IN/OUT (2016.12.25)

矢野顕子強化月間も終盤。週末は、宮崎へ行ってきました。かつて、仕事の関係で、ほぼ毎月のように出張していたことがあったのですが、それは、20年以上前。まだ、JRが宮崎空港に乗り入れる前の時代でした。久しぶりの訪問でしたが、相変わらず、雰囲気の良い町でした。


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小坂忠「CHU KOSAKA COVERS」Release Party @ 品川プリンスホテル クラブeX16.12.19

今年でデビュー50周年のシンガーソングライターにして、現役の牧師としても活動し、ゴスペル・シンガーでもある小坂忠の、ニューアルバム発売記念公演に行ってきた。9月に開催された彼の50周年記念コンサートのチケットを取ったものの仕事の都合がつかず、参戦を断念した私には、そのリベンジでもある。

会場は、品川プリンスホテルの、元々は社交ダンスホールだったという円形の会場。そこにステージと椅子を運び込み、キャパは360名。ちょっと、普通のホールとは雰囲気が違って面白い。

まずは、ステージにバンドメンバーが登場。小原礼(ベース)、鈴木茂(ギター)、佐橋佳幸(ギター)、Dr. KyOn(キーボード)、屋敷豪太(ドラムス)、小林香織(サックス)、Asiah(コーラス・小坂忠の娘さん)。超豪華なメンバーである。そして、彼らを紹介するのは、ピーター・バラカン! 彼は、小坂忠の新アルバムのライナーノーツを書いており、今回は、出前DJ的な立場での参加ということで、この後も、小坂忠と掛け合いのMCを披露する。

最後に登場した小坂忠。声もスタイルも、若々しい。今回の新アルバム「CHU KOSAKA COVERS」は、彼の音楽的ルーツとなった名曲のカヴァー集。その収録曲を、そのままの順番で演奏していくのだが、「メンフィス・サウンド」を標榜するこのバンド、面子を考えれば当たり前だが、とにかく上手い。カッコ良い。鈴木茂は、前日、NHKホールでの矢野顕子のコンサートにも出演していたが、TIN PANとしての演奏とは一味違う活躍ぶりだ。Eddie Floydの"Knock on Wood"、The Miraclesの"You Really Got a Hold on Me"などなど、旧くもカッコ良いサウンドが続く。そして、合間に繰り広げられる、ピーター・バラカンと小坂忠の、マニアックな蘊蓄話も楽しい。

生きてるうちに実現して良かったと言う父娘共演 "Unforgettable"(Natalie Coleが、亡き父 Nat King Coleの声と重ねて録音してヒットした曲)や、メンフィス・サウンドの彼らが敢えてモータウンの"You Keep Me Hanging On"をカヴァーするなど、捻りも効いている。

アルバム収録 全10曲を演奏し終わり、十分満足したのだが、ここからが、さらに凄かった。カヴァー曲だけでは終わらず、「ほうろう」、「機関車」、「I believe in you」、「ゆうがたラブ」と、小坂忠自身の名曲を連発。正直、前日のNHKホールの酷いPAで聴いた「ほうろう」よりも、今日の小さなハコで音を浴びた「ほうろう」の方が、遙かにグッと来た(演奏力は、両者とも素晴らしいのは、もちろんだが)。そして、アンコールに「しらけちまうぜ」。最後に、Louis Armstrongの「What a Wonderful World」。構成も見事だ。

二日続けてのTIN PAN系ミュージシャンのライヴだったのだが、その印象は、会場自体やPAに左右されるところも大きいなと感じてしまった。いずれにしても、非常に充実した楽しいライヴだった。


「生頼範義展III THE LAST ODYSSEY」 @ みやざきアートセンター16.12.25

みやざきアートセンター 矢野顕子の公演前日、宮崎に到着し、ホテルに荷物を置いた後、早速向かったのは、繁華街・橘通にあるみやざきアートセンター。昨年亡くなったイラストレーター生頼範義氏の作品展が開催中なのである。

生頼範義と言えば、1980年に"STAR WARS EPISODE V:THE EMPIRE STRIKES BACK"の国際版公式ポスターのイラストを手掛け、他にも「平成ゴジラ・シリーズ」のポスター、平井和正氏の「ウルフガイ・シリーズ」「幻魔大戦・シリーズ」の表紙など(もちろん、写真の「ジュラシック・パーク」の表紙も)、独特の緻密かつ濃い絵柄が印象的だ。1973年から、奥様の郷里である宮崎で暮らしていたそうだ。

みやざきアートセンターでの彼の展覧会は、これが三回目。これまで、制作年度順に行われていて、今回が最終回。主に1985年以降の作品に焦点を当てている。単行本の表紙や映画ポスターの原画。さらには、イラストとは別に、彼がライフワークとしていた油絵の習作などが並ぶ。ちょうど、私が訪れた直後に、学芸員によるギャラリー・トークが始まったので、それを聞きながらの鑑賞となったのだが、これが滅法面白い。解説してくれる人は、元々、宮崎の画廊に勤務していて、19年間、生頼先生の担当者だったということで、思い入れも、裏話もたっぷり。後期の作品に対して画力の衰えをはっきり指摘する率直さもあって、非常に充実した鑑賞となった。

驚いたのは、あれだけ多数の仕事を抱えながら(全盛期には、年間200枚以上の仕事をこなしていたそうだ)、小説の表紙の仕事では、原稿を全て読んだ上で、自分でシーンを選んで作画していたとのこと。平井和正も小松左京も、それで生頼範義に全幅の信頼を置くようになったのだが、時には、小説のネタバレが堂々と表紙になることもあったそうだ。

質・量ともに、非常に充実した展覧会が、地元民の熱意で開催されているのが何とも素晴らしい。受付をはじめ、ギャラリートーク担当以外のスタッフ全員からも、この展覧会への熱意が伝わってくるのだ。

ただ、この質・量の展示をもって、宮崎以外の場所を巡回することは、出品作品の権利関係が複雑過ぎて、難しいそうだ。しかし、嬉しいことに、最近、財団が設立され、彼の作品の管理を行うようになったので、その状況も変わる期待があるとのこと。2018年には、東京でも彼の回顧展が開催できる目処がついてきたそうだ。それはそれで楽しみだが、やはり、地元のゆかりの人による熱いギャラリートークが聞けた今回の体験は貴重だった。



展覧会鑑賞後は、久しぶりの宮崎で楽しみにしていた地鶏のもも焼きを堪能。都内でも宮崎料理の店は増えてきたけど、やはり、本場で食べる野趣溢れる炭火焼きは美味かった。一応、クリスマス・イヴにチキンのディナーなのだ。