IN/OUT (2023.9.3)

八ヶ岳高原夏の矢野顕子強化月間の一環で、八ヶ岳高原へ行ってきました。日頃、完全なインドア派の日々を送っている私には、公演前に音楽堂の周囲を散策することが、年に一度、自然を体感する機会にもなっています。八ヶ岳高原


in最近のIN

”Karla Bonoff & Livingston Taylor” @ ビルボードライブ東京23.9.1

ビルボードライブ東京ウェスト・コースト系シンガー・ソング・ライターのKarla BonoffとLivingston Taylorが共演するライヴを観に、ビルボードライブ東京に行ってきた。Livingston Taylorについて事前知識は無かったのだが、James Taylorの弟である。Jamesが1948年生まれ、Livingstonは1950年生まれ。

Karla Bonoffの1979年のアルバム「Restless Nights(ささやく夜)」のジャケットと、そのA面1曲目「Trouble Again(涙に染めて)」は、当時、強烈に印象に残っている。正直、それ以外の収録曲に特に感心した記憶は無いし、その後の彼女の活動を追っかける事も無かった。そもそも、あの頃の私は、ウェスト・コースト・サウンドからは、むしろ距離を置いていたはずだ。何が、そんなに印象に残ったのか、自分でも謎である。せっかくの来日の機会、その謎を確かめるべく、ビルボードライブ東京へ。

ステージは、バック・バンド無しの完全に2人だけ。まずは、2人揃って登場し、ギター弾き語りで、Livingston TaylorがメインでKarla Bonoffがコーラスで1曲。メインとコーラスを入れ替わって1曲。

Karla Bonoffが退場し、ここからLivingston Taylorのソロ・ステージ。毒気の無いウェスト・コースト・サウンドのギター弾き語り。偉大過ぎる兄を持った屈託のようなものも感じられず、いかにもご陽気な白人男性という雰囲気だ。良く言えば、聴きやすいが、まあ、個人的には、守備範囲外かな。

数曲、演奏した後、Karla Bonoffが戻り、2人でJames Taylorの「Carolina in My Mind」。ここで兄の七光りを使うのは正解だな。そして、Livingston Taylorは退場。

Karla Bonoffのソロ・ステージ、1曲目が「Trouble Again」。冒頭の響きだけで、一気に1979年にタイムスリップした気がする。やはり、しっかり耳に染みこんでいる曲だ。彼女の声は当時と変わっていない。透明感があって綺麗なのだが、どこか、翳りを含んでいる。その声質と、このメロディー、そして、シンプルなギター伴奏が一体となって、独特の求心力を持って迫ってくる。極私的名曲だと改めてしみじみ。それ以降の彼女のソロ・パフォーマンスも佳曲揃いだし、その声質も素晴らしいのだが、そこまで超のめり込むという感じじゃ無いかな。

最後に2人揃って歌い、アンコール・ラストは「Over the Rainbow」。

全体的には、(私には)印象の薄い感じのライヴだったが、「Trouble Again」1曲で、1979年に戻れた夜だった。


”Asteroid City”23.9.3

Wes Anderson監督の新作を観てきた。

人口87人の、米国西部の砂漠の街”Asteroid City”。そこで、ジュニア宇宙科学賞の授賞式が開催され、全米から天才少年少女とその親が集まっている。しかし、授賞式の最中、UFOに乗った宇宙人がやって来て… という物語が展開する。と言っても、そこはWes Anderson。宇宙人来襲も、スペクタクルとは無縁のオフビートな描き方だ。さらに捻くれていることに、このストーリーは、新作演劇の製作過程を紹介する1950年代のTV番組の中で採り上げられている戯曲の映像化だという入れ子構造になっている(TV番組のパートは、当時のTV画面サイズのモノクロ映像)。

ストーリー展開は、やや単調。あくまでも、ちょっとだけ変わった登場人物達の会話劇を楽しむという感じ。実は、1950年代の米国演劇界を知っていれば知っているほど、面白い内容らしいのだが、私には読み解く知見は無い。ただ、変人達を演じているのが、Scarlett Johansson、Tom Hanks、Edward Norton、Tilda Swinton、Jeff Goldblum、Adrien Brody、Willem Dafoe、Margot Robbie等々。超豪華スター達を実に贅沢な無駄遣いしているという感じもするが、皆、Wes Anderson作品の一部になれることを楽しんでいるのだろうな。これだけの俳優陣を眺めるだけで眼福である。特に、Marilyn Monroeを彷彿とさせる役柄のScarlett Johanssonの存在感と、まさかの役柄を演じるJeff Goldblumが秀逸。

そして、いつものように、徹底的に拘った画面構成と色彩設計が、まさに「ウェス・アンダーソンすぎる風景」のてんこ盛り。これが楽しい。そして、劇中の印象的な台詞 "You can’t wake up if you don’t fall asleep(起きたいなら眠れ)”から、”Asteroid City”での出来事のような夢を経験してこそ、現実と対峙できるというメッセージが浮かび上がってくる。実に小粋な映画だと思う。



八ヶ岳高原綺麗な花が咲いているなと撮影し、後でGoogle先生に尋ねたところ、致死性の猛毒を持つことで有名なトリカブトでした。普通に群生しているんだ…。自然は怖い。やはり、インドア生活の方が性に合っていると思う、今日この頃です。