IN/OUT (2020.6.14)

Jim Jarmusch監督の新作を観てきた。アート系インディペンデント映画の印象が強いJarmusch、まさかのゾンビ映画である。

舞台はアメリカの田舎町。映画の始まりは、Bill MurrayとAdam Driverが演じる警察官コンビと個性的な町の住人を手際よく紹介していく。そのリズム感は、いかにもJarmusch。単館映画のノリだ。しかし、Iggy Popが扮するゾンビがダイナーを襲撃してからは、スプラッター描写もしっかりあるゾンビ映画になる。ロック界のカリスマ Iggy Popは「コーヒー好き」のゾンビを嬉々として演じている。この映画のゾンビの特徴は、生きていた時に好きだった物への執着心が残っていることなのだ。

メタ・フィクション的な要素や、日本刀を振り回すTilda Swintonなどのエキセントリックな登場人物、さらに、Adam Driverの飄々としたコメディセンスなど、変化球的要素が詰まった展開は、やはりJarmusch。普通のゾンビ映画とは全く違う手触りだ。

（ゾンビ映画だけに）人を喰ったストーリーに、評価は分かれそうだが、実はゾンビ映画の元祖、George A. Romeroへの敬意に溢れた社会派作品だと思う。