IN/OUT (2023.11.19)

冬の矢野顕子祭りが始まり、ライヴ強化月間に突入です。


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「装飾の庭 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術」@東京都庭園美術館23.11.18

東京都庭園美術館今年で開館40周年を迎えた東京都庭園美術館。それを記念し開催されている「庭園芸術」に焦点を当てた展覧会を観に行ってきた。

この美術館の建物は、1933年竣工の朝香宮邸。その装飾プランに多大な影響を及ぼしたのが、1925年にパリで開催されたアール・デコ博覧会だ。そして、この博覧会で注目されるようになったのが「庭園芸術」。と言うわけで、この展覧会は、アール・デコ博覧会を中心とした両大戦間期のフランスの近代庭園に関連する絵画や彫刻、工芸、版画、写真、文献資料等、約120点の作品を展示し、朝香宮邸に施された装飾を読み解こうという趣向。

東京都庭園美術館館内は、当時の庭園芸術に関する雑誌やポスター、René Laliqueのガラス工芸、博覧会を訪れた朝香宮夫妻のフィルムなど、貴重な資料や美しい工芸品で溢れている。が、素人にとっては、学術的な解説よりも、テーブル・セッティングを施した展示になっている食堂の方が興味深かったりする訳だ。

東京都庭園美術館そして、普段は非公開となっている3階の「Winter Garden」も、本来の温室らしく緑を並べ、ティー・セットを配置するという、特別仕様で公開されている。90年前とは思えないお洒落空間だ。

東京都庭園美術館「庭園芸術」と「屋内装飾」のプロが観れば、もっと様々な発見があるのだろうとは思うが、門外漢にとっては、展示品よりも建物自体の魅力で押し切るという感じの展覧会だった。

もちろん、館内だけで無く、晩秋の雰囲気の庭園も良い感じ。竣工当時、ここには、鶴や孔雀などの動物たちが闊歩していたという。そこまで再現してくれていたらなぁ、と夢想してしまう黄昏時。


「モルゴーア・クァルテット クラシック /プログレッシヴ・ロック名曲選 Vol.2 「世紀の饗宴」」@ヨコスカ・ベイサイド・ポケット23.11.19

ヨコスカ・ベイサイド・ポケット荒井英治、戸澤哲夫、小野富士、藤森亮一による弦楽四重奏楽団、モルゴーア・クァルテットの公演を観に、横須賀芸術劇場 小劇場(ヨコスカ・ベイサイド・ポケット)に行ってきた。

今回は、彼らの活動の二大柱、ショスタコーヴィチとプログレッシブ・ロックを対峙させるという企画。しかも、プログレ代表はKing Crimson!それも、1972年~74年頃のJohn Wetton在籍時の曲が中心となる。「Red」至上主義者の私としては見逃せないのである。なお、2021年にこの会場で演った時は、ショスタコーヴィチとグレツキのクラシック曲 & 「Tarkus」を中心としたEL&Pだった。

第一部、ショスタコーヴィチは、軽快な「交響曲 第9番 変ホ長調 Op.70より第一楽章」と、繊細さとダイナミックさが絡み合う「弦楽四重奏曲 第9番 変ホ長調 Op.117」。トップ・クラスのクラシック奏者の集まりだけに、見事なテクニックである。

そして、15分の休憩後、King Crimsonの部。「Red」、「Fallen angel」。プログレの中でも、この時期のKing Crimson作品は弦楽四重奏との相性が抜群だと思う。John Wettonの抒情的なヴォーカルをヴィオラがなぞり、攻撃的なギターをヴァイオリンが奏で、複雑なリズムをチェロが支える。聴き応え有り。

例によって荒井英治の長目のMCが入る。プログレ愛が溢れ出すという感情的な理由もあるが、今回は、特に演奏に体力を消費する選曲となっていて休息を取る必要があるという現実的な理由もある。

そして、「Larks' Tongues in Aspic Part II」と「Starless」。最後に「21st Century Schizoid Man」。個人的には、最強のセット・リストと言える選曲に感激だし、どの演奏も、うるさがたのCrimsonファンも納得のアレンジだと思う。

アンコールは、「PEACE」。アルバム「In The Wake of Poseidon」の中で、3回、繰り返される小品(その中で、3番目の「PEACE - AN END」をベースにアレンジしたとのこと)だ。静謐な雰囲気で見事に締めくくり、全編終了。

クラシックの世界でも確固たる地位を築きながら、愛情と深い理解に基づいたアレンジと、それを実際に弾きこなすテクニックで、プログレを弦楽四重奏に落とし込む、唯一無二の存在とも言えるモルゴーア・クァルテット。MCでは、King Crimsonの中でも難曲「The Great Deceiver(偉大なる詐欺師)」と「Fracture(突破口)」を採り上げたいという希望を語っていたが、是非、実現していただきたいところだ。



とは言っても、競争率の高いチケットでは、抽選に外れたり、発売と同時に秒殺で売り切れてしまったりと、上手く行かないことも多々あります。

インターネット販売で、散々リロードした挙げ句、ようやくつながって手続きを進めていたのに、最後の最後で「ご指定の座席はタイミングにより満席となりました」と表示されるのは、さすがに精神的ダメージがデカい…。