IN/OUT (2015.9.6)

一旦、下がった気温も、少し戻ってしまったようで、やはり、彼岸までは暑さは続きそうな今日この頃。でも、この雨の多さは、ちょっと普通じゃ無い気候という気もします。


in最近のIN

"Wild"15.9.5

Reese Witherspoon主演の映画を観てきた。シンプルな原題に対し、邦題は「わたしに会うまでの1600キロ」。

主人公は、最愛の母の死のショックから、ヘロインとセックスに溺れる自堕落な生活を送るようになり、離婚。そうした生き方をリセットすべく、"PCT"を踏破する一人旅を決行する。PCTとは、"Pacific Crest Trail"の略で、メキシコ国境からカナダ国境まで米国西海岸を縦走する長距離自然歩道。Wikipediaによれば、実際に、毎年300人ほどの人々が、4~6ヶ月かけてPCT全区間を歩き通すことに挑戦し、6割ほどが成功するらしい。つまり、4割の人は、途中でギブアップする、苛酷な道のりということだ。

映画は、ドキュメンタリー・タッチで主人公の旅を描きながら、追想シーンが挟まれる構成。始まってからしばらくは、彼女の身に起こった事を時系列で把握するのに苦労する。彼女が送っていた自堕落な生活というのが、予想以上の自堕落ぶり(映倫区分は R15+)で、引いてしまうほど。また、PCTは「自然歩道」という言葉から日本人が想像するようなノンビリしたものではなく、まさに荒野。命がけの旅なのだ。邦題は「自分探し」をテーマにしたユルい作品のような雰囲気だが、実際には、原題の"Wild"の方が遙かにピッタリくる映画だ。

見所は、プロデューサーにも名を連ねているReese Witherspoonの身体を張った演技。ほとんど汚れ役と言っても良いような役柄を演じきっている。"The Good Lieの時にも感じたが、良い年の取り方をしている女優さんだ。さらに、追想シーンで彼女の母親役を演じているLaura Dernの存在感も見応えがある。この演技で、それぞれ、アカデミーの主演女優賞と助演女優賞にノミネートされたというのも納得の演技だ。

この映画の原作は、米国のエッセイスト/小説家 Cheryl Strayedの自叙伝。恐らく、文章で読むと、露悪的というか、偽悪的な部分と、自己啓発っぽい部分が鼻につくタイプの作品ではないかという気がする(未読なのに申し訳ないが)。ただ、この映画は、そうした「面倒くささ」を感じさせない力強い演出が、好印象だ。しかし、エンディングのクレジットに、原作者自身の写真が映る。ここに、原作者の自己顕示欲を感じてしまい辟易してしまうのは、偏狭な見方かなぁ。


"St. Vincent"15.9.5

Bill Murrayの主演作を観てきた。邦題は「ヴィンセントが教えてくれたこと」。しかし、この映画の肝は、聖人を示す"St."なのだ。それは、映画を観れば自明のことなのに、このユルい邦題。私が嫌悪するタイプの馬鹿邦題だ。

それはさておき、Bill Murrayが扮するのは、アルコールとギャンブルが好きで偏屈な不良老人。隣に引っ越してきたシングル・マザーから、12歳の息子の面倒を見ることを頼まれ、嫌々ながら(時給交渉の末)引き受ける。

無邪気な少年と、人生に疲れた嫌われ者の老人との心の交流、と言ってしまえば陳腐だが、中々どうして、ウェル・メイドな人情コメディだ。クライマックス・シーンでは落涙必至。

映画を支えるのは、Bill Murrayの存在感だ。破天荒な不良老人を演じられる役者さんは多そうだが、たいていは、単に粗暴なだけになってしまいそうだ。Bill Murrayの場合、そこに「情けなさ」が漂うのが持ち味だ。若い頃のコメディアンとしてのBill Murrayはあまり好きじゃなかったのだが、老人になればなるほど(と言っても、まだ65歳だが)、良い感じに枯れてきて、「情けなさ」にも磨きがかかってきたと思う。

子役のJaeden Lieberher君、シングル・マザー役のMelissa McCarthy(今や、ハリウッドで一番人気のコメディエンヌだ)も、それぞれ適役。さらに、ロシア人娼婦に扮したNaomi Wattsの演技が、強烈な破壊力。本来、美人女優さんのはずなのに、凄い。やはり、こういう人情コメディは、芸達者が揃ってこそだ。

もう一つ、この映画で感心したのは、エンドクレジットだ。Bob Dylanの名曲、"Shelter from the Storm"が流れる中、Bill Murrayが実に良い味わいを見せてくれる。映画の余韻に浸るのにピッタリ。単にキャスト・スタッフの名前がダラダラと流れるだけの芸の無いクレジットの映画ばかりの中(Jackie ChanのNG集という、例外はあるが)、この演出は光っている。



Windows 10に続いて、Skylake世代のIntelプロセッサが登場し、そろそろ、次の5年ぐらい使い続けられそうなPCを組むのに良いタイミングになったような気がしてきました。決して、今のPCが性能的に足りないという訳じゃ無いので、物欲は抑えなければ、とは思っているのですがねぇ…