IN/OUT (2021.6.20)

映画のエンディング・クレジットは、特に組合関係が煩そうなハリウッド映画だと(特撮が多い映画だと、さらに)長い。年々、長くなっている気がします。それでも、場内が暗いままの時に席を立つのはなんだか貧乏くさい気がするし、一応、製作者に敬意を表するという意味で、最後まで観ることにしています。

映画製作に関係した人は、とにかく全員載せるという強迫観念すら感じられるハリウッド映画のクレジットですが、最近、気になっているのが”Catering”。日本で言えば「ロケ弁」的なものでしょうか? ほとんどの映画で、”Catering”や”Chef”が紹介されています。こういったスタッフまで載せるところが、面白くもあり、面倒くさそうでもあり。


in最近のIN

"Run."21.6.19

2018年、”Searching”で見事な長編デビューを飾ったAneesh Chaganty監督の新作を観てきた。

主人公は、田舎の一軒家で母親と暮らす女子高生。様々な持病を抱え、車椅子生活を送る主人公を母親は溺愛し、献身的に面倒をみている。しかし、主人公は、ふとした事で母親が与えてくれる薬に疑問を持ち、調べようとしたところ…。というスリラーだ。

映画の冒頭、PTAの集まりでの発言で母親が持つ異常性を予感させ、それが加速度的に拡大していき、実に嫌ぁな感じの恐怖が高まってくる。舞台の大半は二人が暮らす家の中だが、主人公が車椅子でしか移動できない上に、常に母親が近くにいて監視されているという閉塞感が、恐怖をさらに深めていく。そして、何よりも母親役のSarah Paulsonが怖い。観ている人が全員、ドン引きするようなその表情はトラウマ級。凄い演技だ。

ただ、あまりにも異常なテンションが続きっぱなで疲れるし、オチには、必ずしも満足はしなかったのだが、限定された舞台で見事なストーリーテリングを展開するAneesh Chaganty監督の手腕は、冴えまくっている。


"A Quiet Place Part II"21.6.19

Emily BluntとJohn Krasinskiの夫婦が共演し、John Kransinski自身が監督した、2018年のホラー映画"A Quiet Place"の続編を観てきた。このままのタイトルで良いと思うのだが、何故か邦題は「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」

メキシコに落ちた隕石から、視覚はなく、代わりに聴覚が極めて発達した怪物が世界中に蔓延。人類の大半はそいつらに食い殺されてしまった中、犠牲者を出しながらも田舎の農場でサバイバルした主人公一家。前作のラストを受け、物語は始まる。

ストーリーはシンプルながらも、続編らしい巧みな展開に目が離せない。前作もそうだったが、音を立てたら、物凄い速さで怪物が襲いかかってくるという設定が生み出す緊迫感が半端ない。ただ、この勢いが全く緩まず、97分間、緊張しっぱなしというのは、かなり疲れる映画体験ではある(今週は、疲れる映画ばかりだ)。

夫が監督している事も作用しているのか、Emily Bluntの毅然とした美しさが素敵だ。子供役の二人、Millicent SimmondsとNoah Jupeが揃って前作から続投というのも嬉しい(もっとも、二人の成長の度合いと、映画の中の時間経過が合っていないような気もするが)。特に、Millicent Simmondsの存在感は、独特の凄みに溢れている。

ハリウッド・スターのカップルが共同で製作した割に、シンプルでスピーディーなB級テイスト溢れる快作。Part IIIの製作を予感させるラストに期待が高まる。



”Run.”の主役のKiera Allenは実生活でも車椅子を用いているそうです。そして、”A Quiet Place Part II”のMillicent Simmondsは聴覚障害者。それを、「個性」としてそのまま活かした役柄を演じていることが、まさに「ダイバーシティ」を重んじる、現代的なキャスティングだと感心もした今日この頃です。