IN/OUT (2016.1.10)

正月明け、4日からフルで一週間、普通に仕事というのは、やはりキツいですね。


in最近のIN

Terry Bozzio Artwork Stage Set @ ビルボードライブ東京16.1.4

Terry Bozzioのソロ公演を観に、ビルボードライブ東京へ行ってきた。

Frank Zappa Band、U. K.、Missing Personsなどで活躍したドラマー。米国の雑誌"Rolling Stone"が選ぶ「史上最も偉大なドラマー100人」で5位にランクされる実力者である(1位はRushのNeil Peart。因みに、私が一番好きなドラマー Bill Brufordは6位。上原ひろみとトリオで演っているSimon Phillipsは17位。)。私は、U. K.時代に知ったのだが、現在は、日本のレコード会社と契約。奥様も日本人で、娘さんはAldious(日本のガールズ・ヘヴィメタル・バンド)で、やはりドラマーをやっているという親日家である。今回は、バックバンド無し。ドラムのみのソロ公演。

ただし、単なるドラムじゃない。バスドラだけでも8台。さらに周囲を無数のタム、ハイハット、ゴングなどが取り囲む、まさに「要塞」と呼ぶにふさわしい、巨大かつ異形のドラム・セットを操るのである。また、ステージには、要塞の他に、彼自身の手によるイラスト風の絵画も飾られている。ドラマーかつペインターというと、矢野顕子トリオのドラマー Chris Parkerを思い出すが、個人的には、絵画に関しては Terry Bozzioの作品の方が好みだな。

「要塞」を写真で見て以来、一度、ライブで観たいと思っていたのが、実現。彼のソロ公演を観るのは、これが初めてだ。果たして、ドラマー一人でライヴが成立するのかという不安もあったのだが、そのテクニックは想像以上だった。多数のバスドラやタムは、丁寧にチューニングされていて、ちゃんと音階を奏でることが可能。足でベースラインをキープしながら、タムやシンバルを高速で操る。そこから繰り出される音は、パーカッショニストとドラマー、合わせて三人ぐらいが一緒にプレイしているようだ。

もちろん、ちゃんとしたメロディー楽器やヴォーカル無しだと、単調に感じるところもあったのだが、あれだけ巨大なドラムセットを全て使いきっての演奏は最後までハイテンション。いやぁ、凄いものを見せてもらった。

演奏の合間に、ドラム・プレイのテクニカルな解説を丁寧にしてくれたり(私には、良く分からないのだが、会場にはドラマーの人も多く聞きにきていたようだ)、娘さんが所属するバンドのCDを嬉しそうに紹介したり。かなり癖のあるバンドでプレイしてきた人だが、ご本人は、とても人当たりの良い感じだった。


"Monsters: Dark Continent"16.1.9

ハリウッド版ゴジラの監督、Gareth Edwards(今年公開予定の"Star Wars"のスピンオフ作品"Rogue One: A Star Wars Story"の監督にも抜擢されている)の出世作"Monsters"の続編を観てきた。本作ではGareth Edwardsは製作に回り、監督は、新人Tom Green。邦題は「モンスターズ 新種襲来」

前作が、怪獣を背景にしたロードムーヴィーという異色作だったが、今回も、普通の怪獣映画とは全く違う不思議な作品だ。前作ではメキシコの隔離地帯に閉じ込めらていた樹木のような異様な風体の巨大モンスターが、世界中に拡散したという設定。中東では、米軍による対モンスター空爆が行われているが、巻き込まれた地元住民による武装勢力が米軍と対立する状況になっている。そこに送り込まれた新兵が主人公だ。

主人公たちは、行方不明になった部隊を救出するために危険地域の奥へ向かうのだが、描かれる戦闘のほとんどは、対モンスターではない。地元武装勢力の襲撃で彼らは窮地に追い込まれ、疲弊し、理性が崩壊していくのだ。

モンスターによる脅威が通奏低音のように響いているが、物語の骨子は「地獄の黙示録」のようだ。実に変わった手触りの映画で、商業的ヒットは全く望めないと思うが、妙に印象に残る作品でもある。


"Crimson Peak"16.1.9

Guillermo del Toro監督の新作を観てきた。

舞台は、19世紀。イギリスの没落貴族の屋敷。この屋敷のセットが、実におどろおどろしい雰囲気。そこに、del Toro監督らしい、怖すぎる造形の亡霊が登場。主演のMia Wasikowska、Tom Hiddleston、Jessica Chastainの三人が、皆、時代がかった衣装がよく似合い、まさにゴシック・ホラーの要素がたっぷり。

恐怖を煽る演出の巧みさも、さすがdel Toro。残虐な画面や、昆虫をクローズアップにした不気味な映像など、画像で怖がらせるところと、雰囲気だけで怖がらせるところ、緩急自在の恐怖描写。全体に緊張感たっぷりなのだが、ラスト近く、クライマックス・シーンの演出にブラック・ユーモアを感じさせてくれるところも、監督らしい。

ただ、ストーリー自体は、意外に、ホラーというよりもミステリー。もっと、超常現象が現実世界を侵食していく「パンズ・ラビリンス」ような内容を期待していたので、やや肩透かしな印象もある。それでも、画面全体を覆うダークな雰囲気はdel Toro好きには堪えられないし、Mia Wasikowskaの美貌も素晴らしく、それなりに満足できる映画だった。



正月明け早々、David Bowieのまさかの新アルバム"★"も到着。それなりに良い年明けですかね。

1/11追記
という文章をアップした翌日にBowieの訃報を聞くとは…。とんでもない喪失感です…