IN/OUT (2023.9.17)

来週は、いわゆるシルバーウィーク。国民の祝日が多いよりも、自由な長期休暇を取得しやすい世の中になった方が良いとは思っていますが、まあ、休みがあるのはありがたい。


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「尾崎亜美コンサート2023」@ EX THEATER ROPPONGI23.9.16

EX THEATER ROPPONGI尾崎亜美のライヴを観に、六本木のEX THEATER ROPPONGIに行ってきた。バックは、林立夫(Dr)・小原礼(B)・鈴木茂(G)・是永巧一(G)・住友紀人(Sax & Key)・Aisa(Cho & A.G)。

「Recipe for Smile」から演奏スタート。3曲目で早くも私の大好物「マイ・ピュア・レディ」。住友紀人のウィンド・シンセサイザーが良い味わいを加えている好演。

今回のライヴは、尾崎亜美にとって特別なものだった。この3月に声帯の手術をし、そこからリハビリを続けての初ライヴ。しかも、この直前には持病だという逆流性食道炎のせいで咳が止まらない状態になっていたとのこと。この日のMCでは、その経緯(と、夫である小原礼がいかに支えてくれたか)を話していたが、この話になる度に涙ぐんでいたことに、如何に不安を抱えてのライヴだったかが伝わってくる。

ということで、出だしのヴォーカルには不安もあったのだが、尻上がりに声の調子はよくなっていく。そして、林立夫と小原礼の安定感たっぷりのリズム隊。鈴木茂と是永巧一の滋味深いギター。サックス、ウィンド・シンセサイザー、キーボードと器用にこなす住友紀人。コーラスに加え、アコースティック・ギターやマンドリンでしっかりサポートするAisa。素晴らしいバックバンドだ。

二部構成の後半は、尾崎亜美のピアノ弾き語りで開始。休憩を挟んで、声の調子はさらに良くなっている。そして、小原礼と2人で「オリビアを聴きながら」。これは泣かせる。そこに是永巧一を加えた3人での「あなたの空を翔びたい」も良い雰囲気だ。

バンドが戻り、ライヴも終盤。本編最後は「Smile」。そして、アンコールは、超鉄板曲「天使のウィンク」で会場総立ち。「待っていてね」で全編終了。

ご本人も言っていたが、声は出ていたものの、高音のコントロールなどテクニック的なところは、まだ完璧に戻っていない感じもあった。が、こちらが飛ばし過ぎを心配するほど声を張る姿は感涙もの。不思議ちゃん系の発言とは裏腹に、ロック魂も秘めた才人だと改めて感心したのである。


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”A Hauntoutg out Venice”23.9.16

Kenneth Branaghが監督し、自ら主役の名探偵 Hercule Poirotを演じた作品を観てきた。”Murder on the Orient Express”、”Death on the Nile”に続く、シリーズ3作目ということになる。邦題は「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」

Agatha Christieの邦訳作品は、ミステリ、非ミステリ、戯曲まで、完全に読破していると自負しているのだが、タイトルを聞いたときには、原作が何なのか、まったく見当が付かなかった。予告編では、禍々しい心霊現象がテーマになっているように見えるが、そのようなChristie作品には心当たりが無い。が、調べてみると”Hallowe'en Party”が原作だという。???? これは、訳が分からない。原作はロンドン郊外の田舎町で起こる、オカルト風味は皆無の作品だ。とんでもない改悪がなされている予感しかしない…

果たして、映画は、その予感を(悪い意味で)遥かに超えるものだった。これまでの2作も、様々な改変を加えていたが、物語の肝の部分は活かしていた。しかし、今回は、原作から、登場人物の名前とちょっとした小道具(リンゴ食い競争とか庭園とか)が引用されているだけで、舞台も、ストーリーも、トリックも、全く別の物語りになっている。これには絶句…

純粋にミステリー映画として観れば、ちょっと演出に凝りすぎの感じはあるが、出来の良い作品だと思う。ホラー演出の手際も良い。しかし、これを、”based on 'Hallowe'en Party' by Agatha Christie”と言われれば、Agatha Christieファンとしては、認めたくない作品だ。やはり、彼女の作品の映像化は、現在、NHK BSプレミアムで絶賛再放送中のDavid SuchetがPoirotを演じたTVシリーズが最高峰なのだ。

英国演劇界で頂点を極め、映画界でも俳優及び監督として成功を収めたKenneth Branaghが、その名声と財力にものを言わせて、「俺様なら、こう作る」と手を付けた映画化。前2作の好評を受けて、原作をさらに改変しても大丈夫と自信を付けてしまったのかもしれない。彼が、「Curtain」の映画化に触手を伸ばさないことを願うばかりだ。



ただ、秋の行楽シーズンと言うには、残暑が残り過ぎだと思う、今日この頃です。