IN/OUT (2017.12.10)

冬の矢野顕子強化月間のため、先週末は長野、今週末は郡山と遠征が続き、来週、再来週も予定あり。普通に暮らしていると訪れる機会の無い地方都市を歩くのも、楽しみの一つです。


in最近のIN

"Murder on the Orient Express"17.12.9

Agatha Christieの有名ミステリの映画化作品を観てきた。邦題は「オリエント急行殺人事件」。原作は、私が小六か中一の頃、自分のお小遣いで初めて買った文庫本=大人の本、として個人的に印象深いものだ(その後、Christieの全作読破へと進む)。また、映画化作品としては、1974年のSidney Lumet監督版も有名だ。

今作の監督は、Kenneth Branagh。彼自身が、主人公の名探偵 エルキュール・ポアロを演じている他、Johnny Depp、Penélope Cruz、Michelle Pfeiffer、Judi Dench、Willem Dafoe等、錚々たる豪華俳優陣がオリエント急行の乗客として出演。この作品は、探偵と被害者以外全員が容疑者で、脇役がいないため、豪華キャストの共演ということになるのだろう。1974年版も、Ingrid BergmanやSean Conneryをはじめ、当時のトップスターが揃った豪華作だった。

映画の冒頭は、原作にないシーン。オリエント急行に乗り込む前にポアロが解決した事件なのだが、舞台がエルサレム。しかも、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三大宗教が絡んだ事件になっていて、偶然ではあるが、Trump大統領の首都認定が取り沙汰されている今、タイムリーなことになっている。ここで、シンメトリーに徹底的に拘るポアロの性格を描くところが、今回の脚本の工夫の一つだ。

そして、もう一つ、原作とも1974年版とも違うのが、舞台を、雪に閉じ込められた列車という密室ではなく、雪崩で脱線し鉄橋上で立ち往生した列車にしたこと。この改変で、登場人物達は列車外に出ることも可能になり、これが大詰めの謎解きシーンの見事な画面構成(有名な絵画からの引用)につながっている。このシーンは、舞台俳優としても活躍するKenneth Branaghの真骨頂。見事な演出と演技だ。

ちょっとしたアクションシーンを挿入するなど、本格ミステリにありがちな中だるみを回避しながらも、守るべき所は守っていて、原作が好きな人にも受け容れられる映画に仕上がっていると思う。

ただ、唯一、私が気に入らないのは、Kenneth Branaghが演じるポアロの容貌だ。私は、ポアロに対して、黒髪の小男という印象を持っているので、彼じゃ、ちょっと堂々とし過ぎだと思う。1974年のAlbert Finneyが演じたポアロの方がイメージに近い(ただ、髪型が横分けだったのが残念。あれで、シンメトリーを愛するポアロらしいセンター分けだったら、私のイメージ通りなのだが)。しかし、Kenneth Branaghは、すっかりポアロ役が気に入ったらしく、次回作として企画されている「ナイルに死す」でも、ポアロ役を演じるという噂も聞こえてくる。まあ、企画が実現したら、彼がポアロ役を続投したとしても、確実に観てしまうのだが。



ただ、どの町も、駅周辺は、全国チェーンの飲食店や雑貨店が並ぶ代わり映えしない風景という状況が、この10年ぐらいで一気に加速しているような気もします。