IN/OUT (2018.7.1) |
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まさかの梅雨明け、というか、梅雨打ち切りという感じ。今年の夏は暑くなりそうです。 最近のIN"D'après une histoire vraie" (18.6.29)Roman Polanski監督の新作を観てきた。英語タイトルは"Based on a True Story"。邦題は「告白小説、その結末」。先週観た"Wonder Wheel"のWoody Allenが82歳だったが、今作のPolanskiは84歳。彼もまた、年齢を感じさせない活躍ぶりである。 主人公は小説家の女性。精神を病み自殺した母を描いた私小説でデビューし大きな話題となった。しかし、次回作は身を削る私小説では無く、完全なフィクションを書こうして執筆に苦しんでいる。そんな彼女の前に一人の女性が現れる。本音で話し合える彼女はやがて、主人公の家に同居し、その生活をコントロールし、次回作の執筆に集中させようとする。 主人公の作家を演じるのは、監督の奥様でもあるEmmanuelle Seigner。彼女の前に現れた謎の女性がEva Green。両者の存在感が凄い。特にEva Greenは、元々、超が付く美人だが、あまりにも妖艶で善人には見えない、魔性とか悪女とかという言葉が似合う人だと思うのだが、この役柄にドンピシャである。 そのEva Green演じる女性の目的は何なのか、映画は、徐々に異様な展開を見せ、サスペンスが高まる。さすがPolanskiという感じの怖さだ。そして、ラストで驚くべき真相が明かされるのだが、その描き方がさり気ないため、一瞬、何が起こったのか?と混乱する(スッと納得できる人って少ないんじゃないかな)。そして、見終わった映画をじっくり思い返すと、伏線の数々に思い当たり、ようやく合点がいくという感じ。もう少し、親切な作りにして、観客をビックリさせて終わった方が印象的だったと思う。ただ、そうしたら、ラストの怖さの意味も薄れてしまったかもしれない。ラストシーンには、"Based on a True Story"というタイトルが含んでいた恐怖が凝縮されていて、真相を理解してから思い返すと、ジワジワ怖いのだ。Polanski、手練れである。 "Brigsby Bear" (18.6.30)米国の人気TV番組"Saturday Night Live"の製作陣が作った映画を観てきた。 主人公は赤ちゃんの頃に誘拐され、人里離れたシェルターに監禁されたまま、誘拐犯の夫婦を両親と信じて25年間を過ごしていた。シェルターの外は毒ガスに満ちていると信じ込まされ、外界とは隔絶された25年間、クマが銀河を駆け巡る大冒険を繰り広げる教育的特撮テレビ番組 "Brigsby Bear"だけが楽しみだった。しかし、その番組は誘拐犯の男が彼のためだけに作った偽番組だったのだ。25年ぶりに警察に救出された彼は、本物の家族と暮らすようになるが、現実に馴染むのは難しく、"Brigsby Bear"の続きが観たくて堪らない。 重いシリアスドラマにもなり得る題材に、クマが活躍する特撮番組を加えるという捻ったアイディアだが、これが予想外の感動作。ラストシーンには涙腺決壊である。偽の両親以外の人と関わったことがなく、外の世界を知らずに育った主人公が、様々な「初めて」を体験するカルチャーギャップ的なところで笑わせるあたりは、まあ、普通のコメディである。しかし、主人公が、"Brigsby Bear"の続編を自主製作しようと奮闘し始めるところから、とても良い話しになってくるのだ。 よかれと思って自分の価値観を押しつけようとする父親、いきなり現れた兄に戸惑う妹など、実の家族との関係がぎこちない中で、SF映画好きの友達が出来、この友達がネットにアップした"Brigsby Bear"のビデオが評判を呼び、仲間が集まり、自主映画作りが始まる。そこからは、登場人物全員が、それぞれ素敵な一面を見せてくれるのが、嫌み無しに幸せな気持ちにさせてくれる。 自主映画製作を通じて、彼は現実世界の中に居場所を見つけていく。その過程が実にハートウォーミングに描かれていて、映画好きの人には必見作だ。いや、全ての人にお勧めしたい良作だ。なお、誘拐犯の偽の父親(Bregsby Bearの作者にしてその声優でもある)を演じたMark Hamillが、ラスト近くに実に良い味を出しているのも嬉しい。さすが、Jediだ。 "Solo: A Star Wars Story" (18.6.30)Star Warsのスピンオフ作。人気キャラクター Han Soloの若き日を描いた作品を観てきた。 Soloという名字の由来、Chewbaccaとの出会い、Lando Calrissianとの因縁と、Millennium Falconを手に入れる経緯など、本編のStar Wars Sagaと巧みに整合させたストーリーは見事だ。大胆不敵なアウトローというHan Soloの人物像の原点を納得感を持って見せてくれる。色々と口うるさいStar Warsファンも、納得の脚本だと思う。監督は、名匠 Ron Howard。手堅い演出で大作を見事にマネージしているが、彼の映画界でのキャリアの最初期に、George Lucas監督の"American Graffiti"に俳優として出演していたというのが因縁を感じさせる。 中だるみせずに疾走する物語に、観ている間は熱中するし、ラストの二転三転する駆け引きには唸らされる。ただ、贅沢を言うと、何か、薄っぺらい感覚が拭えない。見終わった後には何も残らない。前回のスピンオフ作"Rogue One"が、そのラストシーンに「なるほど! ここで本編のあそこと繋がるのか!!」という驚きがあったのに対し、今作は本編の設定を再確認するだけ、という感じなのである。 ここからさらに暑くなってくるわけで、やはり、7月の東京でオリンピックを開催するというのは、正気の沙汰とは思えない… |