IN/OUT (2016.2.14)

春一番と共に急に気温が上昇。汗ばむ陽気の週末になりました。本当に寒暖の差が極端な、この冬です。


in最近のIN

"Steve Jobs"16.2.13

Steve Jobsを描いた映画を観てきた。彼を演じるのはMichael Fassbender。監督はDanny Boyle。

正直、私は、Steve Jobsの事が、あまり好きでは無い。昔から、クローズドだが美しいMacの世界よりも、オープンで混沌としたPCの世界の方を好ましく思っている。Jobsの事をビジネス上の天才だとは認めるが、同時に、ヒッピー上がりのエキセントリックな暴君で、絶対に友達にも同僚にも上司にもしたくないという印象を持っている。しかし、この映画は、Danny Boyleが監督しているという事と、Macintosh、NeXT、iMacの三つの商品の発表会に的を絞っているいう事を聞いて、興味を惹かれたのだ。

観てみて驚いた。さすがDanny Boyle。予想の斜め上を行く大傑作だった。私が、Macintoshも、NeXTも、iMacも(さらに言えば、Apple IIも、Lisaも)リアルタイムで知っているというのも、映画を楽しむ上で大いに役立ったと思うが、純粋に映画としての熱量が凄い。

その一因は、もちろん、Michael Fassbenderの熱演だ。人格的には破綻していると言えそうなJobsを見事に体現している。しかし、何よりも素晴らしいのは、舞台を三つの商品発表会、それも、(伝説的な)Jobsのプレゼン本番ではなく、発表会直前に絞ったという設定の冴えだ。緊張感漂う舞台裏を、Danny Boyleのロック・ミュージック的な演出で描くことで、圧倒的なテンションとなっている(ただし、物語を強力にドライヴさせるため、背景説明に時間を割いておらず、予備知識の無い人には、エキセントリックな主人公が叫ぶだけに見えてしまうかも…)。

そして、ラストのあの演出。それまで、単なるサイドストーリーだと感じていた娘との関係が、たった一瞬の映像で見事に涙腺決壊装置となる、まさに映画体験。素晴らしい演出だ。これには興奮した。

もちろん、昔から、この業界の動きを楽しみに追っかけてきた身としては、Steve Wozniakの描かれ方も楽しかったし、(悪人とされる事が多い)John Sculleyのことをフェアに扱っていたのも好感が持てた。

ラストに流れるのは、Bob Dylanの"Shelter from the Storm"。Steve Jobsが大好きだったミュージシャンなので、当然の選曲ではあるのだが、ビジネス界の伝説とは真逆の人物を描いた"St. Vincent"のエンド・クレジットと同じというのは、なんだか面白いな。


「清水ミチコ 一人フェス 2016」 in 人見記念講堂16.2.14

清水ミチコのライヴを観に、昭和女子大学 人見記念講堂に出かけてきた。この公演は、昨年末、仙台 電力ホールで観ているが、東京地区での追加公演が決まり、性懲りも無く、再び観ることに。

基本的なフォーマットは、仙台で観た時と同じだが、「Star Wars」、「センテンス・スプリング」、「ゲスの極み乙女。」など、最新ネタが投入されている。そして、年末の武道館公演の好評を受けての追加公演ということで、清水ミチコのテンションも高い。さらに、人見記念講堂の音響の良さも加わって、面白さ倍増。再見して良かった。

客席からリクエストを募る場面では「野村!」、「誰だよそれ!」という、清水ミチコ本人も苦笑してしまう謎のやり取り。やっぱりライヴは楽しいなあ。

そして、今回もまた、「ウサギとカメ - 松任谷由実バージョン・中島みゆきバージョン、SEKAI NO OWARIバージョン」や「作曲法」ネタで、清水ミチコの音楽性の高さとセンスの良さに感嘆。TVでしか彼女を知らない人、特に音楽好きの人には、是非、ライヴを観てもらいたいものだ。



残念ながら、オープンで混沌とした世界が好きなのは、いわゆるオタク。世の中の大多数の人は、クローズドであることの気楽さの方に流れるというのは、時代が証明したわけで…。やはり、Jobsのセンスは鋭かったのかなぁ。でも、やっぱり、100%認める気にはなれないなぁ、と愚考する今日この頃です。