IN/OUT (2021.8.15)

モデルナ製ワクチン接種、第2回目完了。これを書いている時点で、接種から5時間経過。副反応は、腕の疼痛と37.0度の微熱。前回の経験だと、これからが副反応本番ですかね。


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「新日本フィル・シンフォニック・ジャズ・コンサート Special Guest 上原ひろみ」@すみだトリフォニーホール21.8.9

すみだトリフォニーホール新日本フィルハーモニー交響楽団が、上原ひろみをゲストに迎えジャズの作品を演奏するというコンサートを観に、すみだトリフォニーホールに行ってきた。この組み合わせは、2015年のクリスマス・イヴに観て、素晴らしかった思い出がある。

指揮は、沼尻竜典。第一部はオーケストラのみの演奏で、Leonard Bernsteinの「Candide」序曲、上原ひろみの「Legend of the Purple Valley」、そして、Leonard Bernsteinの「Symphonic Dances from 'West Side Story'」。オーケストラの技量の高さが際立つ演奏だが、やはり特筆すべきは、上原ひろみの作品を「弦楽合奏版」にアレンジした2曲目だ。一曲目を終えたところで、管楽器やパーカッションなどの演奏者が捌けて、弦楽器のみで演奏。このチャレンジがとても効果的だ。元々、この曲は、お洒落アレンジをしたくなるメロディーなのだろう(会場で配られた冊子でも言及されているOlivia Foschiによる女声ヴォーカル版も渋かった)。

そして、休憩中に舞台中央にグランドピアノが設置され、第二部、真っ赤な衣装でひろみ嬢登場。演奏されたのは、彼女の作品「Brain Training」、「Reverse」、「Step Forward」、「Move」。ひろみ嬢は、オーケストラとの共演という、奔放なアドリブを繰り出す訳には行かない状況でも、高速プレイに肘打ちと、見せ場を作る。それでいて、オーケストラとの一体感もしっかりと感じさせるプレイ。両者の高度な演奏技能と、深い音楽的理解・共感があってこその演奏だろう。

素晴らしい演奏を堪能しながらも、ひろみ嬢目当てとしては若干の物足りなさもあったなと我が儘な事を思っていたら、カーテンコール後、楽団員が全員捌けても鳴り止まない拍手の中、ひろみ嬢再登場。ソロでしっとり「Blackbird(The Beatles)」。オーケストラのメンバーが座っていた椅子が残るすみだトリフォニーホールの雰囲気のある舞台から、PA無しの生音のピアノが響く、夢のような空間だ。さらに、アンコールはもう1曲、9月8日発売の新アルバム「Silver Lining Suite」の収録曲「ベラ・デル・ドゥエロ」。このアルバムに参加している西江辰郎とビルマン聡平、二人のヴァイオリニストが参加する楽しくも激しいプレイ(ブルーノート東京で披露されたクインテットから半分が参加したということだ)。圧巻の演奏に、当然のスタンディング・オベイション。これを観られて、こちらも完全燃焼だ。

因みに、私の席は、1階の、前後左右、ほぼ中央。音響的にはベストの場所で喜んでいたのだが、開演直前、目の前の座席に巨体・巨頭の男性が…。結果、第一部では指揮者が、第二部ではピアノが、極めて見づらいことになってしまったのが、やや残念。


”Adam”21.8.14

モロッコ映画を観てきた。邦題は「モロッコ、彼女たちの朝」。日本で、モロッコの長編劇映画が公開されるのは、これが初めてということだ。

舞台は、カサブランカの旧市街。大きなお腹を抱えて職探しで街を彷徨う女性と、女手一つで娘を育てながらパン屋を営む女性。二人の人生が交錯し、妊婦が束の間の心の平穏を得る一方、夫の死後、心を閉ざしていたパン屋の女性の気持ちも徐々にほぐれていく。そんな姿を、あくまでも静かに、丁寧に描いていく。

背景にあるのは、モロッコにおける女性の立場の厳しさだ。未婚女性が妊娠すると刑事罰の対象となるのだ(男性側は罪に問われない)。当然、中絶も違法。この映画の主人公のような未婚の妊婦が病院で出産すれば逮捕される恐れがあるし、産まれた子供は、一生、虐げられる宿命を負うことになる。また、もう一人の主人公のような、夫と死別した女性の社会的地位も極めて低いという。さらに、女性は埋葬や葬儀に参列できない(例え、それが夫の葬儀であっても)という伝統があるそうだ。

この作品が長編デビューとなるMaryam Touzani監督(彼女は、ロンドンの大学で学んでいる)は、そのような理不尽を声高に主張することはない。欧米やアジアの町並みとは全く違うカサブランカの風景と色彩、見たことの無いパン、独特の音楽。そういったエキゾチックな要素を散りばめながら、映画の展開はあくまでも静謐。それぞれ問題を抱えた二人の女性の心の動きを丁寧にすくい取って行く。それでも、しっかりとメッセージが伝わってくるのは、監督の力量と俳優陣の存在感だ。

派手さは皆無だが、とても良心的で、しみじみと沁みる映画だ。タイトルの「Adam」が何を意味するのかが分かるのは映画の終盤。これも、深いのだ。

あと、この映画を観た人は皆、劇中に出てくるモロッコ伝統のパンケーキ「ルジザ」を食べてみたくなると思う。実に美味しそうなのである。



明日のさらなる発熱を予想すると憂鬱ではありますが、モデルナ製ワクチンの方が、デルタ株への有効性は高いらしいという情報に接し、一時的な副反応でリスクが大幅に軽減するのなら、モデルナで正解だったなと、勝ち組の気分でもあります。

ただ、近い将来、ブースター・ショットの必要性が高まるとか、ワクチン接種者であってもウイルスを拡散させる可能性は未接種者と同じぐらいあるなど、新情報を見るにつけ、完全に元の世界に戻ることは、もはやあり得ないことも実感します。