IN/OUT (2023.11.5)

東京海洋大学この時期のお楽しみ、東京海洋大学の大学祭「海鷹祭」が開催されています。ここ数年、コロナ禍による中止や、入場制限が続きましたが、今年はついに通常開催。待ちわびていた近隣住民で活況を呈しています。

この間に、校内での飲酒が禁止されたのが、結果的にはコロナ禍の(数少ないが、確実に有る)良い置き土産だと思います。

残念ながら、今回はゆっくり食べ歩いている時間はありませんでしたが、中断期間があったにも関わらず、美味しそうなメニューがしっかり継承されているのが頼もしい。

もちろん、この大学祭の特色、海鮮珍味系もしっかり継承。東京海洋大学 東京海洋大学

そして、もう一つ。人柄が良さそうな学生さんが多いのも、この大学祭の良いところだと思う今日この頃です。


in最近のIN

「青空は、太陽の反対側にある 原美術館/原六郎コレクション 第2期(秋冬季)」@原美術館ARC23.11.3

原美術館ARC群馬県渋川市にある、原美術館ARCに行ってきた。訪れるのは、昨年の8月以来、2回目。前回は、北関東の酷暑を甘く見ていたため、今回は、秋に訪問(と言っても、季節外れの暑さがぶり返したのだが…

原美術館ARC快晴の文化の日。JR 草津・四万特急と関越バスを乗り継ぎ、正午に到着。美術館併設のカフェ・ダールで昼食後、現在、開催中の「青空は、太陽の反対側にある」展を観覧。

公式サイトによれば、
現代美術ギャラリーA、B、Cでは、常識や慣習、既存の価値観に抗うことで、または視点を変えることで独自の地平を切り開く作家や、声高ではなくとも社会や美術の潮流に疑問を呈する作家、そして自身の心に深く潜ることで新たな表現を浮上させる作家の作品をご覧いただきます。一方、特別展示室 観海庵には、鎖国の江戸期に西洋絵画や科学に傾倒した司馬江漢や、「朦朧体」と揶揄されながらも墨線を否定し、独自の表現を切り開いた横山大観の作品を展示します。(中略)輝く太陽にあえて背を向け、順光に映し出される鮮やかな青空と原美術館ARCをどうぞご堪能ください。
とのこと。

原美術館ARCかつての北品川の原美術館(もう、閉館してから2年半経ってしまった…)で馴染み深い作品もあれば、今回、初めて観る作品もある。初鑑賞の中では、Simon Ling の雑草を写実的に描いた大作が印象深い(タイトルは「無題」)。もちろん、この美術館の目玉とも言える常設展示、ギャラリーCの草間彌生の「ミラールーム(かぼちゃ)」も楽しいし、Claes OldenburgやNam June Paik、佐藤時啓らの作品も見応えがある。
原美術館ARC青天だったので、屋外のOlafur Eliassonの「SUNSPACE FOR SHIBUKAWA」も素晴らしい鑑賞体験だった(ドームに入ると、中にはプリズムレンズを通過した太陽光が虹となって現れている。太陽の位置によって、見え方は変わるが、約2週間おきに完全な円形になるそうだ)。

そんな中、嬉しい驚きだったのが、奈良美智の作品の展示の多さだ。ギャラリーBには、彼の製作現場を再現した「My Drawing Room」が常設展示されているが、今の期間、中身が青森県立美術館に貸し出されていて空っぽ。そこで、期間限定の特別展示として、奈良美智本人の写真によるスライドショーが流され、中に入って鑑賞できるのだ。北品川の原美術館を訪問する時、いつも楽しみに鑑賞していた「あの部屋」の中に入れるというだけで、テンション爆上がりである。さらに、彼の絵画や写真作品が多数。

これで喜んでいたら、ギャラリーAには、奈良美智の立体作品「Fountain of Life」も展示されていた。この作品越しに、前述のSimon Lingの絵を眺めると、実に心地よい空間になっている。

さらにさらに、日本画がメインの特別展示室 観海庵の中にも、奈良美智の木版作品とセラミックの立体造形が!もう、楽しいったらありゃしない。原美術館ARC 原美術館ARC

バスの時間まで、再度、カフェダールでケーキセット。惜しむらくは、これだけ充実した展示と、晴天の休日が重なったにしては、来館者が少ない。もちろん、ゆっくり鑑賞できるのはありがたいのだが、なんとも勿体ないと思う。渋川郊外の開放感溢れる空間も捨てがたいところだが、原美術館、また、都心近くに復活してくれないだろうか?


"Mon Crime"23.11.4

François Ozon監督の新作を観てきた。英語タイトルは”The Crime Is Mine”。邦題は「私がやりました」

舞台は1935年のパリ。有名映画プロデューサーが殺され、容疑者として連行された新人女優は、親友である弁護士とともに法廷に立ち、正当防衛を主張する。その弁論が裁判官や大衆の心を掴んだ結果、無罪を勝ち取るとともに、スターの座も手に入れるのだが、彼女らの前に、真犯人は自分だと主張する大女優が現れる。三人の女性が「(大金と名声を約束する)犯人の座」を巡って騒動を繰り広げるというクライム・コメディ。

Ozon監督の器用さが全開。アートからコメディまで作風が広い監督だと思うが、今回は、突飛な発想を、洒脱な会話とリズミカルな場面転換で、軽快なコメディに仕立てている。1935年という時代設定の生かし方も巧い。

若い女優(Nadia Tereszkiewicz)と弁護士(Rebecca Marder)のヒロイン・コンビもキュートだが、脇を固める男性陣の絶妙な間抜けぶりが楽しい。そして、思い切ったメイクで登場する、往年の大女優役のIsabelle Huppertの振り切った演技に感嘆。名監督の下、皆が活き活きと演技しているのが伝わってくる。

次々と窮地に陥るヒロイン達が、果たしてどうなるのか、終盤ギリギリまで心配になるのだが、アクロバティックな着地を決める。現実的に考えると、相当ブラックなオチだが、作品を貫く軽快さで、イヤな感じが残らないのが素晴らしいと思う。派手さの無い小品だが、お勧め作だ。


「ゴジラ−1.0」23.11.5

山崎貴が監督したゴジラの新作を観てきた。

時代設定が、終戦直後になっているのが新機軸だが、ストーリー自体は、伝統的なゴジラ映画そのもの。終戦直前の大戸島で一暴れしたゴジラは、戦後、ビキニ環礁の水爆実験で巨大化&凶暴化し、品川から上陸。銀座を徹底的に破壊した後、海へ消える。まだ占領下で自衛隊が存在せず、一方、米軍は、ソ連の動向を気にして日本での軍事行動は控えるという状況の中、ゴジラが再上陸するまでに民間人主導で対策を立案・実行できるのか、という筋立て。

ストーリーはテンポ良く進み、引き込まれる。特撮も見事。ゴジラ映画としては、かなり良く出来ていると思う。

ただし、神木隆之介を中心とする人間ドラマのパートが、いささかしんどい。戦争で深い心の傷を負った彼の贖罪と再生の物語と言えると思うのだが、そもそも、映画内で語られる戦争に、連合軍の存在がほとんど無いのが納得いかない。彼の心の傷というのが、アメリカ市場に気を遣ったかのような、都合の良いものなのだ。しかも、ゴジラを倒して解消という安直さで良いのか? さらに、設定が終戦直後のせいなのか、2020年代に作られた映画とは思えない女性(実質、浜辺美波と安藤サクラと子役の三人だけ)の扱い(子供を守り、男性を慈しむだけの役割)は、如何なものか?

私にとっては余分な)人間ドラマをしっかり描いたことで、結果的に、ゴジラの存在感がイマイチ薄いと感じてしまうのも、勿体無いところだ。

と、文句も多いのだが、それは、「シン・ゴジラ」がゴジラ映画のレベルを一気に引き上げてしまったからだ。それ以前の、お子様向け作品群に比べれば、本作の水準はかなり高いのは間違いない。

ラストに、続編に向けた伏線と思われる描写が何カ所か出てくるが、製作するのなら、特撮はこのクオリティで、内容はシン・ゴジラ風の、災害としてのゴジラにプロフェッショナル集団が冷徹に対処するというものにしていただきたいところだ。



渋川駅原美術館ARCからの帰路、渋川駅で列車を待っていたら、「観光列車SLぐんま D51復活35周年水上」が入線。ホームにボーッと立っていただけなのに、気がつけば、撮り鉄の方々を差し置いて、かなりのベスト・ポジションで動画撮影出来ていました。何だか、申し訳ない。