からの選曲を中心に据えたライヴというのは、まるで、ファンとしての踏み絵である 会場は、King Crimsonも公演するなど、プログレの聖地化しつつある(?)オーチャードホール。会場に集結したファンは、上級管理職風のサラリーマンが目立ち、何かの業界団体のセミナー会場のようでもある。他のベテラン・ロック・ミュージシャンのコンサートだと、高年齢層なのは同じだが、もう少し、自由業風の人が多いと思う。このファン層も、YESらしいところか。 19時丁度に、場内暗転(ロックのライヴで、時間通りに始まるところもYESらしい)。まずは、スクリーンにChris Squireを追悼する映像が流される。そして、メンバー登場、ギター:Steve Howe、ヴォーカル:Jon Davison、ベース:Billy Sherwood。キーボード:Geoffrey Downes、ドラムス:体調不良のAlan Whiteに代わりJay Schellenという布陣。私の席は、前方左側で、Steve Howeの真正面だ。嬉しい。 予告通り、「Drama」の収録曲、「Machine Messiah」から演奏スタート。見た目は鶏ガラのようなSteve Howe 69歳だが、演奏の腕は維持していて、元気なプレイが嬉しい。Jonのヴォーカルも、すっかり馴染んでいる。Billyのベースも、なかなかどうして、Chrisの音を見事に再現していると思う。ただ、Chrisの押し出しの強い「俺様キャラ」までは再現できていないかな。あと、コーラス・ワークも、少し弱いか。 その後、「White Car」「Tempus Fugit」「Your Move / I've Seen All Good People」「Perpetual Change」「And You And I」「Heart of Sunrise」を演奏。「Drama」以外の曲もしっかり演奏してくれて、お得なヒット曲集という感じもする。満足の第一部が終わり、20分間の休憩。 第二部は、「Tales from Topographic Oceans」から「The Revealing Science of God」「Leaves of Green」「Ritual」。正直、あまり聞き返すことの無かったアルバムだが、改めて聞くと、本当にYESらしい曲ばかりだと思う。そのラスト、Alan Whiteが登場し、それまで地道なプレイを続けていたJay Schellenに代わってドラムソロを披露。頑張っているが、やはり万全ではない感じもする。これで、本編終了。 アンコール。ドラムセットの前に座るのはAlan White。そして、お約束とも言える「Roundabout」。やはり名曲だし、盛り上がる。プレイも素晴らしい。大満足だ!と思っていたら、曲終わりにSteve Howeがそのままギター演奏を続け、もう一曲「Starship Trooper」になだれ込む! 大興奮である。大作アルバムからの完全再現も含む長時間のライヴの最後に、ここまで演ってくれるとは。演奏のクオリティも期待以上だったし、選曲も、かなりベストに近い。大満足の公演だ。 Geoffrey Downesも、Billy Sherwoodも、優れたテクニックを持ちながら、自分がオリジナルに携わっていなかった曲では自己主張に走ることなく、オリジナルを尊重したプレイに徹するところに好感が持てる。また、Jon Davisonのヴォーカルも、すっかり板についてきた。このメンバーで唯一、取替不可能と思われるSteve Howeさえ元気であれば、まだまだYESブランドでのライヴを楽しむ機会はあるかもしれない。 「映画 "Évolution" 先行上映イベント at 原美術館」 (16.11.23)フランスの映画監督 Lucile Hadzihalilovicが、10年の歳月をかけて完成させた新作の先行上映イベントを観に、原美術館へ行ってきた。芸術性の高さ(言葉を換えれば、商業的には厳しそう…)故の、美術館でのイベントである。 舞台は、常に高い波が押し寄せる荒海に浮かぶ孤島の集落。住民は、少年と、大人の女性しかいない。女性は、母親達と、医療施設にいる看護婦と女医だけ。他の職業の人がいるような様子も無い。絵を描くのが趣味の主人公の少年は、この島に隠された秘密に気づいていく。 全体的な彩度は低めながらコクのある独特の色調。BGMは最小限で、通奏低音のように、波の音、風の音が響いている。不気味な海中シーン、象徴的に描かれるヒトデ、謎めいた病院、したたる水滴。不気味で恐怖感に満ちていて、どこか耽美的な画面が続く。 説明的台詞が殆ど無く、ストーリーに込められた意味を100%理解出来ているかは、微妙なところも有るが(美術手帳の編集長氏と同じ見方だったので、ほぼ合っていると思う)、ある程度ネタバレしてしまうと、島の少年達は、ある目的のために、外の社会から連れてこられ、記憶を消されている。しかし、主人公の少年は、趣味のお絵かきを通じて、記憶の一部を止めていたのだ。果たして、「女性達」の正体と、少年を連れてきた目的は何なのか? 画面から伝わる独特の雰囲気に圧倒されるが、実は、SFとしても、かなりクオリティの高い作品だと思う。ある種の「好き者」には、お勧めの作品だ。 映画上映後は、画家の諏訪敦氏と、雑誌「美術手帳」編集長の岩渕貞哉氏との対談。お題は「『有機的な夢』としての映画エヴォリューションについて」ということだったが、どうしても、映画よりも美術寄りに話しが進んでしまう。それはそれで興味深かったが、個人的には、もっと映画の中身に突っ込める人選が良かったかな(上映後なので、ネタバレを気にする必要は無いし)。個人的には、この映画は、西洋人が持つ、海棲生物への畏怖心と関連していて、クトゥルフ神話にも通じているのでは? と睨んでいるので、その辺りを掘り下げて訊きたかったのだが… そんな中、参加者からの質問で、現在、原美術館で開催中の「篠山紀信展『快楽の館』」の感想を聞かれた時の回答が面白かった。諏訪氏が「篠山さんは『人間』を写していない。エンターテインメント的には面白いと思うが、人間に興味がある自分とは相容れない」と否定的だったのに対し、オープニング・セレモニーに出席していた岩渕氏が「篠山さんは、『生け花』だと言っていた」と。つまり、女性は、切り花のような素材に過ぎず、それを風景の中に挿していく感覚で作品を創っているとのこと。これには、諏訪氏も、そして私も、大いに納得したのだった。 使い勝手の悪い店になったかと思っていたところ、店内のBGMに(スーパーにありがちな、エレクトーン的な編曲をされたものではなく、オリジナル音源で)魂の名曲、Kate Bush様の"The Man with the Child in His Eyes"が流れてきてビックリ。なんというセンスの良さ! すっかり、店に対する印象が好転してしまった今日この頃です。 |