IN/OUT (2022.9.25) |
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三連休が連続する9月、それに合わせるかのように台風も連続してやって来ました。が、私的には、そこまで大きな影響は受けずに済みました。この週末、関西に行く用事がありましたが、新幹線では無く飛行機にしていたのもラッキーでした。 最近のIN「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション」@ 国立新美術館 (22.9.19)ドイツのケルン市が運営するルートヴィヒ美術館(Museum Ludwig)のコレクションから、152点の名作絵画・写真・彫刻を展示する展覧会を観に、国立新美術館に行ってきた。 ルートヴィヒ美術館は、ケルンの弁護士 ヨーゼフ・ハウプリヒ(Josef Haubrich)が寄贈したコレクション、及び、美術コレクターの ルートヴィヒ夫妻(Peter & Irene Ludwig)が寄贈したコレクションを基に1986年に開館した、20世紀から現代までの美術作品を収集・紹介する美術館。市民コレクションが基とは言え、Pablo Picassoの名品、ポップアートのコレクション、ロシア・アバンギャルドの作品群などの収蔵品は、ヨーロッパでも随一のものとして名高いそうだ。 今回の展覧会に貸し出されたコレクションの質・量も凄い。ドイツ表現主義や新即物主義の作品群、Pablo Picassoの名作8点、Andy Warhol やRoy Lichtensteinのポップアート、さらに、写真や彫刻もあり、これだけ貸し出してしまうと、本国の美術館はスカスカになっているのでは?と心配になるほどだ。 逆に言うと、やや焦点が絞り切れていない、音楽で言えばオムニバス盤的な感じもある。そんな中、個人的にはEwald Mataréの「眠る猫」という木の彫刻が、かなり単純化した造形にもかかわらず、どう見ても眠っている猫の曲線になっていて、やたらと可愛いのが印象的。あと、モノクロ写真の数々が、素晴らしい構図と陰影のものが多く、見応え有り。 オーディオガイドは600円。ナビゲーターはトラウデン直美。お父様がケルン出身だそうで、この展覧会にはピッタリだし、滑舌も良いのだが、ナレーションのテクニックと肝心の内容については、改善の余地有りだと感じた。 「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」@ 国立新美術館 (22.9.19)国立新美術館では、もう一つ、「もの派」を代表する美術家、李禹煥(リ・ウファン / Lee Ufan、1936年生)の大規模な回顧展を観てきた。 李禹煥は韓国の人だが、1956年に来日。日本大学で哲学を学び、日本美術における「もの派」を牽引した作家であり、国際的に高い評価を受けている。「もの派」とは、石、木、紙、金属などの「もの」を、ほとんど手を加えない形で組み合わせて作品にするという、1960年代末から1970年代中期頃の日本の現代美術の動向のことだそうだ。 この展覧会は、1960年代から最新作まで、彼の仕事を網羅的に紹介するもので、彫刻、絵画、さらに野外に設営された大型展示まである。 彼の作品はこれまでも目にしたことはあったが、いかにもの現代美術という感じで、正直、あまりピンと来なかった。しかし、今回、オーディオガイド付きで時系列に整理された展示を観ることで、一気に印象が変わった。「関係項」と名付けられた立体造形のシリーズなど、一見、単に金属と石が置いてあるだけだが(まさに、「もの派」)、オーディオガイドでヒントをもらうと、途端に、無機物(と、その周囲の余白)が語りかけてくるようだ。このオーディオガイドのナビゲーター、中谷美紀のナレーションは、とても説得力があって好印象。さらに、キュレーターや李禹煥自身による解説もあり、素晴らしく充実している。それでいて、自分のスマートフォンで聴く仕組みで無料。実にありがたい。 最後の方の展示は、壁に直接描かれていて、まさに、美術館と一体化した作品になっている。12月からは、兵庫県立美術館に巡回するそうなので、そちらでは、どのような展開になるのか、機会があれば観てみたいと思う。 という訳で、「ルートヴィヒ美術館展」よりも、こちらの方が、大いに刺さったのである。 最近のOUT"Liquid Sky" in「奇想天外映画祭」@ K's cinema (22.9.18)新宿 K’s cinemaで開催中の「奇想天外映画祭」の目玉作品、1982年制作のSF映画を観てきた。 この作品の公開時には、いわゆるサブカル好きの必修科目的な取り上げられ方をしていたが、へそ曲がりの私は未見のままだった。その後、カルトSF作としての評価が固まっても、観る機会がないまま2022年になったのだが、こうやって映画館で観ることができて、感慨深い。 ニューヨークにUFOが現れる。ヘロインによる陶酔がその目的。彼らは、人間の性行為の絶頂時にヘロイン同様の脳内物質が分泌されることに目を付け、ファッション・モデルの身体を支配する。身体を乗っ取られたモデルと性行為した人間は、脳内物質の分泌と同時にそれを吸い取られ、死ぬことになる(モデル自身は不感症なので、死なないという設定)。 と、ストーリーはあるのだが、これが分かりにくい。台詞も演出も、まったく整理されていない。映画としての出来は最悪だと思う。毒々しい色彩設定と、チープな特撮、全編に流れる安っぽいシンセ・サウンド。これらが、当時のサブカル好きにハマった事は分かるが、私の理解を超えている。正直、過去最高に眠気を催した映画だ。 主演のAnne Carlisleは、主役の女性モデルの他、男性役との一人二役を演じ、当時のDavid Bowie的なメイクで頑張っていると思う。その役柄や、彼女のペントハウスに集う業界人達の怪しさなどに、社会批判やジェンダー問題への視点を感じた評論家が高い評価をしたのだと思うが、それこそ、評論家の我田引水。結局は薄っぺらい作品だと思うのだが… なんとなく特別な作品と思い込んでいたものを、実際に観てガッカリというのは、ほろ苦いものだ。あるいは、自分の感性の衰えのせいだとしたら、さらに苦みは増すが、そこは、あまり深掘りしないことにしよう。 国立新美術館に行った日は、ちょうど「六本木アートナイト2022」の開催期間。その一環で、美術館入り口付近には、村上隆がキュレーションした五体のドラえもんのバルーン作品が展示されていました。町を挙げてのアートへの取り組みというのは素敵なことだと思うし、そこにドラえもんが登場することも良いとは思うのですが、個人的には、村上隆は、いささか苦手です(と言いつつも、せっかくなので写真は撮影)。 |