IN/OUT (2024.6.16)

映画の宣伝には、「そういう売り方じゃないだろう」と否定的な感想を持つことが多いのですが、今回、映画館で流れていた予告編、現在公開中の「帰ってきた あぶない刑事(主演:舘ひろし&柴田恭兵)」と、間もなく公開の「Bad Boys: Ride or Die(主演:Will Smith & Martin Lawrence)」の予告映像をマッシュアップした「日米あぶない刑事祭り」には爆笑(浅野温子の扱いも上手い!)。こういうのを、もっと見せていただきたいなと思う、今日この頃です。


in最近のIN

"IF"24.6.14

Ryan Reynoldsの主演作を観てきた。監督は、John Krasinski。出世作、"A Quiet Place"・"A Quiet Place Part II"から一転、ファミリー向けのゆるふわ映画である。

タイトルは、”Imaginary Friend”の事。カタカナで「イマジナリー・フレンド」でも十分通用すると思うのだが、邦題は「ブルー きみは大丈夫」。ブルーは、劇中に登場するImaginary Friendの一人の名前。

母親を病気で亡くし、今度は父親が心臓病の手術を受けるために入院した少女が、父が入院する病院の近くの祖母の家で暮らすことになる。そこで、彼女は不思議な生き物たちに出会う。子供の空想の中にいたIF=Imaginary Friendだ。しかし、IF達は、成長した子供に忘れられると、消滅してしまう運命にある。そんな彼らを救おうと奮闘しているのがRyan Reynolds扮する男。少女は、彼を手助けしようと奔走する。

話の骨子は、お子様向けではあるが、悪くないと思う。しかし、どうも、IFを巡る設定やルールが理解しきれず、物語にのめり込めない(理詰めで考える類いの映画で無いのは分かっているが…)。

それでも、叙述トリックめいたラストのオチは、上手いなぁと思う。そもそも悪人が一切出てこない映画だが、登場人物全員に救いがあり、暖かい印象が残る良心的作品だ。

そして、お楽しみは、IFの声を担当する豪華声優陣(ほとんどのIFは台詞が少なく、カメオ出演みたいなものだが)。一番の主要キャラといえるBlueの声はSteve Carell。その他、Awkwafina、Emily Blunt、George Clooney、Bradley Cooper、Matt Damonなどなど。そして、個性的な造形ばかりのIF達の中でも、一番美味しい役と言えそうなIF(Keith)を担当しているのは、Brad Pitt!

また、一番年長のIFの声を担当したLouis Gossett Jr.は、今年の3月に87歳で亡くなっており、エンド・クレジットの最後に、”In memory of Louis Gossett Jr”の画像が出る。これが泣ける。


「サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品」 @ サントリー美術館24.6.15

サントリー美術館サントリー美術館のコレクション展を観に行ってきた。

この美術館は、普段は企画展を中心に展覧会を開催していて、常設展は無い。しかし、「生活の中の美」を基本理念に収集活動は熱心に行っている。

今回は、そうして集められた収蔵品の中から「メイヒン」を選りすぐった展覧会。必ずしも「名品」だけでなく、これまで公開される機会が少なかった「迷品」も併せて展示するという趣向。

展示は、「漆工」、「絵画」、「陶磁」、「染織と装身具」、「茶の湯の美」、「ガラス」の6章構成。

サントリー美術館最初の「漆工」の章で目に飛び込んでくるのは、展覧会のキー・ヴィジュアルにも使われている「鞠・鞠挟」。江戸時代に作られた蹴鞠用の鞠と、それを保管するための台だ。1966年に収蔵されてから約60年間で、サントリー美術館で展示されたのは2回、館外貸し出しが3回だけという、滅多に見ることが出来ない、まさにメイヒン。私も、鞠の実物をしっかり見たのは、これが初めてだ。

サントリー美術館「絵画」で興味深かったのは、「樹下麝香猫図屛風(じゅか じゃこうねこず びょうぶ)」。異国の動物・麝香猫を描いた室町時代の屏風だ。

サントリー美術館本来は、もう一つの屏風と対になった作品で、麝香猫はつがい。この麝香猫のパートナーが描かれた屏風は、現在、ボストン美術館に収蔵されている。この視線の先には、ボストンが…と思うと、何とも味わいが出てくる。こういう、豆知識的な解説が付されているのも、この展覧会の楽しさだ。

サントリー美術館ただ、私には、陶磁、着物や装身具、茶道具などは、いささか難解だ。桜の花を敢えて藍色で描く「色絵桜文透鉢(いろえ さくらもん すかしばち)」など、面白いなぁとは思うが…。

サントリー美術館それらよりも、最後の「ガラス」の章の華麗さの方が、私には分かりやすい。特に、フランスのガラス工芸家 Émile Galléの作品は、印象的な物が並んでいたのだが、写真撮影禁止。

撮影可だったのは、江戸時代のガラス職人が、何とか西洋のゴブレットに近づけようと努力した作品。これはこれで、興味深くはある。

サントリー美術館「藍色ちろり」も江戸時代の作品。冷酒用の容器。この展覧会で展示されてる作品の多くは、実用に供されていた物というのも特徴(陶器の食器には、小さな傷がたくさん付いていたりする)。「生活の中の美」という基本理念が貫かれていて、好印象。

結果的には、どれも「名品」揃いだったと思う。美術館の特色を生かしたコレクション展だ。


「(吹替) ライド・オン」24.6.15

Jackie Chanの主演作を観てきた。今年で70歳になるJackieの、50周年記念作だ。原題は「龍馬精神 Ride On」。

最近では、中国共産党との関係を重視した姿勢が目立ち、香港では批判されている(と言うか、すごく嫌われている)Jackie。私も、香港の庶民派アクション・スターからの変節ぶりは、好きになれない。今作も、記念作とはいえ、観る気は無かったのだが、石丸博也(昨年、声優を引退している)が、この映画の吹替えのために限定復活したというニュースが! 私にとっては、TVで何度も観た「スネーキーモンキー」や「酔拳」の石丸博也の声こそが、Jackieの声として刷り込まれているのだ!! ということで、今回は、吹替版で鑑賞することにした。

Jackieが演じるのは、時代遅れになった老スタントマン。彼の元を訪れる、長く音信不通だった娘。そして、老スタントマンと強い絆で結ばれた愛馬。と、登場人物を見ただけで想像が付く通りの人情劇だ。正直、クドいほどベタな展開である。

それでも、今も変わらぬ切れ味の、手近な小道具を駆使したアクション・シーンや、馬の名演技、そして、距離を縮める父と娘の情愛。アクション×笑い×人情 が詰まったJackieらしい展開は、十分に楽しめる。主人公が過去に演じたスタント映像という設定で、実際の、Jackie全盛期の頃の映像が(映画本編だけでなく、もちろん、NG集も)たっぷりと引用されるのも、まぁ嬉しい。ただ、その映像を劇中のJackie自身が見て、涙するというのは、ちょっとキツい…な。

そして、随所で感じる、(香港映画ではなく)中国映画らしさが、気になってしまう。もう、昔のJackieでは無いんだなぁ

一方、楽しみにしていた石丸博也の声は、もちろん、年相応に老けているが、Jackie自身も老いているので、無問題。日頃は字幕主義の私も、Jackieの口から石丸博也の声が出てくるのは、まったく違和感無し。吹替えで観て、大正解だった。



そういう意味では、Sean Conneryの007は若山弦蔵の声。Roger Mooreの007は広川太一郎の声の方が、本人の声よりもしっくり合います。TVでの洋画劇場の存在感は薄れてしまいましたが、今でも、そういう洋画の鉄板吹替え声優というのがあるのですかね?(時代について行けてない……