ピアノの松本淳一さん、テルミンのトリ音さん、オンド・マルトノの久保智美さんによるユニット。
東京芸術大学打楽器科に在学中、歌手としてデビューした経歴をお持ちですが、その後はマリンバを中心としたパーカッショニストとして活躍中。
ステージ上で眼鏡をかける姿が目新しく、また、足首に鈴を付けたり、太鼓を叩いたり、パーカッショニストのような活躍も目新しかったです。
* は、奥田民生氏と共演
向かって左にグランドピアノ、右にオンド・マルトノやテルミンなどが置かれているステージ。登場した矢野さんは、グランドピアノでは無く、中央のキーボード(NORD Electro 3)の前に座り、眼鏡を装着。普段なら矢野さんの定位置のグランドピアノには、松本淳一さんがスタンバイして、一曲目。続いて、残りのメンバーが登場し、矢野さんはセンターのスタンディング・マイクで二曲目。MATOKKUとのコラボ、だいぶん、こなれてきたかな、という印象だ。
ここで、MATOKKUが奏でる不可思議な音に合わせて、ざっとメンバー紹介があったのだが、ここの部分が、アルバム唯一のインストルメンタルである「ELEPHANT HOTEL」だったのかもしれない。どうも、そうは聞こえなかったのだが、矢野さんが最後に「13曲全て演りきった」と断言していたので…
「サヨナラ」は、矢野さんがグランドピアノ。バックは久保さんのオンド・マルトノだけだったのだが、これが良かった。この二つの楽器、相性が良いと感じた。
中盤で、ゲストの奥田民生さん登場。アコースティック・ギターをかき鳴らしての熱唱。ただし、合間には、例によって人を食ったような会話が。たとえば、「スタウダマイヤー」は人の名前なのだが、歌詞には全然関係ない。これは、スピッツの「ロビンソン」を意識したものだとか…。曲のタイトルについての話題から、今回の「ラーメンたべたい」は「星屑のラーメンたべたい」という題名になったり。この辺のユルい会話の応酬は、お二人の共演の醍醐味である。MATOKKUのメンバーにも、こういう遊び心があれば良いのになぁ。
そして、まさかのご本人ヴォーカルによる「すばらしい日々」。バックは、松本淳一アレンジによるMATOKKUバージョンだが、節回し自体は、矢野さん版よりもユニコーン版に近い感じだ。これは、貴重なものを聴かせていただいた。
奥田民生さん退場。そこからも、一曲毎に工夫を凝らしたアレンジの演奏が続く。「にぎりめしとえりまき」では、矢野さんは足首に鈴を装着し、手には拍子木を持って、全身でリズムを叩き出す。さらに、本編最後は、太鼓を叩きながら歌うという珍しい姿も披露。
アンコールは最新の二曲と、定番の「中央線」。残念ながら、奥田民生さんの再登場は無し。これで、過去のアルバム全曲演奏と、テルミンやオンド・マルトノとの共演という、思い切った企画の今年のさとがえる、終了。
MATOKKUの皆さんの技量はとても高いと思う(テルミンをちゃんとした音程でライヴ演奏するのは、かなり難しいはずだ)。ただ、不協和音を多用する松本さんのアレンジと、実験的なサウンドで、大ホールの二時間半の公演というのは、私としては、ちょっと厳しいかな、と感じてしまったのが正直なところだ。何か一つ、盛り上がりポイントが欲しかった。
あと、比較的前の席だったせいもあるのだが、カメラマンがシャッターを切る音が、非常に不快だったのも、今年のさとがえるの減点ポイントだ。フィルムと違ってデジタルだからなおさらなのか、物凄い枚数を連写しまくっていたのだ。特に私の大好きな「STRING OF PEARLS」の静かな演奏で、バシャバシャ無神経にシャッターを切りまくられた時には、本気で腹が立った。せめて、ミラー音がでかい一眼レフではなく、ミラーレス機を使ってくれれば良いのに(yanokami indoor festivalの時のカメラマンは、パナソニックのマイクロ・フォーサーズ機を使っていた。これが正解だと思う)。
やや辛口のコメントになってしまったが、新しいことに挑戦し続ける矢野さんは、やはりカッコ良いと思う。来春の新アルバムが楽しみだ。