IN/OUT (2021.2.21)

気温が上がるという天気予報は見ていても、そうは言っても2月だからと冬物コートで外出し、しっかり汗ばんだ週末でした。


in最近のIN

”Mestari Cheng”21.2.20

Mika Kaurismäki監督(Kaurismäki兄弟の兄の方。弟がAki Kaurismäki)のフィンランド映画を観てきた、邦題は「世界で一番しあわせな食堂」。

主人公は中国の料理人。息子と二人、恩人を探すためにフィンランド北部の田舎町にやってくる。ひょんなことから、その村の小さな食堂を手伝うことになるが、その料理が徐々に村で評判になってくる。彼は、どのような過去を持っているのか? そして、食堂の女主人との関係はどう展開していくのか、というお話。

異国を訪れた謎の人物が、徐々ににその土地の人々と心を通わせていく。その鍵となるのが、実はプロの料理人だった謎の人物が作る絶品料理。というのは、結構、有りがちな設定だ。そして、この映画は、見事なまでの予定調和で進行する。サプライズは無く、安心して、ゆるーく観ていられる作品だ。特徴的なのは、舞台がフィンランドの田舎と言うことと、男が中国人と言うこと。意地悪い表現をすると、彼が、北欧の朴訥な人々を薬膳と太極拳で洗脳し、皆がハッピーになる物語。

基本、フィンランド語の映画だが、主人公と地元の人たちの会話は、両者にとっての外国語である英語で行われる。結果、日本人に聞き取りやすい英語台詞が多いのがありがたい。

中国資本も入った映画のせいか、主人公がとにかく善人。物静かで、礼儀正しく、知的な凄腕料理人演じるPak Hon Chuは、香港出身で、俳優としてだけで無く、音楽活動も行っているという。中々の芸達者だ。

ハートウォーミングで、万人に勧められる良い作品だ。ただ、30年前なら、日本人を主人公に、日本資本が参加して製作されても不思議じゃ無いような気がして、国際社会における日本と中国の地位逆転にも、思いを馳せてしまった。


「テート美術館所蔵 コンスタブル展」@三菱一号館美術館21.2.20

三菱一号館美術館19世紀のイギリスの画家、John Constableの回顧展を見に、三菱一号館美術館に行ってきた。

同時代の英国の風景画家、William Turnerの名前と作品は知っていたし、好みの画風だが、John Constableの方は不勉強にして、今回、初めて意識した画家である。二人の年齢は一つ違い。ライバル関係にあったということだ。そして、今回の展示の目玉が、1832年のロイヤル・アカデミー展で並んで展示された、Constableの「ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段)」とTurnerの「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号」が、時空を超えた2021年の東京で再び並んで展示されること。2作がロンドン以外で揃うのは世界初だそうだ。解説によると、1832年の展示では、二人のライバル心がバチバチで、自分の寒色系の絵が、派手な色彩のConstableの作品の隣に配置されたことを知ったTurnerが、観客の注目を惹きつけようと、後から画面の右下に鮮やかな赤色のブイを書き足したという曰く付きの作品。たしかに、二作を並べると(Constableが配置を決めたらしい)、赤いブイを書き足してもなお、Constableの作品の方が目を惹く雰囲気だ。巨匠と呼ばれる画家達の人間くさい側面が興味深い。

そういった画家の人間くささに焦点を当てがちなのが、この展覧会の特色という気がする。「生活の糧を得る手段としての創作活動」という切り口の解説文が多いのだ(この時期、結婚したばかりの妻を養うために云々とか)。それもまた楽し。ただ、解説文を読む人が密になることを避けるために、オーディオガイドが用意されていれば、なお良かったのだが。

絵自体は、イギリスの画家らしくとても落ち着いた色彩だ。この展覧会のキャッチコピーは「光を描く、空気が動き出す。」 確かに、その通りの雰囲気ではあるが、その「光」が、ヨーロッパ大陸とは全く違うという印象だ。



もう、このまま春の訪れが加速して、スギ花粉の飛散も早く終わってくれと思っても、そうは行かないのが残念。